MLBポストシーズンレポート2025

大谷翔平の2本塁打、2二塁打、5四球にスタジアムが揺れた夜 延長18回の死闘で数多くの記録を打ち立て、翌日のマウンドへ

丹羽政善

数多くの記録を残し、明日の登板へ

三回、内角高めの4シームをスタンドに放り込んだ大谷翔平 【Photo by Luke Hales/Getty Images】

 もっとも、大谷がファンの度肝を抜いたのは、その本塁打だけではない。

 三回に放ったこの最初の本塁打は、今年メジャー18年目のベテラン、マックス・シャーザーも目を疑ったのではないか。

 打ったのは、見逃せばボール球という内角高めの真っ直ぐ(95.1マイル)。シャーザーがまだ95マイルを投げられることにも驚いたが、大谷翔平は過去、このコースの95マイル以上の4シームをスタンドまで運んだことはなかった。

 そもそもヒットは9本のみ。見逃しのボールが53.1%だが、振った場合は、空振りが41.5%。ファールが37.7%。振ってヒットになったのは6.9%。そんなコースであり、捕手が構えたのも内角高め。攻めとしては完璧だった。

 ところが、腕をうまく内側から入れて角度をつけると、打球が右翼席に消えた。

 五回の二塁打も、ファンの心を揺さぶった。

 内角高めのスイーパーを捉えたが、過去、このコースの左投手のスイーパー/スライダーをヒットにしたのは2本のみ。反対方向への長打は初めて。捕手は外角低めに構えていたので逆球なのだろうが、ミスとしては悪くない。

 何よりこのタイムリー二塁打は、2対4と逆転され、ブルージェイズに傾きかけた流れを引き戻す意味でも、値千金。2死後、フリーマンの適時打で大谷が同点のホームを踏み、試合を振り出しに戻した。

五回、大谷翔平の二塁打で立ち上がって興奮する観客たち 【Photo by Rob Tringali/MLB Photos via Getty Images】

 九回の5打席目からは、4打席連続敬遠。最後、延長十七回の打席では四球を選んだが、1球もストライクゾーンの球なく、完全に勝負を避けられた。

 相手のジョン・シュナイダー監督は試合後、「彼には、バットを振らせない方がいいと判断した」と話し、「明日以降も?」と聞かれると、「そうだな」と頷いた。

 点差がついた展開ならまだしも、僅差では勝負を避けられそう。

 さて、これだけの1日。当然、記録ずくめになった。

・1試合9出塁は、ポストシーズン全体の新記録。これまではケニー・ロフトンらの6回が記録だった。
・1ポストシーズンで8本塁打は、ドジャース最多タイ。メジャー記録はランディ・アロザレーナ(当時レイズ)の10本(2020)
・1試合4敬遠は、ポストシーズン史上初
・マルチ本塁打は今ポストシーズンで3試合目。これは史上初。
・1試合12塁打以上は、このポストシーズンで2度目。過去、それを達成したのはベーブ・ルースのみ。
・1試合4長打は、1906年のワールドシリーズ第5戦、フランク・イスベル以来2人目

 おそらくこれ以外にも、まだまだ、記録がありそう。

 ただ、本人は試合後、試合を中継したFOXのインタビューに応じて、こう答えている。

「勝ったのが、すべてかなと思うので、自分のプレーというのは後から振り返ればいい。今日はもう切り替えて明日の登板に備えたい」

 そして続けた。

「早く帰って寝て、明日に備えたいです」

 大谷は延長十一回に敬遠され、ムーキー・ベッツのレフト前ヒットで二塁に走った際、足が痙攣したよう。本人が違和感を訴え、トレーナーらが飛んでいったが、デイブ・ロバーツ監督は試合後、「明日は投げられるだろう」と話した。

「大丈夫だ。いける!」

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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