【月1連載】ブンデス日本人選手の密着記

町野修斗と鈴木唯人のケースに見る厳しい現実 欧州クラブと日本代表の双方で成功を掴む道とは?

林遼平

11月シリーズの日本代表にも招集された町野。ボルシアMGで定位置を奪還できるかどうかは、この活動の後のパフォーマンスに懸かっている 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 堂安律、伊藤洋輝、町田浩樹、町野修斗、佐野海舟など、多くの日本人プレーヤーが在籍するドイツ・ブンデスリーガ。彼らの奮闘ぶりを、現地在住のライター・林遼平氏が伝える月1回の連載が、この「ブンデス日本人選手の密着記」だ。2025-26シーズンの第3回は、今夏にそろって新天地を求めたボルシアMGの鈴木唯人とフライブルクの町野修斗が主役だ。日本代表として活動しながら、欧州のクラブチームで定位置を確保する難しさを、2人の置かれた厳しい現状が物語っている。

クラブでポジションを失うリスクと表裏一体

 満員に膨れ上がったスタジアムの歓声、日本人同士ならではの円滑なコミュニケーションと組織的なサッカー。そこには普段とは違う居心地の良さがある。日の丸を背負い、その責任とプレッシャーを力に変えながら日本代表の一員としてプレーする日々は、紛れもなく選手たちにとって価値の高いものである。

 だが、その数日間の熱狂が過ぎ去り、再び欧州の所属クラブの練習場に足を踏み入れた瞬間、彼らを取り巻く環境は一変する。冬の訪れとともに、曇天の時間が長くなったドイツの練習グラウンド。そこに、数週間前までは保証されていたはずの定位置で汗を流すライバル選手の姿があることも、珍しくはない。

 とりわけチームとして結果の出ていない時期に離脱する時間が長くなれば、それだけチームメイトやスタッフとの距離は開くもの。言語の問題もあって、コミュニケーションの量により大きな差がつくため、代表活動後に再びチームに入り込んでいくのは容易ではない。

 新加入選手であればなおさらだ。自分の特徴を理解してもらう時間が削られ、長距離移動でコンディションが上がらず、監督やチームメイトからの信頼を勝ち取れない状況が続いてしまう。

 代表に選ばれることはもちろん光栄ではあるが、所属クラブでポジションを失うリスクと表裏一体なのだ。監督はもちろん、現地のメディアも彼らが不在の間にトレーニングでアピールに成功した選手を評価し始める。

 今、鈴木唯人と町野修斗という2人のサムライが直面するのは、欧州サッカーの最も冷徹で、最も苛烈な現実である。

10月シリーズの招集外が鈴木の転機となる

一時はベンチ要員に甘んじていた鈴木だが、10月のインターナショナルマッチウイークを活用して復調。直近のザンクトパウリ戦でもゴールを決めた 【Photo by Daniela Porcelli/Getty Images】

 今季のブンデスリーガにおいて想定されていたほど出場時間を得られていない鈴木と町野だが、両者に共通して言えるのは、チームが調子を落としているタイミングで代表活動に参加したがゆえに、ポジションを失ったことだ。

 この夏にデンマークのブレンビーからフライブルクに移籍した鈴木は、負傷者が出たとはいえ、開幕から2戦連続でスタメンを勝ち取り、得意とするトップ下で起用される上々のスタートを切った。

 しかし、この2試合を低調な内容で落としたことで、チームは仕切り直しを求められる。そして、まさにそのタイミングで9月の日本代表活動に参加すると、帰ってきた頃には怪我人も戻り、定位置を失ってしまう。

 特にこのときはアメリカ遠征(メキシコ戦とアメリカ戦)帰りで、時差の問題も含めてコンディション調整が難しく、帰独直後の第3節シュツットガルト戦でベンチ外となったのも痛かった。その試合でチームが今季のリーグ戦初勝利を挙げたこともあり、いい流れを取り戻した中に食い込んでいくのは簡単ではなかった。そこから公式戦6試合連続で出番なし。難しい時期が続いた。

 再びピッチに立ち始めるきっかけとなったのは、10月のインターナショナルブレイクだった。出場機会を失った鈴木は、パラグアイ、ブラジルと戦ったこの10月シリーズの日本代表に招集されなかった。そのためクラブでトレーニングする時間が増えたのだが、鈴木はこの間に行われた練習試合でゴールを記録する。

「監督とコーチ陣に求められていることを、とりあえず毎日の練習でトライしながら、一歩ずつ成長することに目を向けてやっていた」

 目に見える結果を残すとともに、開幕2試合で課題とされた守備の強度が備わってきたことで、少しずつ周囲の信頼を掴んでいく。そうなれば、あとはピッチで自身を表現していくのみ。そこから出場機会が増え始めると、特徴である攻撃面はもちろん、守備でも貢献できるようになった鈴木は、10月23日のヨーロッパリーグ、対ユトレヒト戦で移籍後初ゴールをマーク。これを機にスタメンの座に返り咲くのだ。

 ユトレヒト戦後、チームを率いるユリアン・シュスター監督はクラブの公式サイトを通じてこんなコメントをしている。

「スズキにとって簡単な状況ではなかった。最初の2試合はスタメンだったが、その後はメンバー外になることもあった。それでも彼は自身が置かれた状況を受け入れた。決して簡単なことではない。代表ウイーク中もチームに残って練習を続けられたのは良かったし、カールスルーエとのテストマッチでも好パフォーマンスを見せていた。練習でしっかりアピールできれば状況を変えられるし、他の選手を追い越すことも可能だ」

 フライブルクの試合に足を運ぶと、ウォーミングアップ中からチームメイトと積極的にコミュニケーションを取る鈴木の姿があった。前線でコンビを組むオーストリア代表FWのジュニオール・アダムとも、和気あいあいとじゃれ合っている。鈴木のケースは、代表ウイークをうまく活用してチームになじみ、信頼を取り戻した好例と言っていいだろう。

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著者プロフィール

1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして各社スポーツ媒体などに寄稿している。2023年5月からドイツ生活を開始

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