STMの重量可変「G-Jack」を徹底検証、振り心地はグリップでデザインする時代へ

GEW(月刊ゴルフ用品界)

【STMの重量可変「G-Jack」】

クラブの重量調整といえばヘッドやシャフトが中心だったが、STMが提案する「G-Jack」「G-Jack+」はグリップエンドにウエイトを仕込み、手元側の重量配分を自在に変えられる全く新しい発想だ。わずか数グラムの違いでスイングのタイミングや弾道が大きく変化する――そんな体験を永井延宏プロがドライバー、アイアン、ウェッジで検証した。グリップがもたらす“振り心地の変革”とはどんなものか、その手応えを語る。

まずは動画で

重さ・口径の異なる2種類

永井 これまでクラブのバランス調整といえば、鉛を貼ったり外したりといった作業が一般的でした。そんな中で登場したのが、STMの重量可変式グリップ「G-Jack」と「G-Jack+」です。グリップそのものにウエイトを内蔵し、エンド側の重量配分を変えられるという発想は、非常に興味深いものでした。

素材はエラストマーで、網目状の細かなパターンが施されており、手にした瞬間に高い引っかかり感と安心感があります。赤いラインの「G-Jack+」はエラストマー部が48g、エンドに1.2gのウエイトを内蔵して合計約50グラム。一方、青いラインの「G-Jack」はエラストマー部が38gで、エンドに1.2gのウエイトを装着して約40グラム。口径も「G-Jack+」が58、「G-Jack」が60と異なり、フィーリングの違いは握った瞬間から感じられます。

今回は、「G-Jack+」には2gのウエイト、「G-Jack」には12gのウエイトをそれぞれセッティングしてグリップ重量を50gに揃えたもの、さらに「G-Jack+」に12gのウエイトを設定してグリップ重量を60gにしたものを試してみました。特に、グリップ全体が重い「G-Jack+」に2gウエイトを装着した50gと、38gの「G-Jack」に12gのウエイトを装着した50gでは、グリップの重心位置が変わっています。その辺りのフィーリングに気を付けながら試打を行いました。

ドライバーの試打クラブは、ロフト9度のヘッドに60グラム台のSシャフト、「G-Jack+」に12gのウエイトを装着した際には50g台のSシャフトを装着して行いました。アイアンは7番アイアン、ウェッジは50度と58度で試打を行いました。

ドライバーで試打

【「G-Jack」と「G-Jack+」】

【G-Jack+ドライバー(2g)】

永井 まずは「G-Jack+」。網目パターンの吸いつき感と、やや太めの58口径が手にしっかり馴染みます。プレーンな重量配分に近いため、通常のグリップ感覚でスイングでき、シャフト挙動も素直に伝わる印象でした。切り返しで余計なストレスがなく、振り抜きやすい。特に手元の安定感が強調され、方向性の安定に寄与していると感じました。

【G-Jackドライバー(12g)】

一方「G-Jack」は60口径になるため、パラレルを感じます。「G-Jack+」のほうがよりテーパーを強く感じますね。グリップ全体の重さは一緒でも、よりグリップエンド側に重量が来るため、体とヘッドの入れ替え動作がやりやすくなると感じました。切り返しの手元側のウエイトに対してヘッドの重さを逆方向に動かすことで、タメが深くなり、プレーンをなぞるような動きがしやすくなりました。グリップエンドとヘッドが逆の方向に動く現代的なスイングがやりやすいといった印象です。

【G-Jack+ドライバー(12g)】

一方で「G-Jack+」に12gのウエイトを装着してシャフトを50g台にすると、明確にカウンターウエイト効果が表れます。手元に12グラムの重さを感じることで、切り返しからダウンスイングにかけてタメを作りやすく、クラブ全体をリードしていける感覚がありました。クラブ全体の支点が変わるため、現代的な「手元とヘッドが逆方向に動いてインパクトに入る」動きを実現しやすくなります。自分のスイングの特性を補完してくれるグリップだと感じました。

アイアン、ウェッジで試打

永井 アイアンやウェッジでも同様の傾向が確認できました。アイアンに「G-Jack+」を装着すると、手元の重量感は控えめで、エラストマー特有のレスポンスの良さが際立ちました。狙ったラインに乗せやすく、データ的にもスピン量が安定し、ショット精度を高めてくれる印象です。

【G-Jack+アイアン(2g)】

【G-Jackアイアン(12g)】

【G-Jack+アイアン(12g)】

続いてグリップエンドに12gの入った「G-Jack」を試すと、カウンター効果で体のリードが強調され、左サイドでしっかり引っ張っていける感覚が得られました。やや右に出る傾向も見られましたが、切り返しのフィーリングは非常に良好で、プレーヤーによっては大きな武器になるでしょう。

「G-Jack+」に12gのウエイトを装着すると、体感的には手元側の重量がかなりあるので体でしっかりリードしていく感じを受けますが、ちょっとヘッドがついてこない状態になるのか、数値で見ると、クラブヘッドがインサイドに落ちてしまっています。私には合いませんでしたが、自分にマッチする重さを見つけられるというのが「G-Jack」シリーズの目指すところなのかなと思います。

ウェッジではさらに顕著な違いが出ました。「G-Jack+(2g)」「G-Jack(12g)」「G-Jack+(12g)」という順番で試打をしましたが、特に58度でグリーン周りを想定したショットでは、手元の重量が強調されるにつれてフェースにボールが長く乗り、スピン量が増加する傾向になりました。一方で弾道はやや低く出るようになるため、高さで止めるというよりはスピンで止めるイメージが合うと思います。手元に重さのないプレーンな「G-Jack+」では、より素直にシャフトの挙動が伝わり、イメージ通りにボールを運ぶ感覚が得られました。

【G-Jack+ウェッジ(2g)】

【G-Jackウェッジ(12g)】

【G-Jack+ウェッジ(12g)】

総評

永井 総じて、どちらのグリップにもはっきりとした個性があります。「G-Jack+」は通常のグリップに近い自然なフィーリングを求める人に向き、「G-Jack」は手元に明確な重さを感じながらカウンターバランス効果を活かしたい人に適しています。特に軽量シャフトや大型ヘッドとの組み合わせでは、その効果が際立ちました。

【新感覚グリップ「G-Jack」「G-Jack+」】

これまでのクラブ調整はシャフトやヘッドが主役でしたが、グリップの重量配分を変えることでここまでフィーリングも数値も変わるのかと、改めて驚かされました。自分に合った“バランスポイント”を探す楽しみを提供してくれるという意味で、「G-Jack」「G-Jack+」は新しい発想のグリップだと強く感じます。
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著者プロフィール

1978年2月創刊のゴルフ産業専門誌「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行。2000年5月から影響力のあるコアゴルファーを対象にネット情報を発信するウエブサイト「GEW」を立ち上げた。各種業界団体と連携、ゴルフ市場活性化への活動も推進中。

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