回想 栄光も屈辱も経験 ドラゴンズでの14年間のすべてを知る男

3年連続V逸...過渡期だった2009年の落合ドラゴンズ 「WBCボイコット騒動」の真相とは?

森繁和

【写真は共同】

<落合博満氏推薦>
森繁和は、すべてを任せられる参謀である。
私の中日ドラゴンズでの8年間、
勝負の本質は彼なくしては語れない。

「そろそろ当時のこと、話そうか?」
栄光も屈辱も経験 ドラゴンズでの14年間
すべてを知る男

14年間で四度のリーグ優勝と53年ぶりの日本一
それでも願わくば、もう一度強い中日を見せたかった

『回想 栄光も屈辱も経験 ドラゴンズでの14年間のすべてを知る男』(森繁和著)から一部抜粋して公開します。

中日の課題はオフシーズン?

 この年は4年目の藤井が開幕スタメンでも起用され、センターのレギュラーポジションを掴もうとしていた。ルーキーイヤーも二番センターで開幕スタメンで起用されたり、もともと落合さんの期待も大きかった選手ではあった。アレックス以来ずっと決まってなかったセンターのポジションがようやく埋まりつつあった。

 私もヘッドコーチになる前年で野手をしっかり見ていたわけではないけれど、キャンプでは平田と二人、結構きついことをやらせて鍛えているな、期待されているんだなと思いながら見ていた。

 スイッチヒッターなので相手先発ピッチャーの左右に関係なく使えるし足も肩もある。コーチ会議の席でも外野守備コーチの苫篠誠治やバッティングコーチの石嶺が藤井を優先して使おうと話していた記憶もある。

 最終的に藤井はこの年、114試合に出場して120安打、ホームラン10 本、15盗塁、打率・299というなかなかの成績を残し、コーチ陣の期待に応えた。このままレギュラーになることを私も落合さんも期待した。だけど残念ながら活躍は続かなかった。

 初めて1年試合に出続けて、どういうオフを過ごすかが大事だったのだが、年明けの合同自主トレを見てガッカリした。

 レギュラーを掴もうとしているという自覚を持ってオフを過ごしてきたのだろうか? センターのレギュラー争いはまた白紙に戻ってしまった。藤井は身体能力も高く、使い勝手もあって面白みもある良い選手なのに、オフの過ごし方に甘いところがあったと言わざるを得ない。

 これは藤井だけでなく中日にとっての問題でもある。新しい選手が活躍すると直ぐに地元やメディアが騒いでチヤホヤしてしまうという問題だ。新しい選手が活躍をすれば、オフにサイン会や一日警察署長などのイベント出演依頼や取材対応が多くなる。人気商売なのだからある意味で当然ではあるのだが、いくら若手選手が「もっと練習をしたい」「体を休めたい」と思っていても、球団広報やお世話になっている人から頼まれれば断りづらいものだ。藤井もそうだったのかもしれない。

 ファンサービスや選手・球団のプロモーションも大事だが、プロ野球選手にとってオフシーズンに最優先すべきは翌シーズンの準備。その時期に野球以外の仕事が多くなっても、しっかり調整はしなければいけない。野球以外のことで忙しくしている様子を私と落合さんも知っているから、合同自主トレやキャンプでその選手を見る目は当然厳しくなる。選手も分かっているだろうが……。

 もちろん本人の自覚が一番なのだが、選手の活躍を期待するのであればこそ、ファンもメディアもあまり選手をチヤホヤせず、球団もオフの仕事もほどほどにしてあげて欲しいなと思う。

WBCボイコット騒動

 第二回WBCが開催された年でもあったが、中日は打診のあった選手の派遣を認めなかった。そのことが「球団が派遣を断った」「落合が選手に拒否をさせた」「中日は協力しない」だのと言われ、挙げ句には「中日がWBCボイコット」などと散々に叩かれ、批判された。だけど実際は球団ぐるみ、チームぐるみで選手を派遣しなかったわけではない。行くも行かないも「選手達の意思が第一」と聞いていたから、落合さんは選手達に「行くな」とも「断れ」とも、そんなことは全く言っていない。落合さんは打診のあった選手達に意思を確認して、そのうえで選手達が「できれば断ってください」と返答した。彼らは前年に北京五輪から憔悴しきって戻ってきた岩瀬の姿も、その後の調整で苦労した憲伸の姿も見ている。主力の多くが五輪に取られて巨人に負けて優勝を逃していたのだし、余計にこのシーズンは勝ちたいという気持ちが大きかったというのもあると思う。

 派遣要請を受けるか否かは「本人の意思を尊重する」というルールだったのだから、選手自身が断ることは何の問題もないはずだ。実際に他球団にも要請を断った選手が何人もいたのだし。

 むしろ本来極秘のはずの派遣要請選手のリストが「ある球団」によって外部にリークされていたことのほうがよほど問題だろう。どこの球団から漏れたかは私も落合さんも知っていたけれど。

 幸いにも一連の騒動は選手達に動揺も影響も与えなかった。だけど、自分たちの球団の親会社である新聞社が他の新聞社と一緒になって批判的な記事を書いていたことはみんな面白く思っていなかったはずだ。後ろから撃たれと感じた選手も多かっただろう。

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