米メジャー制した“新世紀世代” 西郷真央と山下美夢有、アマ時代から続く「ライバルではない」2人の物語
米女子ゴルフ団体戦で披露した“名コンビ”ぶり
入れば、ホームの韓国を破って準決勝進出、外せば敗退の状況。緊張感が全身を覆うなか、山下はリズム良くストローク。カップの真ん中にボールを沈めると、西郷が満面の笑みで駆け寄った。
「やった! やった!」
ハグで喜びを分かち合い、チームメートの古江、竹田麗央とも抱き合った。西郷がこれだけ喜んだのは、メジャー初制覇を果たした4月27日のシェブロン選手権最終日以来――いや、それ以上だった。
最終的に日本は準決勝、3位決定戦で敗れて4位に終わったが、西郷&山下は最後まで輝いていた。フォアサム(1つのボールを交互に打つ)での3位決定戦。普段は異なるメーカーのボール(西郷はブリヂストン、山下はスリクソン)を使用しているが、互いが譲り合いながらブリヂストンのボールでプレー。ラウンド中も頻繁に言葉をかわし、ホールによってどちらがティーショットを打つかを決めていた。分かり合っているからこその“名コンビ”ぶりだった。
年間女王へ駆け上がった山下と支える父の存在
ルーキーイヤーの2020年はコロナ禍と重なり、試合数が激減。2021年と合わせた統合シーズンとなり、同年4月、山下がKKT杯バンテリンレディスで初優勝を飾った。西郷は優勝できずも、50試合中21試合でトップ10入りし、年間ランキング(賞金ランキング)4位。山下の同13位を上回った。
翌2022年の前半は、西郷が快進撃を見せた。開幕戦ダイキンオーキッドでのツアー初優勝を皮切りに、10試合で5勝。一方の山下は、5月のワールドレディスサロンパス杯でツアー2勝目、国内メジャー初優勝を飾ったことで覚醒した。その後、最終戦のメジャー大会・JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップを含む3勝を重ね、通算4勝で年間ランキング(同年からメルセデス・ランキング)1位となり、2位の西郷を抑えて「年間女王」になった。
山下の強みは、父でコーチでもある勝臣さんの存在だ。ゴルフを始めた当時、勝臣さんもゴルフ未経験者だったが、一緒にクラブを握り始め、スイングを研究し、自身が試して良かった練習やトレーニング法を山下に勧めた。幼い頃からそばで練習を見てきたからこそ、勝臣さんは「ズレがあったら、すぐに分かりますし、修正できます」と言い切る。その信頼関係は今も続き、全英女子オープン期間中も現地で細かく助言。山下を日本女子史上5人目の海外メジャー大会覇者に導いている。
スランプを克服した西郷の「ゴルフ脳」
西郷には翌2023年も「先の見えない感覚」は続いていたが、夏場に復調。「嫌な感覚」を払拭するべく、球筋を本来のフェードではなくドローのイメージに変えることを発想し、同年11月の伊藤園レディスで復活優勝を飾った。その流れで米ツアー最終予選会(QS)を受験して2024年シーズン出場権を獲得。同年には、同ツアーのルーキー・オブ・ザ・イヤー(最優秀新人)にも輝いている。
師匠の尾崎はツアーに帯同しないが、苦しい時期にも助言を重ねていた。西郷はそれらを吸収しながら、「本来の自分」を取り戻し、海外メジャー優勝まで成し遂げた。この復活劇について、自身もスランプ経験のある30代女子プロは「余程、頭が良くないとできないことですよ」と驚きをもって表現した。
ゴルフはコースマネジメント、スイング調整も含めて、頭を使うスポーツ。西郷は国内で無双だった2022年前半、「グリーン付近の風が読めないときは、あえてグリーンの手前にボールを置くこともしました。そこからアプローチ、寄せワンでパーという感じで」と話していた。小技に絶対的な自信があるからこそのジャッジだ。尾崎は「西郷(せご)どんのゴルフ脳はトップ」と評価していたが、「西郷はここまで考えているのか」「こんなこともできるのか」と筆者自身も感じさせられた瞬間だった。