フェルスタッペン逆転5連覇のシナリオが動き出した マクラーレン痛恨のダブル失格

柴田久仁夫

マクラーレン失格の衝撃

優勝したフェルスタッペンの傍で、2位表彰台に立ったノリス(写真左)。この時点ではまだ、失格裁定は出ていなかった 【©Redbull】

 予想もしていなかった形で、今季F1のタイトル争いが大きく動いた。

 ラスベガスGP決勝後、マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリのマシンが、いずれも車体フロアの技術基準不適合とされ、失格裁定。ノーポイントという最悪の結果となったのだ。

 それでもノリスは依然として選手権首位だが、42ポイントまで広がったはずのフェルスタッペンとの差は、一気に24ポイントまで縮まった。タイトル争いの大勢はノリス絶対優位で決したはずが、一気に混戦状態となったのだ。

 残り2戦で得られる最大得点は58点。以下に挙げる要素を見れば、フェルスタッペンの逆転5連覇は「可能」どころか、「十分現実味のあるシナリオ」になったと言っていい。

王者を利する、3つの逆風

ピアストリ(写真右端)はフェルスタッペンと同ポイントだが、この5戦表彰台とは無縁だ 【©Redbull】

 今回のダブル失格は、マクラーレンの二人にとって単なるノーポイント以上の打撃となった。タイトル争いが大詰めを迎えるこの局面で、ノリスとピアストリには3つの明確な逆風が立ちはだかったといえる。

 まず一つ目は、タイトル争いの経験差だ。

 ノリスもピアストリも、今季初めて本格的なタイトル争いを体験している。追う立場、追われる立場の心理、レースウィーク全体のマネジメント、プレッシャーが極限に達した中での判断。それらすべてが、二人には未知の領域だ。

 対照的にフェルスタッペンは、2021年のルイス・ハミルトンとの死闘をはじめ、過去四つのタイトルを得る中、数え切れないほどの修羅場を経験してきた。最後までミスを犯さず、必要なポイントを確実に獲る方法を熟知している。

 二つ目は、マシンの優位性を失う恐れだ。

 ラスベガスGPの失格理由は、フロア下のプレートが異常摩耗したためだった。アンドレア・ステラ代表は、「初日の練習走行では見られなかった、予想外の激しいポーパシング(異常な縦揺れ)が、レースで起きたため」と説明している。しかしその原因は、「調査中」とのことだ。

 もしその原因が次戦までに究明できなければ、マクラーレンの技術陣は車高を上げて対処せざるをえない。そうなるとマクラーレンの最大の武器である高速域での安定性やタイヤ寿命に影響を及ぼし、これまでの優位性が揺らぐリスクがある。

 そして三つ目が、「自由に戦わせる方針」が裏目に出る恐れだ。

 マクラーレンは伝統的にチームオーダーを最小限に抑え、二人のドライバーを対等に戦わせてきたチームだ。それはノリスとピアストリになっても変わっていない。しかし2007年のフェルナンド・アロンソ、ハミルトンコンビの例が典型的なように、チーム内でポイントが分散すると、外部の強敵を利する危険がある(2007年は1ポイント差で、フェラーリのキミ・ライコネンが最終戦にタイトルを獲得した)。

 そして相手はフェルスタッペンである。残り2戦で逆転を許す恐れは十分にある。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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