復活の谷口彰悟、止まらぬ佐野海舟 経験と成長が交差したガーナ戦、“帰ってきた”男たちが日本代表を強くする

舩木渉

谷口彰悟(左)はプレミアリーグで活躍するアントワヌ・セメンヨ(右)を対人勝負で圧倒し、相手にチャンスを作らせなかった 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

プレミアで絶好調のFWを対人で完封

 すでに北中米W杯出場権を獲得し、実力拮抗(きっこう)と見られていた相手にほとんど何もさせず勝ち切ることができた。10月にブラジル代表を破ったものの、9月、10月と自分たちに近い実力を持つチームになかなか勝てていなかった日本代表にとっては重要な1勝だ。

 11月14日に行われたキリンチャレンジカップ2025で、日本はガーナ代表に2-0の完勝。ディフェンスラインの中央で守備陣を統率していた谷口彰悟は「結果としてまず無失点で抑えられたのは非常に良かった」と胸を張った。

「相手の前線はけっこう強烈な個を持った選手たちでしたけど、バトルで負けないこと、プラスして組織力でも負けないことは、90分間を通してやり続けることができたので、チームにとっても個人にとっても非常に自信となるゲームだったかなと」

 そう語った谷口は完封勝利におけるキーマンの1人だった。

 強靭な対人守備でガーナの1トップに入ったアントワーヌ・セメンヨを抑え込み、ボールを奪ったら次の攻撃の起点に。特にプレミアリーグのボーンマスで大活躍中のセメンヨにほとんど何もさせなかった1対1での無双ぶりは圧巻だった。

「やっぱりぶつかった感覚は強かったし、まともに戦ったら勝てないだろうなということで、先手先手を取りながらポジショニングやタイミングで上回っていこうと。でも、局面では本当にガチンコバトルみたいなシーンもあったし、そこでも負けないことにすごくこだわりを持って臨みました。

 相手も相当強かったし、彼もプレミアリーグでバリバリやっている選手なので、いい緊張感を持ちながらバトルできたかなと。そこで上回られなかったのは良かったと思うし、このレベルを最低限というか、これを継続してやっていかなければいけないと思っています」

 谷口は「ラインを細かく上げ下げしたり、相手のタイミングで受けさせないようにしたり、その辺は小賢しくやっていました」と笑ったが、決して簡単なことではない。相手の上から叩くようなヘディングで前線に放り込んでくるボールを跳ね返し続け、フィジカル自慢のセメンヨとの空中戦にほとんどの場面で勝てていたのは細かな駆け引きで上回れていたからこそだ。

 もちろんその前提には事前の入念な準備がある。試合前の取材を思い出してみると、34歳のベテランDFは「僕はそういう(予測できないことも予測していく)ポジションだと思う」と述べ、「真ん中をどれだけカバーできるか、相手のセンターFWとどれだけバトルできるかが肝になってくると思うので、自分が最後の局面で顔を出せるように、どんな状況でもカバーして防げるところを見せていかないと」と気を引き締めていた。

アキレス腱断裂から完全復活

守備だけでなく攻撃の起点としても機能した谷口彰悟。安定感は抜群だった 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 対戦相手となるチームやマッチアップする選手の特徴を限られた時間の中で徹底的に分析し、ピッチに立ったときに何をしてくるのか予測する。そして、それを的確かつ正確に連続してプレーに反映させていく。W杯に出場するレベルのチームを相手にこれだけのことを高い水準でやり続けるには、心身ともに万全の状態でなければならない。

 ただ、谷口は昨年11月に左アキレス腱断裂という大怪我を負い、実戦復帰まで約半年を要していた。昨季終盤の5月に復帰したとはいっても本来の姿には程遠く、今季に入っても序盤は所属クラブでベンチスタートの試合が続くなど復調までに長い時間がかかった。

 スタメン起用が増え始めたのは9月中旬のこと。徐々にパフォーマンスを上げて10月には約1年ぶりの日本代表復帰を果たし、ブラジル戦での歴史的な勝利に大きく貢献した。そして、約1カ月を経てのガーナ戦である。

 コンディションや試合勘の向上をはっきりと自覚している谷口は「所属チームでしっかり試合を重ねられていますし、そこで上げてきている部分をまた代表で発揮できている」と好循環の中で勝利に直結するハイパフォーマンスを披露し、完全復活をアピールすることができた。

 状態の良さを感じさせるのは競り合いの強さだけではない。今の谷口は、競った後のリアクションや難しい状況判断が求められる場面で、繊細なこだわりをプレーに乗せることができている。

 例えば彼自身が「そこが自分の生命線でもある」と話していたのは、クリアをクリアにしないことだ。難しく聞こえるが、つまりは簡単にボールを大きく蹴り出して逃げるのではなく、追い込まれた状況でも常に次の攻撃へとつなげるプレーを選択している。

「やっぱり奪ったボールをダイレクトで前に前線につけることでチャンスになるし、そこは常に見ておく、準備しておく、予測しておくところが自分の持ち味の1つなので、こだわってやれているかなと思います」

 抜群の安定感でディフェンスラインを支え、攻撃の起点にもなった谷口の前では佐野海舟が圧倒的な存在感を発揮した。6月の日本代表復帰以降、ほとんどの試合でボランチとして先発起用されている24歳はこのまま一気に定位置をつかみそうな勢いだ。

 谷口も佐野の存在は「大きい」と話す。

「僕らも(対人で)全部勝てるわけじゃないし、相手の懐にボールを落とされるとなかなか奪いきれない。そういうときにしっかり後ろでフタをして、前から挟み込んで、コントロールが大きくなったところをつぶすというのを本当に漏らさずやり続けてくれた。それを保証してくれると後ろもだいぶやりやすいです」

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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