女子ゴルフのシード争いは最終盤に 痛み、疲労、苦悩…当落線にいる選手の心境は

塩畑大輔

青木瀬令奈は9月に左手親指の付け根の痛みに耐えながら踏ん張っていた 【Photo by Yoshimasa Nakano/JLPGA via Getty Images】

「このまま骨が折れてもかまわない。そう思っていました」

 11月12日、開幕を2日後に控えた伊藤園レディスの会場。
 青木瀬令奈は突然、2か月前に負ったケガについて、静かに明かしだした。

「大洗GCで行われた9月のソニー日本女子プロ選手権で優勝争いをしている最中に、左手親指の付け根を痛めてしまって。しばらくだましだましにやっていたんですが…」

 そこから3戦後の日本女子オープンまで、何とか予選通過を続けた。
 だが、次のスタンレーレディスホンダを欠場。翌週の富士通レディースも初日の15ホール目で棄権した。

一時はコップを持つこともできないほど重症化した青木だったが、無理をしたことへの後悔はないという 【Photo by Atsushi Tomura/Getty Images】

「限界でした。大洗で少し無理をしすぎました」

 代償は大きかった。
 痛みと腫れ。一時はコップを持つこともできないほどだった。

 その親指に目を落としながら、青木は「でも…」と続ける。

「私としては、無理をしたからこそ勝ち取れたものが、確かにあったと思っているんです」

大詰めの予兆。動きにくくなる順位

 JLPGAツアーの2025年シーズンも、大詰めを迎えている。
 優勝者は過去最多の29人に。初優勝を果たした選手も、史上最多の11人を数えた。

 伊藤園レディスでも、プロ9年目の脇元華が初優勝を果たした。
 腰痛に苦しみながらの悲願の勝利。多くの仲間が祝福され、涙する姿が、多くのファンを感動させた。

 優勝者が多かった分、今年は多くの選手、関係者が喜びを分かち合った。
 だが一方で、例年と同じシビアな戦いも、変わらずそこにはあった。

伊藤園レディスで初優勝を果たしたプロ9年目の脇元華 【Photo by Atsushi Tomura/Getty Images】

「終盤になって、シード当落線付近のランキングが、動きにくくなるのを感じていました」

 重くつぶやくのは、高久みなみ。
 現在、年間ポイントランク56位にいる。

 今週の大王製紙エリエールレディス終了時点で、同ランク50位以内には来季のシード権が与えられる。
 高久は夏場の連戦で20位以内の好成績を重ね、8月上旬にはシード圏内の43位まで順位を上げた。

 まずはツアーに慣れて、来年につながる経験を。
 そんなロードマップを、いい意味で修正しなければならなくなった。

 これなら今年、シード権を獲得できる。
 そう思った。だが、そこからが本当の戦いだった。

点滴を打つほどの疲労。肌身で感じる"厳しさ"

 8月16日、NEC軽井沢72ゴルフトーナメント第2日。
 高久は6試合ぶりに予選落ちを喫した。

 それだけなら、まだよかった。
 身体が重い。今までにない感覚を覚えていた。上位争いが続く緊張感に、過酷さを増す夏の暑さが手伝って、疲労が蓄積していた。

 そこから2戦、何とか予選通過を続けた。
 シード権争いを考えれば、休むわけにはいかない。だが徐々に、症状は悪化していった。

髙久みなみは点滴が必要なまでに疲れきっていたが、毎試合の予選通過のために戦った 【Photo by Atsushi Tomura/Getty Images】

 家族に担ぎ込まれるようにして、病院で点滴を打つに至った。
 そして、9月5日開幕のゴルフ5レディスで、今季初めて欠場をした。

 一気に体調は良くなった。2戦後の住友生命レディスでは7位に入った。
 だが、ポイントランクは55位から50位に上がるだけに留まった。

 高久が体調不良に苦しんだ晩夏の1か月で、各選手がポイントを積み上げた。
 50位前後の選手もそうだ。だから、1試合ポイントを多く稼いだだけでは、大きくは順位が上がらない状況になっていた。

「毎試合の予選通過は必須。もっと上を目指さないと、終盤戦ではランキングは上がらないんだなと」

 シード権争いの本当の厳しさを、今まさに肌身で感じている。

痛めたろっ骨をかばって…続けた奮闘

 トレードマークの笑顔の裏で、必死の戦いを続けていた。
 プロ1年目の寺岡沙弥香は「ゴルフの感じはずっといいんです。ただ…」と切り出した。

「内容がよくなってきたところで、体調を崩して、咳が止まらなくなって」

 体調自体はやがて回復した。だが「後遺症」のほうが深刻だった。
 あまりにもひどい咳が続いたせいで、ろっ骨を痛めてしまった。

 強い痛みでフルスイングができない。
 不運を嘆きたくなるところだが、ツアー戦はどんどん進んでいってしまう。状況を受け入れるしかない。

ひどい咳が原因でろっ骨を痛めてしまった寺岡沙弥香。ハーフショットだけで乗り切り、準シード権を狙える位置につけている 【Photo by Atsushi Tomura/Getty Images】

 スイングの幅を半分にする「ハーフショット」だけで戦いきる。そう割り切った。
 10月17日の富士通レディースから、出場4試合すべて予選を通過。三菱電機レディスでは16位にも入った。

 負傷前から、わずかだが年間ポイントランクも上げた。
 現在53位。大王製紙エリエールレディス終了時点の51~55位には、来季前半戦には出場できる「準シード権」が付与されるが、そこを確保できる道筋もみえてきた。

「痛みもなくなってきて、ゴルフの内容もいいので頑張りたいです。これくらいの順位なら、と思ってしまうと、その順位に入るのは難しくなると思うので、あくまで優勝争いを見据えてやります」

 やわらかい笑顔の奥で、目に宿る光がいっそう強くなったようにもみえた。

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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