女子ゴルフのシード争いは最終盤に 痛み、疲労、苦悩…当落線にいる選手の心境は
11月12日、開幕を2日後に控えた伊藤園レディスの会場。
青木瀬令奈は突然、2か月前に負ったケガについて、静かに明かしだした。
「大洗GCで行われた9月のソニー日本女子プロ選手権で優勝争いをしている最中に、左手親指の付け根を痛めてしまって。しばらくだましだましにやっていたんですが…」
そこから3戦後の日本女子オープンまで、何とか予選通過を続けた。
だが、次のスタンレーレディスホンダを欠場。翌週の富士通レディースも初日の15ホール目で棄権した。
代償は大きかった。
痛みと腫れ。一時はコップを持つこともできないほどだった。
その親指に目を落としながら、青木は「でも…」と続ける。
「私としては、無理をしたからこそ勝ち取れたものが、確かにあったと思っているんです」
大詰めの予兆。動きにくくなる順位
優勝者は過去最多の29人に。初優勝を果たした選手も、史上最多の11人を数えた。
伊藤園レディスでも、プロ9年目の脇元華が初優勝を果たした。
腰痛に苦しみながらの悲願の勝利。多くの仲間が祝福され、涙する姿が、多くのファンを感動させた。
優勝者が多かった分、今年は多くの選手、関係者が喜びを分かち合った。
だが一方で、例年と同じシビアな戦いも、変わらずそこにはあった。
重くつぶやくのは、高久みなみ。
現在、年間ポイントランク56位にいる。
今週の大王製紙エリエールレディス終了時点で、同ランク50位以内には来季のシード権が与えられる。
高久は夏場の連戦で20位以内の好成績を重ね、8月上旬にはシード圏内の43位まで順位を上げた。
まずはツアーに慣れて、来年につながる経験を。
そんなロードマップを、いい意味で修正しなければならなくなった。
これなら今年、シード権を獲得できる。
そう思った。だが、そこからが本当の戦いだった。
点滴を打つほどの疲労。肌身で感じる"厳しさ"
高久は6試合ぶりに予選落ちを喫した。
それだけなら、まだよかった。
身体が重い。今までにない感覚を覚えていた。上位争いが続く緊張感に、過酷さを増す夏の暑さが手伝って、疲労が蓄積していた。
そこから2戦、何とか予選通過を続けた。
シード権争いを考えれば、休むわけにはいかない。だが徐々に、症状は悪化していった。
そして、9月5日開幕のゴルフ5レディスで、今季初めて欠場をした。
一気に体調は良くなった。2戦後の住友生命レディスでは7位に入った。
だが、ポイントランクは55位から50位に上がるだけに留まった。
高久が体調不良に苦しんだ晩夏の1か月で、各選手がポイントを積み上げた。
50位前後の選手もそうだ。だから、1試合ポイントを多く稼いだだけでは、大きくは順位が上がらない状況になっていた。
「毎試合の予選通過は必須。もっと上を目指さないと、終盤戦ではランキングは上がらないんだなと」
シード権争いの本当の厳しさを、今まさに肌身で感じている。
痛めたろっ骨をかばって…続けた奮闘
プロ1年目の寺岡沙弥香は「ゴルフの感じはずっといいんです。ただ…」と切り出した。
「内容がよくなってきたところで、体調を崩して、咳が止まらなくなって」
体調自体はやがて回復した。だが「後遺症」のほうが深刻だった。
あまりにもひどい咳が続いたせいで、ろっ骨を痛めてしまった。
強い痛みでフルスイングができない。
不運を嘆きたくなるところだが、ツアー戦はどんどん進んでいってしまう。状況を受け入れるしかない。
10月17日の富士通レディースから、出場4試合すべて予選を通過。三菱電機レディスでは16位にも入った。
負傷前から、わずかだが年間ポイントランクも上げた。
現在53位。大王製紙エリエールレディス終了時点の51~55位には、来季前半戦には出場できる「準シード権」が付与されるが、そこを確保できる道筋もみえてきた。
「痛みもなくなってきて、ゴルフの内容もいいので頑張りたいです。これくらいの順位なら、と思ってしまうと、その順位に入るのは難しくなると思うので、あくまで優勝争いを見据えてやります」
やわらかい笑顔の奥で、目に宿る光がいっそう強くなったようにもみえた。