MLBポストシーズンレポート2025

先発・大谷翔平が3ラン被弾も劇的な逆転勝利 「涙が出た」山本由伸、佐々木朗希も球団史上初の連覇に貢献!

丹羽政善

ワールドシリーズ連覇を喜び合うMVPの山本由伸と大谷翔平 【Photo by Michael Chisholm/MLB Photos via Getty Images】

負けを覚悟した後のミラクルな逆転劇

 まさかこんな結末を迎えるとは――。

 1点を追う九回、なんと9番のミゲル・ロハスが同点ソロ。

 その裏、1死一、二塁のピンチを迎えると、昨日先発した山本由伸がマウンドへ。先頭打者に死球を与えて満塁としてしまったが、そのピンチをしのぐと、十回は三者凡退に抑えた。

 ウィル・スミスの本塁打で1点を勝ち越した延長十一回裏は、先頭のウラジーミル・ゲレロJr.に二塁打を許したものの、1死一、三塁でアレハンドロ・カークを遊ゴロ併殺に仕留め、ドジャースが球団史上初の連覇を果たしている。

 こうして駆け足で振り返れば、劇的なハッピーエンディングだが、おそらくドジャースファンは何度も負けを覚悟したはず。なにしろ三回、先発の大谷翔平が3ランを打たれ、いきなり3点のビハインドを背負ったのだから。

 そのシーン、日本のメジャーファンは既視感を覚えたのではないか。いや、それは決してデジャブではない。

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 時計を少し巻き戻す。

 筆者は、2017年11月1日――ダルビッシュ有(当時ドジャース)がワールドシリーズ第7戦に先発したときのことをはっきりと覚えている。

 左翼ポール際にあるブルペンでダルビッシュが試合前のウォーミングアップを始めたとき、それを上から見ていた。第3戦に先発したときには、二回途中、6安打、4失点で降板。同じ結果になれば、ドジャースの優勝は厳しい。

 どんな展開が待っているのか。ブルペンに漂う緊張感を肌で感じた。

2017年のワールドシリーズ第7戦、試合前に投球練習を行うダルビッシュ有 【筆者撮影】

 それからちょうど8年後、同じワールドシリーズ第7戦の先発マウンドに大谷翔平が上がった。試合前、ブルペンで投げ始めたときに感じた張り詰めた空気は、8年前の記憶を蘇らせた。

 日本ハム時代、同じ11番をつけていた投手が背負う宿命は、かくも奇縁なり。

第7戦の試合前に投球練習を行う大谷翔平 【筆者撮影】

 投げるたび、「うん、うん」と頷く大谷。トラックマンの軌道データを確認し、また、頷く。

 調子がいいのか、悪いのか。それだけでははかりかねたが、試合が始まってみれば、後者であることは容易に見てとれた。本人は投げたいところに、投げたい球を投げられないもどかしさを感じていたのではないか。

「少しでも長く(投げて)後ろにつなげるようにという思いでマウンドには立っていた」と大谷。しかし、非情な結末を招いた。

「最後は悔しい形で打たれてしまった」

 球速は出ていた。4シームの平均は98.9マイルで、今季の平均より0.5マイル速い。縦の変化量は16インチで、今季平均の15インチを上回った。

 しかし、ストライクとボールがはっきりしていて、球数がかさむ。コマンド力の欠如を象徴したのが三回。1死一、二塁のピンチでボー・ビシェットを迎えると、初球の甘く入ったスライダーをセンターのバックスクリーンの上まで運ばれた。

三回、ボー・ビシェットに3ランを浴びた大谷翔平 【Photo by Vaughn Ridley/Getty Images】

 がっかりと両手を膝についた大谷。そのまま降板となったが、2017年のワールドシリーズで、ダルビッシュが二回、ジョージ・スプリンガーに2ランを打たれて降板するときの背中がオーバーラップ。大谷は、ダルビッシュの雪辱を果たすには至らず、歴史を繰り返すことになった。

2017年、第7戦の二回、当時アストロズのジョージ・スプリンガーに2ランを浴びたダルビッシュ有 【Photo by Christian Petersen/Getty Images】

 中3日での先発。せいぜい2イニング程度ではないかーーという予想もあったが、三回も続投。二回を終わった時点ですでに43球。三回の頭からタイラー・グラスノーを投げさせる選択肢はなかったか――。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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