パワハラ処分のB1越谷・安齋HC ホーム復帰戦で何を語り、どう迎えられたのか?
「僕自身が楽しんでいなかった」
不甲斐ない展開の中で、タイムアウト時に腕を組んで一言も発しない、作戦ボードをコートに叩きつける……といった手法で選手に「圧」をかける場面を見たこともある。メディアに対するコメントでも、選手に対して率直なダメ出しをする指揮官だった。
一方で怖さや激しさに「優しさ」も同居した親分肌のキャラクターで、宇都宮時代もそこがファンに愛されていた。2020-21シーズン、ファイナル敗退後の記者会見は今も語り草になっている。「自分に何が足りなかったか」を問われて言葉を詰まらせている比江島慎の横にいた彼はマイクをもぎ取り「マコの足りないところなんてありません。負けた原因は僕の采配です」とコメントした。
1日の試合後に、彼はこう語っている。
「僕がいつも言っていたことですけどお金を稼ぐ大変さ、それを払って見に来てもらう有難さといった考え方は間違っていないと正直思います。しかしお客さんに楽しんでもらいたいという思いが強くても、僕自身がまったく楽しんでいませんでした。そういう部分が色々なところに伝わってしまったのかなと多います。楽しさがあり、厳しさもありだったらいいのですが、僕は『厳しい』だけがどんどん行ってしまっている状況でした」
そこは納得のいく説明だった。そして、彼が過ちを犯せばその周囲も不幸になる。
「本当に色々な人に連絡いただいて、気も使っていただきました。連絡のタイミングもみんな本当に色々考えてもらって、自分は本当に幸せだなと思いました。だからこそ、こういう立場にいられることに関して、何か返していかなければいけません。一番支えてくれたのは家族ですが、次にこういうことが起きたら、家族に対しても色んな目が向けられてしまいます。バスケットは大事ですけど、家族が一番大事だというところは、この3カ月で考えました」
周囲を不幸にしないために
一方で選手の人格、人権を否定するような発言は明らかな「悪」だ。選手を突き放す、追い込む指導で選手の気持ちが競技やチームから離れてしまうようなら「否」だ。試合に勝とう、ファンに楽しんでもらおうという発想は是だろう。しかしそれを乱暴に、一方的に選手に押し付けたら届かないし、選手の害ともなり得る。
楽しさは力を出し切る、限界まで努力するための大切なエネルギーで、選手からそれを奪ってしまってはならない。そのためには「自分が一緒に楽しむ」という姿勢も有用だろう。処分から復帰した指揮官のコメントとしては意外な内容だったし、反省の不足を感じ取る人がいるかもしれない。ともあれ、それは彼が3カ月間の研修、オフコートの活動からつかんだものだ。
何カ月ぶりかで向き合った44歳の指揮官は程よく吹っ切れた、重苦しさを感じない雰囲気を漂わせていた。それは「いい予兆」にも思える。
対戦相手だった琉球の桶谷大HCは安齋HCの3歳上だが、二人はライバルであり友人関係でもある。桶谷HCはこう口にしていた。
「(けん責、活動禁止の)裁定が下る前から話もしていて、裁定が下ったあとも、昨日も話をしました。今日の謝罪の挨拶も見て、彼なりにすごく反省したのだなと僕は感じました。だからこそ、あそこで発した言葉だけでなく、これからの生き方、生き様が大事になってきます。それがアルファーズから離れていった人たちに対しての、最低限やるべき仕事、果たすべき使命なのかなと思います。彼も言っていましたが『バスケットが楽しい』とより多くの人に思ってもらう指導を、これからは続けてほしい」
今も期待や愛情を持ち続けている仲間、ファンがいる。彼自身が口にするように、大切な家族もいる。パワーハラスメント問題は取り返しのつかない過ちだが、安齋HCがさらに周囲を失望、落胆させるようなことがないように願いたい。