注目の井上拓真戦は“那須川天心vs.ボクシング”なのか? 天心に魅せられたジュニアボクサーたちの存在が示すもの
天心をきっかけにボクシングを始めた子どもたち
その年の6月に「THE MATCH」があって、動画を「何十回も見て、すごいな」と惹きつけられたのが那須川だった。
それから自分と同じボクシングに転向し、「もっと好きになった」という。湊人くんもサウスポーで「あんまりパンチをもらわなくて、よけて、カウンターを打つところがすごい」と憧れる。ボクサー那須川の動画を何度も見て、真似をする。
ボクシングを始めて、苦手だった縄跳びが「学校で一番上手」と言われるぐらい上達し、持久走でも1番になるなど、お母さんは「運動神経がよくなった」と目を細める。まだ試合前に緊張して、弱気になるところがあり、経験を重ねることで「気持ちが強くなれば」と見守っている。
3年生のときに1度、JCL全国大会に出場、後楽園ホールのリングに立った。次は優勝が目標。夢は世界チャンピオンだ。
拓真戦は「ボクシング技術は拓真選手が上だと思うけど、天心選手は気持ちが強い」と分析した上で「気持ちと技術、どっちが大事か分かる試合になると思う」となかなか鋭い。「天心が勝つ」と即答した。
蹴りがない分、最初は「難しくないかな、と思った」が、「パンチの種類は多いし、タイミングも大事で、コンビネーションもいろんなパターンがあるから難しかった」と振り返る。
が、難しいから面白い、というから頼もしい。練習を重ね、スパーリングや試合で「相手にパンチを当てたり、よけたりできたときが嬉しい」と微笑んだ。
「こんなに続くとは思わなかった」とお母さん。目標はJCL全国大会初出場。将来の夢は世界チャンピオンという暁斗くんに「プロは怖い」が正直な気持ちだが、「やりたいことはやらせてあげたい」と応援している。
もともとスピードが速いところが那須川の魅力だったが、「キックのときよりも動きが速くなった」と感じている。拓真戦は「お互いにスピードがあるから、どっちが先に試合の流れをつかむか」をポイントに挙げた。
キックのときから「パンチで倒した試合もいっぱいあったから、世界チャンピオンになってくれると思っていた」という。「倒してほしい」と快勝を期待している。
「天心のやってることが好き。もし、あのままキックボクシングを続けてたら、キックをやってたかも」とお父さん。もともと野球をやっていたが、すっかりボクシング熱が高まったという。
お母さんは「自分の子どもが殴って、殴られて、怖いし、痛そうで、抵抗があった」と振り返る。真柊くんが毎日、生き生きして、家でも練習を頑張る姿に「好きなことをやらせてあげて、よかった」と思うようになった。
この日はジム主催のスパーリング大会で、真柊くん初の対外試合だった。今年のJCL全国大会出場者で同い年の冬澤夢元(むげん)くん(湊人くんの弟)に惜しくも敗れ、悔し涙。那須川のビデオメッセージを伝えると少し笑顔になり、夢は世界チャンピオンときっぱり。
拓真戦は「井上尚弥の弟だから、もしかしたら負けるかも」と不安そうな真柊くん。でも、「無敗で、強い人と戦うところが好き」だから「天心が勝つ」と信じている。
天心が見せるとすれば、ここだが……
現役・元選手、トレーナー、関係者に予想を聞いたとき、まずボクシング歴の違いを挙げ、持論を展開することが多かった。
ただ、興味深かったのは、話し終えた後、ほとんどの人が「でも……」と続け、断言はできなかったことだ。
「でも……」の意味は「ここ一番で力を発揮する」「大舞台になるほど強い」、つまり那須川天心たる所以(ゆえん)、子どもたちが魅せられる「スター性」である。
あるトレーナーは言った。「天心がそれを見せるとすれば、ここなんですが……」。果たして、どんな戦いになり、どんな決着を見るのか。ゴングはもう間もなく。