【カーリング】PCCCで銅メダルの日本代表SC軽井沢クラブ 好調のフロントエンドが五輪最終予選に向けて明るい材料に

竹田聡一郎

前列左から山口、山本、小泉、臼井、後列左が栁澤、右がアーセルコーチ 【(C)JCA】

ショット率1位のリードの小泉は「自身のクセ」を修正、3位のセカンド山本は「氷と共鳴」

 カーリングのパンコンチネンタル選手権(PCCC)がアメリカのミネソタ州バージニアで行われ、男子日本代表SC軽井沢クラブは銅メダルを獲得した。

 ラウンドロビン(総当たりの予選)を5勝2敗の3位で通過すると準決勝はアメリカに敗れ3位決定戦では中国との接戦を制して表彰台に上った。

 大会前、サードでスキップの山口剛史は「最終予選のテストにもなる」とコメントしていた。来年のミラノ・コルティナ五輪の最終予選は12月にカナダ・ケロウナで行われるが、それを見据えると日本代表のユニフォームで10エンドゲームを9試合も経験できたことは大きなプラスだろう。

 その最終予選に出場してくるアメリカには2敗を喫してしまったが、中国からは2勝を挙げ、韓国とフィリピンからも白星を奪った。テストマッチとしてはまずまずの結果だった。

 個人のショットもおおむね好調だった。ラウンドロビン7試合を通してリードの小泉聡はショット率92%を超えた。これは全8チームでトップだ。セカンドの山本遵も86%で同3位。フロントエンドで土台となるショットを重ねることができた印象だ。

 特に小泉は4月の世界選手権でショット率が90%を割り、出場13カ国中11位と苦しみ「全然ダメです。下手でした」と猛省していた。そこから小泉は自分のクセを徹底的に分析した。例えば、デリバリー時に外に身体が流れた場合にウェイトが足りないケースが多かった。そこを動画とデータを活用しながら改めて自覚し、リリース時に手元でウェイトを足す(ストーンを押す)ことで調整し「感覚と結果がマッチしてきた」と手応えを得る。

 同時にスイーパーとしての情報共有の意識を高め、アイスリーディングの精度も高まった形だ。スキップの山口も「小泉の組み立てっていうのがほぼ完璧」と賞賛した上で「小泉が良かったら次、山本(遵/セカンド)に。という(ショットの)リレーを高頻度で出せるように今後なっていければもっともっと試合は日本のコントロールしやすくなってくる」とチームにもたらす好き影響を語った。

 その山本も半年前の世界選手権では苦しんだ。脚の怪我の影響もありオールラウンダーの臼井槙吾(KiT CURLING CLUB)にポジションを譲るなど、悔しい思いを経験した。今大会ではセカンドとして全試合に出場しラウンドロビンのショット率は86%で全体3位。今大会は「氷と共鳴する」をテーマとして自身に課していたという。

「サッカーでいう『ボールと友達になる』っていうみたいな感じなんですけれど、頭の中で考えるよりは氷の声を聞いてどういう風に投げればいいのかっていうのが自然に頭から降ってくるイメージ」

 山本そう独自の言葉で説明したが、自身のテーマとアイスリーディングが結実し高パフォーマンスを導いた。日本代表のセカンドとしてまたひとつ階段を上ったと言っていい。

 フロントエンドの好セットアップもあり、今大会では先攻時にセンターガードをふたつ置く攻撃的な姿勢を試す場面がいくつかあった。フォースの栁澤李空が「今回の結果を受けて12月に活かせるものは何か、改善していかなきゃいけない部分は何なのかっていうのをチーム日本として課題を明確にして、また一丸となって練習していけたら」、山口も「12月までもっともっと急成長できる」とそれぞれコメントしていたが、戦術的にもまだ幅を持たせて挑むことができそうだ。

チームは一時帰国し、11月中旬に再渡航

 山口はカナダに残り上野美優と共にミックスダブルスのツアーに出場するが、小泉、山本、栁澤、臼井の4選手は既に帰国した。11月上旬までホームの軽井沢で準備を整え、中旬にはカナダに戻り山口と再び合流。最終予選の地であるケロウナと時差のないアルバータ州レッドディアケロウナの大会に参加して時差調整を兼ねた実戦でまたピークを作り、ケロウナに乗り込む予定だ。

 ケロウナはボブ・アーセルナショナルコーチの地元でもあり「綺麗で好きな街ですし、ホームみたいに過ごせると思います」と山口。ただ、彼らがアイスを離れたときに何か特別なことをしているかといえば、チームで恒例のグラウンドゴルフ大会をするくらい。基本的には常にカーリングの話をしているようだ。

 山口はかねてから「僕らはカーリング大好き集団」と公言してきた。「全員が貪欲ですから、カーリングのことで意見が合わなかったら年齢なんか関係なく言い合いになる。それでもずっとカーリングの話をしているんです」と笑う。

 最終予選のラウンドロビンは7試合。パンコンチネンタル選手権と近いフォーマットとなる。パンコンチネンタル3位という結果には「非常に悔しい」としながらも「内容的には成長を感じる部分が多かった」と栁澤。小泉は負けた試合でのLSDを課題に挙げた。そのあたりをまたチームで共有して議論して挑むことになる。「今はとにかくヤル気に満ち溢れています」と山口はあくまで前向きだ。

 SC軽井沢クラブが変遷を経て現在のメンバーが揃ったのは2021年のことだ。5シーズン目で集大成を見せることができるか。最終予選まで残り1ヶ月、五輪までは3ヶ月だ。
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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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