2025女子ゴルフ総括「黄金時代到来の予感」

「神様のような人」宮里藍が次世代に残したもの 20歳で米挑戦、世界1位も失敗も経て胸に刻んだ教訓

柳田通斉

高校1年の廣吉優梨菜にも与えていた金言

日本女子オープン3位の高校1年・廣吉優梨菜も宮里藍から金言をもらっていた 【写真は共同】

 米女子ツアーには、樋口久子、岡本綾子、福嶋晃子、平瀬真由美らレジェンドたちも参戦していたが、宮里が20歳で挑戦したことは、今のプロたちに大きな影響を与えている。

 畑岡奈紗、勝みなみ、渋野日向子ら1998年度生まれの「黄金世代」は、幼少期に宮里の国内での活躍を見てゴルフを始め、宮里が海を渡って世界ランキング1位になるまでを見てきた。そして、宮里がツアーから引退した2017年、もしくは18年にプロに転向しているが、彼女たちにとっての宮里は、「憧れの存在」「神様のような人」であり続けている。

 そんな宮里は現在、1児を育てながら、宮里藍サントリーレディスをはじめ、ブリヂストンレディスオープン、ワールドレディスサロンパス杯といった契約スポンサーが関わる大会の会場に足を運び、出場する若手プロやアマチュアと対話。自身の経験をもとにアドバイスを送っている。

 今年10月の日本女子オープンで3位となり、ローアマ(最上位のアマチュア)に輝いた高校1年の廣吉優梨菜は、6月に出場した宮里藍サントリーレディス開幕前の座談会で、宮里に「連続でバーディーを獲れない」と相談。すると、「練習の時からバーディーを何回連続で獲れるか、試合に近い状態でやるといいよ」と金言をもらっていた。その後、練習姿勢をあらためたことで、8月のNEC軽井沢72で自身ツアー初のトップ10となる8位。日本女子オープンでの優勝争いにつなげた。

 宮里は後進の指導にも精力的で、19年からジュニア女子ゴルファーを対象にした宮里藍インビテーショナルSupported by SUNTORYを毎年開催。選考した選手による競技を実施しつつ、自身が現役時代に学んでいた「ビジョン54」に基づくレッスン会も行っている。全ホールでバーディーを狙う考え方で、状況判断の「THINK BOX」、決めた判断を迷わず実践する「PLAY BOX」、良いプレーを記憶に残すために「やった」などと声を出す「MEMORY BOX」に分けて説明。理由は「成長過程にこうしたメンタルトレーニングの方法もあるんだと知ってほしい」との思いからだ。

 同大会では、保護者への「レッスン会」も実施している。ジュニアゴルファーのなかには、ラウンドの結果が悪いと親に怒られることから、萎縮し、スコアをごまかす選手もいるという。子どもたちがそうならないために、宮里は「スコアがいい時も悪い時も、『今日の良かったところはどこ?』『改善できるところは?』『それは、どうすれば実現できる?』などと、質のいい質問をして、話し合ってください」と説いている。

失敗も踏まえた経験が次世代の教訓になる

渋野日向子(右)、馬場咲希(左)ら米国挑戦を続ける後輩たちへの影響力は計り知れない 【写真は共同】

 2022年の大会では、プロ転向後に父でコーチの優氏に叱責されたエピソードも明かした。

「2年目(2004年)のサントリーレディスで優勝した後、日が暮れるまで200人ぐらいにサインをして、夜11時頃に沖縄の空港に着きました。そして、荷物をピックアップする時にたくさんの人に無許可で写真を撮られ、ある人からは握手を求められました。私は『こんな時間にまだ』という感じで、無愛想な顔をしていたのですが、家に向かう車の中で、父にしこたま怒られました。『お前はゴルフができるから自分が偉いと思っている。そんな態度なら、ゴルフを辞めてしまえ』と。

 その時、私はすごく反抗しましたが、今になって『ごもっとも』と思います。人間性の部分で怒られたことは、忘れられません。確実に天狗になりそうな時期でした。それを引き戻してくれたことは、ありがたかったです」

 宮里はこうした「失敗」も踏まえ、経験を伝え続けている。飛距離を求めてスイング改造をし、スランプに陥ったことも今の選手たちには教訓になっている。だからこそ、その存在感は増し、宮里をきっかけにゴルフを始めた天本ハルカや山城奈々らは今でも、「試合会場でお見かけしても、緊張してご挨拶もできなかったりします」「お話できた時はとても幸せでした」などと話している。

 文字通りのカリスマ。そんな存在になっていることを宮里に伝えたことがあるが、その際は「え~っ、自分ではそんなつもりは全くないんですけどね」と言い、笑みを浮かべた。

 振り返ると、宮里は国内15勝、海外9勝。目標の海外メジャー優勝を果たせないまま、32歳で競技から離れた。だが、今の“日本女子ゴルフ黄金期”の礎を築き、現在の貢献度も計り知れない。まだ、40歳。今後も唯一無二の存在として、その動向が注目される。

(企画・編集/Creative2『THE ANSWER』)

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著者プロフィール

1967年3月31日、山口県宇部市生まれ。早稲田大学社会科学部を卒業後、90年に日刊スポーツ新聞社に入社。文化社会部やスポーツ部の記者を歴任し、ゴルフ担当時代に宮里藍の活躍を追った。著書に『宮里藍 世界にはなつミラクルショット』(旺文社)。2019年に退職後、静岡朝日テレビ宣伝担当局長を経て、現在は芸能、時事、格闘技などを扱うニュースサイト「ENCOUNT」の編集長。その傍ら、JLPGAツアーの現場にも定期的に足を運び、「THE ANSWER」に寄稿している。

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