卓球混合W杯はロス五輪の前哨戦に 平野早矢香は選手起用にも注目、打倒中国の鍵は?

塩畑大輔

【Photo by Feng Li/Getty Images】

 会場がざわついていた。

 ロンドン五輪・卓球女子団体の準決勝。強豪シンガポールの前に「ラケットを持った鬼」が立ちはだかっていた。

 第3試合、石川佳純と組んでのダブルス戦。日本代表の平野早矢香は攻撃的なフォアハンドを次々と決め、何度もこぶしを突き上げていた。

【Photo by Feng Li/Getty Images】

 男女通じた日本卓球初のメダルを期待する声が高まっていた。だが相手は2年前の世界選手権で、最強中国を下して世界一にもなったシンガポール。対戦成績でも圧倒され、明らかに分が悪いとみられていた。

 だが平野には、委縮した様子などなかった。攻めのプレーと鬼のような形相で、相手を威圧していった。

 3-0の完勝。この勝利で決勝進出、そして悲願のメダル獲得も決まった。世界が驚くアップセット。無数のフラッシュを浴びながら、意外なことを思い出していた。

 それはわずか2か月半前、卓球をせずに温泉巡りをしていたこと。そして人生で初めて、ネイルサロンに行った日のことだった。

最強ジャパンが臨む、五輪の「前哨戦」

「私たちの頃は、まだオリンピックでメダルを取りにいくこと自体が、とても大きな挑戦でした」

 しみじみと、そう振り返る。2025年11月。平野は中継で解説を務める混合団体W杯を前に、卓球界の変化について語っていた。

「今の選手たち、特に女子は世界ランキングを見ても、中国に次ぐ2番手勢力になっています。メダルは当たり前、他の国に勝つのも当たり前。『中国に勝てるかどうか』を周りから求められています。そのプレッシャーは、計り知れないくらい大きいと思います」
混合団体W杯・日本代表メンバー(丸数字は2025年11月時点の世界ランク)
<男子>
張本 智和 ⑤
松島 輝空 ⑧
戸上 隼輔 ⑳
篠塚 大登 ㉘
<女子>
張本 美和 ⑥
伊藤 美誠 ⑧
早田 ひな ⑩
大藤 沙月 ⑭

【Photo by Remy Gros/MB Media/Getty Images】

 日本代表の活躍が期待される混合団体W杯は、今回で3回目の開催となる。だが、従来と今回とでは開催の意味合いが変わっている。同じ男女混合での団体競技が、2028年のロサンゼルス五輪でも行われると発表されたからだ。

「実際には、混合団体W杯とまったく同じ競技方式で行われる、とは発表されてはいません。ただおそらく、同じようなフォーマットで行われるのではないかと思います。そういう意味でも、これまでとは各国の力の入れ方、大会の重みがまったく違ってくる気がします」

 静かにうなずきながら、噛み締めるように語る。

「選手たちにとっては、ロサンゼルス五輪の“前哨戦”として、混合団体のフォーマットや雰囲気を味わう、とても良い機会になるはずです」

新フォーマットが変える戦略性

ーー混合団体W杯とほかの大会の違いは

平野:まず、通常の男女別の団体戦とは「トータルで8ゲームを先に取ったチームが勝ち」という点が大きく違います。

平野:通常の団体戦は、1試合ごとの勝ち負けで決まります。そのため、ゲームカウントをいくつ取られようと、最終的にその試合に勝てばいい、という戦略を立てます。しかし、今回の方式ではトータルで8ゲームを取る必要があるので、1試合ごとの勝ち負けよりも「何ゲーム取れるか」を重んじる意識が必要になります。

【Photo by Remy Gros/MB Media/Getty Images】

ーー具体的にどう意識が変わるのか

平野:通常の3ゲームマッチなら、ゲームスコアを2-1にさえすれば自分の試合は「勝ち」になります。8ゲーム先取が必要な今回のフォーマットでは、従来は同じ「勝ち」だった2-1と3-0で、まったく価値が変わってしまう。

平野:仮にゲームを落としてでも、相手の出方をしっかりと見てみる、というような試合運びが許されなくなるところはあると思います。戦術面でも、自分のコンディションの面においても、スタートから全開でいけるかどうかが重要。そして、試合の中で速やかに戦術転換したり、相手の出方に対応したりと、ゲーム中にすばやく修正していく能力も求められます。

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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