現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

エル・クラシコで衝突したヤマルとカルバハル 両者の関係悪化がスペイン代表に及ぼす影響は?

山本美智子

昨年のEURO2024でも右サイドで好連携を見せ、スペイン代表の優勝に貢献したヤマル(左)とカルバハルだが、エル・クラシコを境にその関係性に亀裂が 【Photo by Julian Finney/Getty Images】

 スペイン在住がすでに25年以上に及ぶ日本人ライターによる、月2回の連載コラム。レアル・ソシエダの久保建英と、マジョルカで2年目を迎えた浅野拓磨の動向を中心に、文化的・歴史的な背景も踏まえながら“ラ・リーガの今”をお届けする。2025-26シーズン第6回のテーマは、10月25日(現地時間、以下同)に行われたエル・クラシコの“余波”。ラミン・ヤマルとダニエル・カルバハルの衝突が、北中米ワールドカップを目指すスペイン代表にも悪影響を及ぼすかもしれない。

正確に伝えられなかったヤマルの発言

 少し古い話になって恐縮だが、10月25日に行われたエル・クラシコについて、ここでいま一度触れておく必要がある。というのも、今回の一戦が来年の北中米ワールドカップを目指すスペイン代表に、ネガティブな影響を与えかねない状況にあるからだ。

 スペイン国内では、いまだにエル・クラシコの余韻が後を引いている。連日メディアを賑わせているその主役は、バルセロナのラミン・ヤマルだ。エル・クラシコ前には、スペイン代表での戦いで恥骨を痛めた彼に対して同情的な声も聞かれたが、しかしその後、負傷中でありながら(当時の)彼女とヘリコプターデートをしたり、試合2日前にキングスリーグ(7人制のサッカー大会)に参戦し、そこでのイベントでレアル・マドリーを挑発するような言葉を口にしたりと、とにかく話題に事欠かない。

 結果的に、このキングスリーグのイベントに参加したことが仇となってしまったのだが、しかしながら多くのメディアは当時の正確な情報を伝えていない。実際、ヤマルは直接的にR・マドリーを揶揄(やゆ)する発言をしたわけではなかったのだ。

 キングスリーグのクラブの1つ、ポルチーノスFCについて司会者から、「このチームはR・マドリーと似ていると思うか?」と問われたヤマルが、「もちろん。(試合を)盗むし、文句を言うし」と冗談交じりに返す。するとこれにポルチーノスFCのオーナー、イバイ・ジャノスが反応。「R・マドリーが試合を盗むって?」と聞き返したところ、それに対してヤマルが苦笑いをしながら「いやいや、それは……」と、口ごもるようなリアクションをした、というのが真相だ。

 付け加えると、このイバイ・ジャノスは10年ほど前からサッカー界ではよく知られた若き億万長者で、TikTokで2700万人ものフォロワーを持つスペイン人インフルエンサーの走りでもある。また、生粋のR・マドリーファンとしても有名で、だからこそイベントの司会者も前述のようなフリを――あくまでもジョークで――したわけだ。

 ヤマルの言葉に驚き、目を剥いたようなイバイ・ジャノスの表情と、さらにそれを見て「しまった」といったふうにやんちゃな笑顔を浮かべるヤマル。現場ではそのやりとりが笑いを誘ったのだが、しかしソーシャルメディアは容赦がなかった。

 とりわけ、R・マドリー寄りのメディアによるヤマル叩きは、エル・クラシコ直前ということもあって、恐ろしいほどに苛烈だった。もっとも、ネット上でのバッシングや悪質なコメントの類、そして試合会場となったサンティアゴ・ベルナベウでのブーイングといったものは、想定内であった。

冗談でも信じがたい代表キャプテンの言葉

エル・クラシコ終了後、挨拶に行ったヤマルをカルバハルが煽り、これをきっかけに両チーム入り乱れての騒動に発展。後味の悪さを残した 【Photo by David Ramos/Getty Images】

 予想以上だったのは、R・マドリーの選手たちの反応だった。

 試合はR・マドリーが2-1とリードして迎えたアディショナルタイム、バルサのペドリがアフタータックルで退場になったのをきっかけに両者が一触即発の状態となる。

 その後、ヤマルは試合終了のホイッスルとともに、彼の方から近づいて相手チームのキャプテン、ダニエル・カルバハルのもとへ挨拶に行くのだが(拡散されているほとんどの動画になぜかそのシーンは映っていないが)、そこでカルバハルが「(お前は試合の前に)話しすぎだ。(試合に負けた)今、話せよ!」とジェスチャー付きで煽り、そこから両チーム入り乱れての騒動へと発展するのだ。

 最近はすっかりヒール役が板についたヴィニシウス・ジュニオールも、周囲の制止を振り払ってヤマルに向かっていったが、しかし彼の暴走はいつものことで、スペイン的観点で言えばご愛嬌で済むレベルだった。

 問題視すべきは、試合終了後の騒動のきっかけとなったカルバハルの行動だ。なぜなら、彼はR・マドリーだけでなく、スペイン代表のキャプテンでもあるからだ。

 エル・クラシコ後のあるインタビューで、カルバハルはこう言い切っている。

「スペイン代表が来年のワールドカップに出場して、もしヤマルがチームの一員としてそこで戦うつもりなら、俺は“彼ら”と一緒にプレーしない」

 のちに「冗談の一部を切り取られた」と本人がコメントしたようだが、しかし発言の撤回はしていない。何より百歩譲って冗談だとしても、それが代表キャプテンの言葉だとはとても信じられない。

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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