MLBポストシーズンレポート2025

投手・大谷翔平が試合後に語った痛恨の七回 打者・大谷はビーバーとの駆け引きに屈す

丹羽政善

三回、ウラジーミル・ゲレロJr.の打球の行方を見つめる大谷翔平 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】

死闘翌日の大谷のコンディションは?

 深夜に決着がついたワールドシリーズ第3戦。一夜明けたこの日、試合前にドジャースの試合を中継するスポーツネットLAのリポーター、キリステン・ワトソンと話していると、「昨日の試合は最後、フレディ・フリーマンをホームで迎えた後、(大谷)翔平と(佐々木)朗希が、左翼のブルペンから出ていた(山本)由伸を迎えるため、駆け寄っていた。あの光景を見たとき、目がうるっときた」と振り返った。

「ちょうど、フィールドでインタビューの準備をしているとき、翔平が両手を広げて目の前を走っていった。どこへ行くのかと思って見ていたら、その先に由伸がいたの」

第3戦で勝利した後に喜び合う大谷翔平と山本由伸、佐々木朗希 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】

 その思い出話をしている時点で、また彼女の目が、うるうるしてきた。

 山本は1球もマウンドでは投げていない。しかし、チームに大きく貢献した1人。サヨナラ本塁打を放ったフレディ・フリーマン、デイブ・ロバーツ監督も強く山本を抱きしめた。

「あの(自己犠牲の)精神が、我々のチームを体現している」とフリーマンは言う。

「彼がウォーミングアップをしているのを見たとき、絶対に彼を投げさせてはいけないと思った」

 試合後、山本は「最初は監督が絶対いいとは言わないと思った。でも、仕方なかったので、準備しながら話し合おうとなった」と裏を明かし、続けた。

「でもこういう試合で投げられるように何年も練習してきた。19歳のときは、何でもない試合で投げて、そこから10日間くらい投げられなかったりしたんですけど、そこから何年も練習してこういったワールドシリーズで完投した2日後に投げられるような体になっているのはすごく成長を感じた」

 完投した2日後の登板を志願した山本の心意気。それを第4戦で誰が引き継ぐのか。

 当然、大谷にその期待がかかり、二回に先制したまでは良かったが、三回、ウラジーミル・ゲレロJr.に対し、スイーパーが抜けて真ん中高め目へ。絶対ミスしてはいけない相手に対して痛恨のミスだった。

「明らかな失投。悔やまれる1球だったなというのは、結果論からするとその通り」
 
 もともと、前日の疲労からか、初回からグラブサイドに引っ掛ける球が少なくなかった。

 こういうケースでは過去、気持ちと体の動きにブレのあるパターンが多く、力が入りすぎたりすると、体がついてこない。

 今回はどうだったのか。勝てば王手という気負い、疲労、体の動き。それぞれのバランスにブレはなかったのか?

 大谷は、「2時くらいにベッドに行った。それなりに睡眠は取れたので、昨日の試合について、どうこう言うつもりはない」と断ってから、「単純に自分の動き、技術的な動きの部分が、ブルペンの時からよくなかった。そういう試合は過去にもありますし、そういうときにどうするか、という話。その中でも6回まで粘ることはできた」と説明した。

 ブルペンのときからしっくりせず、悪いなりに試合をまとめたことは、自分なりに納得。

 だが、こう続けた。

「やっぱり七回、先頭も含めて2人。あそこが一番悔やまれる」

 大谷は無死二、三塁で降板。その2人の走者がいずれも生還した時点で、半ば勝負あった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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