MLBポストシーズンレポート2025

言葉では説明できない「見えない力」が働いたドジャース 最後に勝者と敗者の行方を分けた差は?

丹羽政善

2年連続でワールドシリーズを制し、トロフィーを掲げるドジャースの選手たち 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】

「なぜ勝てたのか説明できない」

 優勝セレモニーも終わり、フィールドから徐々に人けがなくなったが、ドジャースのダグアウトの周りだけは、日付が変わっても人だかりができていた。中央に優勝トロフィーが鎮座。一緒に写真を撮る選手、家族の列が途絶えなかったのだ。

試合終了後にグランドで優勝の余韻に浸るドジャースの選手と家族たち 【筆者撮影】

 そこに家族と一緒に並んでいたアンソニー・バンダ。今年は、日米のポケモン本社を一緒に訪れたが、彼に挨拶をしてから記者席に上がろうと声をかけると、図らずも1年を振り返ることになった。

「今年の優勝は、去年よりもはるかに難しかった」

 バンダは、ほっとした表情で、そう言葉を絞り出した。

――今日も追い込まれた。

「あぁ、負けたと思った。なぜ勝てたか? うまく説明できない」

 そう言って苦笑したが、もちろん、安堵をもたらしたのは、1年間を戦い抜いてこその思い。

「今年はけが人も多かった。最後に先発がみんな戻ってきたけど、本当に戦力が揃わなかった」

 特に投手陣にけが人が多かった。先発ではブレーク・スネル(約4カ月)、タイラー・グラスノー(約2カ月)、佐々木朗希(約4カ月半)。リリーフでもブレーク・トライネン、マイケル・コペックら勝ちパターンのセットアッパーが長期離脱。カービー・イェイツ、タナー・スコットも欠場が多く、何より彼らは、最後まで状態が上がらなかった。

 結果、バンダ、アレックス・べシア、ジャック・ドレーヤー、ベン・カスペリアスらにしわ寄せがおよび、バンダの登板回数は、キャリアハイで、チームトップの71試合に達した。

「もう、とにかく休みたい」

 11月いっぱいは、ゆっくりするそうだ。

 その彼は、ちょうど、ブリュワーズとのリーグ優勝決定戦で王手をかけた日の試合後だったか、こんな話をしてくれた。

「フィリーズとの第4戦に延長で勝ったこと。あれが大きかった。あの試合を落としていたら、多分、第5戦も勝てなかった」

 第4戦、ドジャースは延長十一回、オライオン・カーカリングのミスで、棚ぼたの勝ちを拾った。しかし、負けていればフィラデルフィアに移動して第5戦を行うことになっていた。第1戦、2戦と敵地で連勝していたドジャースだったが、熱狂的な応援で知られるフィラデルフィアで3つも勝てるかどうか、ドジャースの選手らでさえ、悲観的だった。

「向こうは、嬉々としてホームに帰る。こっちは、ガッガリしてフィラデルフィア行きの長距離フライトに乗らなければならない。テンションがまるで違ったと思う」

 勝ったことで逆にリズムに乗り、リーグ最高勝率でプレーオフに駒を進めたブリュワーズを4タテ。ただ、ワールドシリーズを迎える上では、そこに落とし穴があった。

「認めたくないし、言い訳にもしたくないけど、間が空きすぎた」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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