過程に目を向けつつ「完璧を求め過ぎない」 鍵山優真がNHK杯で見せた新境地
NHK杯3連覇が示した「成熟」
それでも合計得点(ショート98.58点、フリー188.66点、合計287.24点)で首位を守り抜いた。背景には卓越したリカバリー能力と、精神面の進化がある。
「これが試合。何が起きるか分からない」
そうコメントした22歳の声には、どこか清々しさもあった。ショートのミスを振り返ると、「スピンの入りのエッジの引っ掛かりが中途半端で、キャメルポジションに入れなかった」と分析。原因を即座に把握し、次への修正点を明言する姿勢が、トップアスリートとしての成熟を物語る。
「できて当然の部分でのミスが一番悔しい」と語る一方で、彼はその悔しさを演技後半の力に変えた。ステップやスピンで集中を切らさず、GOE(出来栄え点)を積み重ねる冷静さは大きな強みだ。
NHK杯は鍵山にとって勝つべき大会であり、同時に“試される場”でもある。ミスがありながらも3連覇を達成した今回、鍵山は結果よりも過程を見つめ、「去年よりもミスを引きずらないで戦えた」と述べた。彼の中で勝利と進化は、別軸の目標になっている。
鍵山の4回転の特徴は、着氷後の流れの美しさにある。GOEで高得点を狙うには、滞空時間だけでなく、ランディング後のスピード維持が欠かせない。ショート後、鍵山は「加点と自分の感触を比べたら、もっと良いジャンプが跳べると思っていて。練習では良い流れで跳べているし、サルコウもGOEで今までは4点台を取れていたので、今回は最低限だったかな」と語った。GOEで3点台後半を「最低限」と考える発言に、トップレベルの意識がにじむ。
特筆すべきは演技構成点(PCS)の高さだ。フリーでは4回転トウループの転倒がありながらも、全体トップの評価を得た。「ジャンプとジャンプの間を丁寧にやることが点に繋がる」と話すように、彼は技の成功と同時に“作品の完成度”も追求している。技術と表現のバランスを取りながら、鍵山は「勝つための構成」を自らの手で築き上げつつある。