山本由伸が粘りの投球でつないだWS連覇の可能性 運命の第7戦は「先発・大谷翔平」が有力に!
「先発・大谷」の条件が整った
窓枠の大きさは、せいぜい1メートル四方。フィールドまでの高さは、どのくらいだろう、ビルの5〜6階、いや7〜8階相当か。となると、下から投げてその枠内に入れることは、決して容易ではない。ただ、だからこそ選手は挑戦したくなる。この日はドジャースの控え捕手、ベン・ロートベット捕手が何度かチャレンジ。しかし、一度もホテルのファンにボールを届けることはできなかった。
同じ頃、第7戦での登板に備え、右翼でキャッチボールをしていた大谷翔平のところにも歓声が上がっていた。ちょうど、打撃練習の打球が飛んできて、それを拾った大谷に、「こっちに投げてくれ!」という声が方々から飛んでいたのだ。
大谷は耳に手を当て、一番大きな声を出したファンに投げてあげる、という仕草をしたが、ブーイングも飛び交い、結局は一番声が少なかった右翼ポール際の席に向かってボールを投げ入れている。その瞬間、ブーイングが一層、大きくなった。とはいえ大谷は、ファンらとの言葉のない会話を楽しんでいるようでもあった。
さてその大谷だが――、明日の第7戦で先発するのでは、という可能性が強まった。
それが実現するには、この日の試合に勝つことがまずは前提だったが、それ以外にもさまざまな条件が、「先発・大谷」の実現に向けて整った。
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先発の山本由伸は、先制した直後に1点を失ったものの、その後は、追加点を与えなかった。
圧巻だったのは六回。2死から、ウラジーミル・ゲレロJr.に二塁打を許し、続くボー・ビシェットを歩かせた。しかし、続くドールトン・バーショから三振を奪ってピンチを凌いでいる。
山本は、ビシェットを歩かせた場面について、「少し力が入りすぎた」と明かしたものの、「そこで一回、冷静になって余分な力を抜いた」という。その切り替えが、功を奏した。
2点リードの八回からは、佐々木朗希が登板。その八回は、厳しい判定もあって1死一、二塁のピンチを招いたが、かろうじて無失点で切り抜けている。
それでもまだ、無死二、三塁のピンチではあったものの、ここでドジャースは、勝てば明日の先発が予定されていたタイラー・グラスノーをマウンドに送っている。
そのグラスノーは、アーニー・クレメントを1球で一塁フライに打ち取ったが、続くアンドレス・ヒメネスに打球を左中間に運ばれた。
レフトの前に落ちれば、同点――。
ただ、果敢に走り込んできたキケ・ヘルナンデスがダイレクトで捕ると、そのまま二塁へ送球。飛び出していたバーガーがアウトとなって併殺が成立。試合は劇的なエンディングを迎えたのだった。
その最後のプレーの裏には、ヘルナンデスの好判断もあった。
「バットが折れる音が聞こえたんだ」
それで猛然と突っ込んだ。
ただ、誤算があった。
「ボールが照明の中に入って消えた」
だがヘルナンデスは、ちょうど落下地点に走り込んでいた。まさに経験値がものをいった。
「最後にボールが出てきて、捕ったあとは、勢いがついていたから、送球ミスをしないように心がけた」
あえて力を抜いてワンバウンドを投げ、正確性を重視した。
試合後、「助かった」と漏らした佐々木。ダグアウト前で山本に抱きしめられた。