パワハラ処分のB1越谷・安齋HC ホーム復帰戦で何を語り、どう迎えられたのか?

大島和人

安齋HCは10月下旬に復帰し、11月1日がホーム初戦だった 【(C)B.LEAGUE】

 11月1日、B1(Bリーグ1部)の越谷アルファーズは琉球ゴールデンキングスと対戦し、65-68で敗れた。安齋竜三ヘッドコーチ(HC/監督)にとっては、復帰後初のホームゲームだった。

 彼は選手に対するパワーハラスメントを問われ、7月23日付で「けん責およびバスケットボール関連活動の全部の停止・禁止3カ月」の処分を受けている。Bリーグ側の発表によると、ハラスメントの内容は選手に対する暴言と威圧的な態度。複数の選手が心身の不調をきたし、競技環境の変更を余儀なくされた例もあったという。

 安齋HCは宇都宮ブレックスの「常勝軍団化」に大きく貢献したコーチで、2021-22シーズンにはHCとしてB1を制している。2022年には当時B2だった越谷に加わり、HCとなった2023-24シーズンにはB1昇格を果たした。

 もちろん、過去の実績はハラスメントを正当化するものではない。一方で人は過ちから学び、変われる生き物だ。その再チャレンジを否定するべきでもないだろう。

ホームコートで語ったこと

試合前には安齋HCからファンへの説明、謝罪があった 【(C)B.LEAGUE】

 試合開始の40分ほど前、安齋HCは上原和人社長に伴われて越谷市総合体育館のコートに立ち、来場者に対してこう切り出した。

「僕の言動、行為で沢山の方々にご迷惑と心配をおかけして本当に申し訳ありませんでした。先週からチームに復帰するチャンスをいただきました。3試合させてもらったんですけど、そこですごく感じることがありました。それはバスケットボールが本当に面白く、楽しいスポーツだということです。僕がこのチームに来て、自分の責任としてやるべきことはいいチーム、応援されるチームを作ることでした。B1昇格はもちろんですけど、B1で戦っていけるチームを作ることが、僕に課せられた責任だと思って仕事をしてきました。ただ、バスケットボールを楽しむという部分が足りなかったと強く思っています」

 被害者となった選手に対しては、このように述べている。

「被害にあった選手たちには申し訳ない気持ちでいっぱいですが、今でも彼らがバスケットボールを続けてくれることが本当にありがたいです。僕が言える立場か分かりませんが、今後の彼らがバスケットボールを本当に楽しくプレーしてくれたらと思っています」

 自身の今後についてはこう口にしている。

「僕自身は新しいコーチングにチャレンジしながら、皆さんに応援して良かったと思ってもらえるようなチーム作りに全力を注いでいきたい」

 アルファメイト(越谷アルファーズのファン)からの反応は総じて温かいものだった。登場時も握手で迎えられ、ロッカーに下がるときはさらに大きな拍手が送られた。複雑な思いを残すファンもいるだろうが、ブーイングや罵声は聞こえなかった。

ハラスメント問題の影響は?

喜多川(左)は安齋HC不在時のチーム作りに尽力した 【(C)B.LEAGUE】

 ファンの反応が温かったからと言っても、チームにはパワーハラスメント問題の影響がまだ残っている。誰がパワーハラスメントの被害者で、どの移籍がその影響という経緯は公表されていない。しかし昨季の主力が複数チームを離れたことは事実で特に日本人選手は有望な若手、中堅が軒並み移籍を選択している。

 カイ・ソット、松山駿らの不在もあるが、11月2日の琉球戦(59●77)を終えてチームは4勝8敗にとどまっている。チーム作りの遅れはありそうだ。

 今季のキャプテンを任された喜多川修平は「残留組」だが、彼はこう振り返る。

「新加入選手がすごく多かったので、コミュニケーションを取って、今までやってきた越谷のバスケットを浸透させなければいけませんでした。そこは積極的にコミュニケーションを取ってやっていました。ただ細かな部分で浸透し切れてない部分もあって、そこは竜三さんが戻ってきて、より明確になっていると思います」

 安齋HC本人にも、現場から離れていた影響があった。1日の試合で、越谷は残り6秒からファウルゲームを仕掛け、相手フリースローの直後にタイムアウトを取った。3点ビハインドの勝負どころだったが、彼は指示を出さずハドルを見守っていた。

「今日は基本的に、アシスタントコーチ陣が(指示を)出していました。僕が本当に3カ月間いなかったこともあって、佐賀戦も富山戦もああいう局面で、相手と自分たちのチームがどうだからというイメージがうまく出てきてなかった。佐賀戦は僕が(誤った判断を)やってしまったんです。自分の凝り固まった考え方から少し変えていきたいという思いもあります。今後もしかしたら僕がやることがあるかもしれないですけど、そこはもう任せないとダメだなと思っています。今日はデマーカス(・ペリー)がやってくれました」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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