開幕から首位を守り10年ぶりの優勝、CS敗退で流した涙のワケ 元西武監督・辻発彦が明かす舞台裏
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「富士大の先輩・後輩」が活躍、絶好のスタートダッシュ
多和田は開幕6連勝して最終的に最多勝を獲りました。この年は打線が凄かったですから、多和田が投げる試合で打線がよく打っていた印象があります。それでポンポンと白星が付いて、彼自身も乗って行けたシーズンだったと思います。最終的に防御率が3点台後半(3.81)だったとは思いますが、それでも16勝できたのは打線のおかげという部分も大きかったですね。
2017年オフ、先発で二桁勝った野上亮磨がFAで巨人に移籍し、58試合投げてブルペンを支えた牧田和久もポスティングでサンディエゴ・パドレスに移籍。不安もあった投手陣でしたが、多和田がその穴をよく埋めてくれました。
スタートは良かったものの5月は投打が噛み合わずに4つの負け越し(10勝14敗)。でも3・4月がちょっと出来すぎでした。長いシーズンをトータルで考えるとあの調子でずっと勝つわけがないですし、波は必ずあります。どこかで反動はくるだろうと考えていましたから特に慌てることはありませんでした。5月に4つ負け越してもまだ貯金が10ある。シーズン後半に優勝争いに加わるためには、オールスターが終わる頃にしっかりと上位にくっついておくことが条件だと考えていたので、しっかり6月、7月に巻き返していこうとすぐに頭を切り替えました。
開幕前には阪神とのトレードで榎田大樹を、シーズン中も外国人のヒースとマーティンを獲得し、中日から小川龍也を金銭トレードで獲りました。苦しい台所事情の中でこの4人の加入が大きかったですね。榎田は先発で10勝してくれましたし、ヒースも13セーブ挙げて、マーティンと小川もブルペンを支えてくれました。この的確な補強は私の方から「先発、中継ぎの補強をお願いします!」と球団にお願いしたわけではなく、編成部が主導して動いてくれたものです。
小川は中日時代から見ていた選手。「こういう選手の獲得を考えています」という話をされたときは、人間的にも良い選手ですし中日でなかなか出番がないようでしたから「ぜひお願いします!」という感じで獲ってもらいました。
僕自身もヤクルトに移籍したことで環境が変わって、気持ちもリフレッシュして移籍1年目にキャリアハイの打率を残せた経験もあったので、小川と榎田にも期待はしていました。でも彼らはこちらの期待以上の働きをしてくれましたね。
精神的にキツかった9月の6連戦
「さすがは前年王者。終盤に強さを発揮してきたな」と感じましたし、一方でこちらは優勝経験のない選手ばかり。まだ5ゲーム差あるとはいえ気分的には嫌なものでしたね。
選手たちもゲーム差を気にしたとは思います。それでも8月はトータルでは勝ち越し(15勝10敗1分)ていましたから、わざわざ選手たちに「慌てることはないよ」「落ち着いていこう」などと話すことはありませんでした。そんなことを言えば選手たちも余計に気にするでしょうしね。ソフトバンクが迫ってきている不安はもちろんありましたけど、それは僕の胸に秘めて選手たちの前では平然として構えていました。
「本当の勝負は9月に2回ある本拠地でのソフトバンク3連戦」、そんなふうに自分に言い聞かせていました。
そして迎えた9月15日からのソフトバンクとの3連戦。この時ゲーム差はさらに縮まり3.5差になっていました。
この3連戦も含めた9月14日(楽天戦)からの6連戦前は精神的にキツかったですね。「全部負けたらどうなるんだろう......」そんな不安に襲われていました。
というのも、ソフトバンクとの初戦に先発を予定していたのが登板1試合で0勝だった郭俊麟。対するソフトバンクはエースの千賀滉大です。二戦目がプロ入り2年目でここまで4勝の今井達也、三戦目が4勝のウルフを予定していましたから、先発がちょっと不安だったのです。楽天との初戦に負けると6試合全部負ける可能性もある。そんなことが頭をよぎりました。
でも楽天戦をしっかり獲ることができたことで、「ソフトバンク戦は最悪一つ勝てば良い」と精神的に少し楽になりました。そしたらソフトバンクに3連勝。初戦の初回に千賀から3点取れたことが大きかったですね。これでいつもの「打ち勝つ野球」ができて「イケるぞ!」と思いました。
二戦目、三戦目も初回に4点を取るなど打線が爆発し、不安のあった先発投手を打線が強烈に援護。事実上の天王山を3タテしてマジック「11」を点灯させることができました。
ソフトバンクにはエースの菊池がどうしても勝てなくて、チームとしても苦手意識があったのですが、その相手に大事な局面で打ち勝っての3連勝。選手たちに大きな成長を感じました。
勢いに乗ったチームはこの6連戦を全勝すると、その後も勢いが止まらず怒濤の12連勝です。マジックを一気に「1」に減らし、10年ぶりのリーグ優勝が目の前に迫っていました。