井上拓真が示した“キャリアの深み”──天心に初黒星をつけた大一番の真実

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序盤に主導権を握った天心だが…

1年1カ月ぶりに世界王座に返り咲いた拓真は父の真吾トレーナー(左)、兄・尚弥(右)と記念撮影 【写真は共同】

 25年国内ボクシング界最大の注目試合は、元WBC世界バンタム級王者・井上拓真(大橋)が那須川天心(帝拳)を3-0の判定で下し、王座返り咲きを果たした。序盤はキック42戦無敗、総合格闘技4戦無敗、ボクシング7戦無敗と格闘技で“負け”がない天心が得意のスピードで主導権を握った。2ラウンドまでは鋭いジャブとカウンターで距離を支配し、1Rは左オーバーハンド、2Rは右フックを当ててポイントを奪う。

 しかし3ラウンド以降、拓真は前進を強めて試合の流れを変える。「2Rまでポイントをとれていない。自分から攻めるしかない」と多彩な攻撃で前に出ることで中盤から優勢を築く。4ラウンド終了時の公開採点は3者38-38のドロー。父・真吾トレーナーもこの採点に「ここから色濃く持っていけばしっかりポイントにつながる」と自信を深め、攻めの姿勢を貫く指示を出す。8ラウンド終了時点の公開採点では2者が拓真を支持し、終盤以降も主導権を渡さなかった。最終的な採点は116-112、117-111と明確な勝利となり、格闘技無敗だった天心に初黒星をつける一戦となった。

試合のターニングポイントとなった3ラウンド

 試合のターニングポイントとなったのは、試合前から注目されていた構図―「スピードの天心」と「キャリアの拓真」が交錯した3ラウンド以降である。序盤、天心は距離の出し入れと反応速度で優位に立ち、ジャブとカウンターで拓真の攻めを寸前で外した。しかし拓真は3ラウンド、「自分から攻める」と判断し、プレッシャーを強める。

 4ラウンド終了の公開採点は三者とも38-38。拓真は「流れは自分に来ている」と捉え、逆に天心は「下がりながらのカウンターではポイントを取れない。ちょっとどうしようかなという迷いがあった」と後手後手に回る展開になってしまった。中盤以降は拓真が接近戦で優位に立ち、ジャブ、アッパー、ボディを確実に重ねてポイントを積み上げた。「自分が練習してるものが出せない間合いになった。距離感がうまかった」と拓真の間合いに天心も脱帽した。結果として、試合前に想定された“キャリアの深さがカギ”という構図が拓真に大きく傾いた。

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