町野修斗と鈴木唯人のケースに見る厳しい現実 欧州クラブと日本代表の双方で成功を掴む道とは?
クラブでポジションを失うリスクと表裏一体
だが、その数日間の熱狂が過ぎ去り、再び欧州の所属クラブの練習場に足を踏み入れた瞬間、彼らを取り巻く環境は一変する。冬の訪れとともに、曇天の時間が長くなったドイツの練習グラウンド。そこに、数週間前までは保証されていたはずの定位置で汗を流すライバル選手の姿があることも、珍しくはない。
とりわけチームとして結果の出ていない時期に離脱する時間が長くなれば、それだけチームメイトやスタッフとの距離は開くもの。言語の問題もあって、コミュニケーションの量により大きな差がつくため、代表活動後に再びチームに入り込んでいくのは容易ではない。
新加入選手であればなおさらだ。自分の特徴を理解してもらう時間が削られ、長距離移動でコンディションが上がらず、監督やチームメイトからの信頼を勝ち取れない状況が続いてしまう。
代表に選ばれることはもちろん光栄ではあるが、所属クラブでポジションを失うリスクと表裏一体なのだ。監督はもちろん、現地のメディアも彼らが不在の間にトレーニングでアピールに成功した選手を評価し始める。
今、鈴木唯人と町野修斗という2人のサムライが直面するのは、欧州サッカーの最も冷徹で、最も苛烈な現実である。
10月シリーズの招集外が鈴木の転機となる
この夏にデンマークのブレンビーからフライブルクに移籍した鈴木は、負傷者が出たとはいえ、開幕から2戦連続でスタメンを勝ち取り、得意とするトップ下で起用される上々のスタートを切った。
しかし、この2試合を低調な内容で落としたことで、チームは仕切り直しを求められる。そして、まさにそのタイミングで9月の日本代表活動に参加すると、帰ってきた頃には怪我人も戻り、定位置を失ってしまう。
特にこのときはアメリカ遠征(メキシコ戦とアメリカ戦)帰りで、時差の問題も含めてコンディション調整が難しく、帰独直後の第3節シュツットガルト戦でベンチ外となったのも痛かった。その試合でチームが今季のリーグ戦初勝利を挙げたこともあり、いい流れを取り戻した中に食い込んでいくのは簡単ではなかった。そこから公式戦6試合連続で出番なし。難しい時期が続いた。
再びピッチに立ち始めるきっかけとなったのは、10月のインターナショナルブレイクだった。出場機会を失った鈴木は、パラグアイ、ブラジルと戦ったこの10月シリーズの日本代表に招集されなかった。そのためクラブでトレーニングする時間が増えたのだが、鈴木はこの間に行われた練習試合でゴールを記録する。
「監督とコーチ陣に求められていることを、とりあえず毎日の練習でトライしながら、一歩ずつ成長することに目を向けてやっていた」
目に見える結果を残すとともに、開幕2試合で課題とされた守備の強度が備わってきたことで、少しずつ周囲の信頼を掴んでいく。そうなれば、あとはピッチで自身を表現していくのみ。そこから出場機会が増え始めると、特徴である攻撃面はもちろん、守備でも貢献できるようになった鈴木は、10月23日のヨーロッパリーグ、対ユトレヒト戦で移籍後初ゴールをマーク。これを機にスタメンの座に返り咲くのだ。
ユトレヒト戦後、チームを率いるユリアン・シュスター監督はクラブの公式サイトを通じてこんなコメントをしている。
「スズキにとって簡単な状況ではなかった。最初の2試合はスタメンだったが、その後はメンバー外になることもあった。それでも彼は自身が置かれた状況を受け入れた。決して簡単なことではない。代表ウイーク中もチームに残って練習を続けられたのは良かったし、カールスルーエとのテストマッチでも好パフォーマンスを見せていた。練習でしっかりアピールできれば状況を変えられるし、他の選手を追い越すことも可能だ」
フライブルクの試合に足を運ぶと、ウォーミングアップ中からチームメイトと積極的にコミュニケーションを取る鈴木の姿があった。前線でコンビを組むオーストリア代表FWのジュニオール・アダムとも、和気あいあいとじゃれ合っている。鈴木のケースは、代表ウイークをうまく活用してチームになじみ、信頼を取り戻した好例と言っていいだろう。