動く秋──プロ野球ストーブリーグ最前線

セイバーメトリクスが示す来季の補強地図 今季のWARから読み解く各球団の“現実的な一手”とは?

宮下博志(DELTA)

去就が注目される楽天・辰己涼介。FA有資格選手の動向が気になるところだ 【写真は共同】

 2025年のプロ野球は全日程が終了し、ストーブリーグに突入した。2025年シーズンのデータを精査すると、各球団が来季に向けて整えるべき補強ポイントが浮かび上がる。ポジション別WAR、年齢構成、ドラフト戦略——データを駆使することで、補強で埋められる領域と、現有戦力の組み替えで対応すべき領域が明確になる。

 ストーブリーグで重要なのは、各球団が持つ資金・資源を適切に投資することだ。本稿では、12球団の補強ポイントを整理したうえで、2026年に向けて各球団が取れる現実的な選択肢について確認しよう。

阪神:左翼手 中期的なテーマは世代交代

 圧倒的な戦力で優勝した阪神だが、最優先で整えたいのは左翼で、2025年唯一プラスを作れなかったポジションである。外野手は新外国人やFA市場で選択肢が多く、近本光司の残留で中堅を動かさずに済む点は阪神に追い風だ。連覇を狙ううえでは確実に改善したいポジションだが、穴埋めできる現有戦力も存在するため(下表参照)費用対効果は小さいかもしれない。

阪神の左翼手WAR上位(2025年)
森下翔太:1.0
髙寺望夢:0.4
小野寺暖:0.2

阪神は即戦力野手として創価大の立石正広をドラフトで獲得したが、野手の世代交代が課題だ 【写真は共同】

 中期的なテーマは世代交代だ。MLB挑戦を公表した三塁・佐藤輝明の後継候補は、ドラフト1位・立石正広の獲得で一定のめどが立ったといえるが、主力野手の多くが来季30歳以上となり(下表参照)、数年後に備える段階に突入した。ただし1〜2年で全員同時に急落するリスクは低く、緊急性は高くない。

【データ提供:株式会社DELTA】

DeNA:先発投手・遊撃手・外野手 筒香のポジションがカギ

 DeNAは2025年、遊撃と左翼のWARが伸び悩み、桑原将志のFA宣言や外国人投手3名の去就など不確定要素が多い。特に先発投手はケイ、ジャクソン、バウアーの3名でWAR6.4を稼ぎ(下表参照)、投球回の半分を担ったため、退団時は最優先で補強が必要になる。

【データ提供:株式会社DELTA】

 野手編成の焦点は筒香嘉智の守備位置で、左翼起用なら三塁の補強が、三塁起用なら外野の補強の優先度が増す(下表参照)。遊撃は30代で守備力を維持しにくくFA市場からの獲得が難しいため、現有戦力の底上げが現実的だ。2026年の布陣は筒香の起用法と外国人投手の動向で大きく変わる。

・筒香を除くDeNAのポジション別WAR(2025年)
三塁手:0.4
左翼手:1.0

巨人:外野手・一塁手 グリフィン退団時は先発も

 巨人は外野手WARがリーグ下層圏で、特に左翼手WARは-0.8と早急に改善すべきポジションである。今年は辰己涼介、桑原将志、松本剛ら中堅を守れる選手がFA市場に揃うため、外野補強の好機といえる。

巨人の外野手WAR
左翼手:-0.8
中堅手:+1.4
右翼手:+0.3


 先発投手はWAR2.2のグリフィンが退団すれば投手陣に大きな穴が空く。戸郷翔征が2024年以前の水準に復調すれば穴埋め可能だが、ドラフト上位を大卒投手で固めた点にもフロントの危機感が表れている。一定以上のクオリティで安定して投げられる先発投手の確保は依然課題だ。

【データ提供:株式会社DELTA】

巨人は米挑戦の岡本和真の穴をどう埋めるのか 【写真は共同】

 岡本和真がMLB移籍した場合は一塁・三塁の再編が必要だが、三塁は実績ある門脇誠の起用や、かつての坂本勇人のように石塚裕惺など有望株を一時的にコンバート起用する案が考えられる。一塁手のWARはリチャード、増田陸が0.1と物足りず、外国人補強か競争促進が求められる。

中日:先発投手 三塁手は福永・石川の復調がカギ

 中日は投手陣、とくに先発が最大の補強ポイントで、2025年はベテランの松葉貴大、大野雄大、涌井秀章が支えた一方、若手の台頭が乏しくローテーションの厚みに不安が残った。リーグ5位の先発投手WAR(5.9)が課題の大きさを示しており(表参照)、ドラフト1〜3位を投手で固めた点はフロントの危機感を反映している。

セ・リーグ先発投手チームWAR
阪神:12.5
DeNA:10.3
巨人:7.7
広島:6.3
中日:5.9
ヤクルト:5.0


 一方、野手陣は比較的整っており、唯一WARがマイナスとなった三塁は福永裕基、石川昂弥の復調期待や遊撃候補のコンバートなどオプションが多い。外野は細川成也、岡林勇希、上林誠知の核が強く、補強の優先度は低い。中日は投手強化を最優先としつつ、現有戦力の底上げ体制が現実的だ。

【データ提供:株式会社DELTA】

広島:内野手全体 栗林の先発転向で優先度が変化

 広島は2025年、内野全体を固定できず、1ポジションで高いWARを記録する野手がいなかった。2026年は坂倉将吾、小園海斗のポジション、菊池涼介の稼働、二遊間の組み合わせなど、内野の運用次第で大きく変動する。特に改善余地が大きいのは一塁で、獲得しやすい外国人選手の補強は効果が高い。

【データ提供:株式会社DELTA】

 一方、2025年に課題だった先発不足は栗林良吏の先発転向案により状況が変化しつつあり、現有戦力でローテーション投手を補える可能性が出てきた。ただし全体的な投手層は厚くないため、質の高い投手の獲得は依然有効だ。

【データ提供:株式会社DELTA】

ヤクルト:内野手・外野手 山田のコンバートで柔軟性に変化

 ヤクルトは捕手・三塁・中堅以外の多くでWARがマイナスとなり、特に両翼は-1.6とリーグ最下位(表参照)。外野は最も補強効率の高いポジションであり、FA市場の豊富さも追い風となる。塩見泰隆の復帰はプラスだが、年齢や怪我歴から高稼働は期待しづらく、外野補強は不可欠といえる。

【データ提供:株式会社DELTA】

 また、村上宗隆がポスティングによりMLB移籍した場合、内野手全体が補強ポイントとなる。ドラフトで内野3選手を獲得したことや、山田哲人の一・三塁コンバート案は合理的な施策といえる。山田の後継となる二塁手は現有戦力が軸となるが、二塁手の石井一成がFA宣言したことでフロントの選択肢は増えた。三塁は茂木栄五郎が今季172打席ながら0.8と一定以上のWARを記録しているため優先度は高くない。

【データ提供:株式会社DELTA】

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