2025女子ゴルフ総括「黄金時代到来の予感」

渋野日向子の苦戦は「技術面ではなく…」 米ツアーの“壁”を知る上田桃子、次世代に示した一つの選択肢

柳田通斉

平均点では勝てないからこそ、ストロングポイントを伸ばすべき

「芝に対して神経質だった」と振り返る上田桃子。米ツアー参戦当時はパットに自信が持てなかったという 【Photo by David Cannon/Getty Images】

 実は上田自身も、米ツアーを転戦しながら悩み続けた。十分な飛距離があり、ショットメーカーだったが、パットには自信が持てなかったという。

「ストロークだけでなく、芝に対しても神経質でした。そうしたなかで朝、ホテルのジムに行ったら、当時ランキング1位の選手がすでに体を動かしている。ラウンド後も練習場にいて、またジムに戻っていく。そんな姿を見ていると、『私はもっと練習して、もっとトレーニングをしなければ』と感じ、自分のペースを見失いました。英語も『完璧にしたい』と思い、頑張って学びましたが、最後まで(米ツアーを)ホームにできませんでした」

 当時のマインドは「ストロングポイントよりもウィークポイントを克服する」で、「その方が『結果につながる』と思っていました」と振り返った。だが、その考えは明確に「違っていた」と言える。

「今、結果を残している選手を見ていると、『リスクはあっても強みで戦うべきだ』と感じます。平均点で勝てるほど甘いツアーではないからです」

 上田は日米ツアー共催のミズノクラシック(現・TOTOジャパンクラシック)を2007年に制し、米ツアーの出場権を獲得。翌2008年から海を渡って、2013年までプレーした。だが、翌年のシード権を持たないまま帰国して国内ツアーに参戦。11月開催の大王製紙エリエールレディスで3位に入り、賞金ランキング48位に滑り込み2014年の国内ツアーシード権を手にした。

 28歳の同年春から主戦場を国内に戻したが、序盤はどん底状態で予選落ち続き。その状況下、前年の大王製紙エリエールレディスでキャディーをしてくれた辻村明志コーチに「左右に体重を揺するスイングになっているから、体の正面で球をとらえられていない」と指摘された。修正すると、ドライバーの飛距離は一時的に30ヤード落ちたが、「ゼロから立て直す」ことを決めて辻村氏と契約。同年中盤から復調し、2勝を飾った。

 2016年シーズンで再びスランプに陥ると、元プロ野球選手、コーチの荒川博氏から指導を受け、「気で打て」と教え込まれた。そして、再々生。ツアーから離れるまでに、さらに6勝を積み上げた。

「戦う場所は逃げない」 日本に戻ってからの再挑戦も選択肢に

日本ツアー復帰後に8勝。多くの仲間と切磋琢磨し、30代以降もゴルファーとして進化し続けた 【写真は共同】

 そうした経験も踏まえて、上田は言った。

「アメリカでの出場権が維持できず、日本に戻る選手は今後も出ると思います。ただ、日本なら結果を出せる保証はないし、危機感を覚えながらのプレーになるでしょう」

 一方で「戦う場所は逃げない」と表現し、「本人に強い意志があるのなら、日本で試合を重ねながら、もう一度アメリカにチャレンジすればいいと思います」と言った。

「そのためにも日本は最高の環境です。大勢のギャラリーが見てくださっていますし、ツアーのレベルも上がっています。近年はスランプから復活した選手が何人も出ています。30代に入っても進化はできるわけですから」

 上田こそ30代で進化を続け、34歳の2020年には全英女子オープンで6位に入っている。国内外で様々な経験を重ね、休養宣言の翌年となる今年10月に39歳でママになった。その生き様は、後輩たちにとって一つの指針になっている。


企画・編集/Creative2『THE ANSWER』

上田桃子 / Momoko Ueda

 1986年6月15日、熊本県生まれ。2005年にプロテストに合格すると、2007年4月のライフカードレディスでツアー初優勝。同年11月のミズノクラシックで米ツアー初優勝も飾るなど年間5勝を挙げ、当時の史上最年少(21歳156日)で賞金女王に輝いた。翌年からは米ツアーに参戦。一時は国内シード権を喪失する苦しい時期も過ごしたが復活し、日米通算17勝の成績を残した。2024年限りで第一線を退き、今年10月31日に第一子の男児を出産した。

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著者プロフィール

1967年3月31日、山口県宇部市生まれ。早稲田大学社会科学部を卒業後、90年に日刊スポーツ新聞社に入社。文化社会部やスポーツ部の記者を歴任し、ゴルフ担当時代に宮里藍の活躍を追った。著書に『宮里藍 世界にはなつミラクルショット』(旺文社)。2019年に退職後、静岡朝日テレビ宣伝担当局長を経て、現在は芸能、時事、格闘技などを扱うニュースサイト「ENCOUNT」の編集長。その傍ら、JLPGAツアーの現場にも定期的に足を運び、「THE ANSWER」に寄稿している。

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