日本代表がW杯で「後出しジャンケン」をするために ボリビア戦で見えたチーム内競争の方向性

舩木渉

中村敬斗(左)は途中出場で1得点1アシスト。鎌田大地(右)は先制点を挙げ、中盤で圧倒的な存在感を発揮した 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

中村敬斗が途中出場で示した価値

 森保一監督にとって節目の指揮通算100試合となったボリビア代表との一戦は、3-0で日本代表が勝利を飾った。

 序盤の4分に鎌田大地のゴールで先制しながら、なかなか追加点を奪えず、相手の勢いが増した時間帯もあった。それでも日本は途中出場の選手たちが再び流れを引き寄せ、最終的には2点を加えて勝ち切った。

 30分間に満たないプレーながら1得点1アシストと躍動した中村敬斗は「間違いなくチームの自信になった」と、苦しみながらもボリビアを下して2連勝を飾った11月シリーズの成果を誇っていた。

「(10月の)ブラジル戦に勝ったことで、その後の試合での勝利がすごく大事だというのはみんなが言っていた。そういった中でガーナ戦(14日、◯2-0)、ボリビア戦としっかり連勝できたのはデカいですね」

 ガーナ戦は左ウイングバックでの先発起用だった中村は、ボリビア戦で左シャドーとして途中出場した。上田綺世や町野修斗とともにタッチライン際で準備している時は前田大然に代わって左ウイングバックに入るのではないかと考えていたが、実際は南野拓実との交代に。森保監督からは「普段はウイングバックで出ているけど、今日はシャドーで出てもらうので、よりゴールに近いと思うからゴールを果敢に狙っていってほしい」という指示を受けてピッチに立った。

 役割が変わっても迷いや不安は一切なかった。「もちろんみんなスタメンで出たい気持ちもあるし、レギュラー争いもあるけど、今日みたいに追加点もあるし、いかに途中出場した選手が試合を変えるかももすごく大事」と語る中村は、「必ずしもスタメンで出ることがいいとは思わないですし、自分に与えられた役割はあるから、そこをやるだけ」とあっけらかんとしていた。

 中村と世代別代表の時代から長く共に戦ってきた久保建英も「左シャドーに入っていましたけど、アシストの場面は右まで流れていたし、ああやって自由を与えられてプレーするのも本来は苦手なタイプではないと思います」と分析する。

「スタッド・ランスではサイドに張ってプレーしていますけど、代表ではああいった(シャドーでの)プレーもできる。彼はすごくユーティリティ性の高いプレーヤーなので、いろいろなポジションができるのが強みなのかなと思っています」

 森保ジャパンでは試合ごとに異なる役割を任される選手が多くおり、試合中にポジションが変わることも珍しくない。ボリビア戦でも左シャドーで1得点1アシストを記録した中村は終盤に左ウイングバックへと移った。

 複数のポジションや役割を柔軟にこなす選手の例は他にもたくさんある。むしろ一部の例外を除き、今や日本代表で競争に加わるには複数ポジションに対応でき、どんな役割でも一定水準以上のプレーを保証できることが当たり前になりつつある。「例外」はGKと特定のポジションで圧倒的なクオリティを発揮できると信頼されている選手くらいしか考えられないほどだ。

3チーム分の戦力でW杯へ乗り込むために

ボリビア戦では出番がなかったものの、鈴木淳之介(左)はガーナ戦で左ウイングバックとしてもテストされた 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 実際の運用においては堂安律や伊東純也、中村、三笘薫、前田大然、相馬勇紀、佐藤龍之介といった選手がシャドーとウイングバックを兼ねるパターンと、ウイングバックとセンターバックを兼ねるパターンが主になっている。14日のガーナ戦では左センターバックで先発した鈴木淳之介が終盤に左ウイングバックとしてもテストされた。

 だが、適応可能なポジションを複数持つ選手は他にもたくさんいる。センターFWを本職とする町野は10月シリーズからシャドーでの起用が続いており、所属クラブでも2列目でプレーする機会を増やしている。そしてボリビア戦では貴重な2点目を決め、シャドーでもフィニッシャーとして力を発揮できると示すことができた。11月に初招集となった後藤啓介も町野と同様に前線であれば起用ポジションを問わないタイプだ。

 また、鎌田大地はボランチとシャドーの両方で質の高さを発揮でき、佐野海舟や田中碧も組み合わせしだいでは2列目でのプレーも十分に可能だろう。過去の実績や所属クラブでの役割を考えると、遠藤航はボランチだけでなく3バックの一角にも対応できるはず。

 センターバックなら左右を問わない瀬古歩夢は、所属クラブでボランチを任されているため、日本代表でも相手の特徴や戦い方によって中盤での起用を考えられる。もっと細かな話をすれば、3バックの中央と左右では担う役割が全く違うため、別のポジションと考えてもいい。

 こうしたユーティリティ性は森保監督がチームづくりにおいて「ポリバレント」と表現し、重視してきたポイントでもある。日本がW杯優勝を目指すにあたって「誰と組んでも機能して、誰が出ても勝つ」チームであらねばならないと、指揮官は常に訴えてきた。

「ポリバレント」はもともと「多価」を意味する化学用語だが、かつて日本代表を率いたイビチャ・オシム監督が複数ポジションをこなせる選手を指して使ったことで、サッカー界ではユーティリティ性の高い選手を意味する言葉として定着した。森保監督の発言にも以前から頻繁に出て来る単語であり、チームづくりの鍵になっている。

 10月シリーズのブラジル戦に向けたオフィシャルマッチデープログラムの中では、9月のアメリカ遠征での経験を踏まえて「コアメンバーだけで乗り切っていくということは相当に難しい」と述べ、W杯決勝までの8試合を戦うならば「2チーム分、3チーム分は必要」と主張していた。

 メキシコやアメリカと対戦した9月シリーズでは、1戦目と2戦目で先発メンバーを全員入れ替えた。中2日での連戦だったことも選手起用に影響していただろうが、それを逆手に取って「選手たちの経験値を上げる、全体を底上げする良い機会」と捉え、2チーム分の準備を同時並行で進めたという。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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