五輪出場2枠目確保の“ゆなすみ”ペア、驚異的な成長速度で歩むミラノへの道

沢田聡子

大会直前、胃腸炎に見舞われた森口

2人ともフリーの衣装のグラデーションがお気に入りだという(写真は木下グループ杯) 【写真:松尾/アフロスポーツ】

「ここでミスしたから、もう大丈夫です」

 パートナーの長岡柚奈とともに全日本ペア予選会(茨城県ひたちなか市・山新スイミングアリーナ)を戦い終えた森口澄士は、本格化していく冬季五輪シーズンの先を見据えた。森口が言及した「ミス」とは、ショートプログラムでのソロジャンプについてである。サイドバイサイド(2人が横並びで同じ技をする)の3回転ループで、いつもはジャンプに安定感がある森口の着氷が、珍しく乱れたのだ。

 ミラノ・コルティナ2026冬季五輪最終予選(9月)でペア日本代表の2枠目を確保した長岡/森口は、10月24日から行われた全日本ペア予選会に出場した。悲願の出場枠「2」確保を果たすため五輪最終予選にピークを合わせた長岡/森口にとって、難しいタイミングで迎えた試合であったことは否めない。それに加え、フリーを滑り終えた後、森口は大会前に胃腸炎を患っていたことを明かしている。

「お腹が本当に痛くって、寒気もしました。インフルとコロナの検査も何回もしたんですけど、(陽性反応は)出なかった。熱も出たし、出発の前日なんて、柚奈ちゃんはめちゃめちゃ練習したいのに、僕が曲(かけ練習の)終わりで『やばい、やばい』と言っていて、本当に申し訳なかったです」

「試合の前日、柚奈ちゃんに思い通りの練習をさせてあげられない中、うまく2人でこの試合を怪我なく終えられたのは、本当に柚奈ちゃんのおかげでもある。落ち着いて滑れたと思うので本当に良かったなと思うし、『ありがとう』の気持ちです」

 今大会での長岡/森口の合計点は、169.18。チャレンジャーシリーズ・木下グループ杯(9月)での自己最高得点192.77、五輪最終予選での178.66に比べると、やはり調整が難しかったことがうかがえる。しかし、2人の進歩が表れた要素があった。昨季から挑んできたトリプルツイストリフトである。

 トリプルツイストリフトは、男性が女性を高く投げ上げ、3回転して降りてくるところを受け止めるペアの大技である。長岡/森口が最初にミラノ五輪出場枠獲得に挑んだのは、今年3月に行われた世界選手権だった。大舞台への道を切り開くため、長岡/森口はショートで初めてトリプルツイストに挑んだが、着氷後に長岡が転倒。フリー進出はならず、2枠目の確保は最終予選に持ち越された。そして最終予選のショートでは成功させ、2枠目の確保につながったトリプルツイストリフトは、2人の急成長を象徴する技といえる。

 この全日本予選会では、自己評価が厳しい長岡も「(トリプル)ツイスト(リフト)は良かったかな」と振り返っており、ショート・フリー共にレベル3の判定で出来栄え点は 1.00を獲得。五輪最終予選のショートでも0.98だった出来栄え点を、遂に1点台に乗せたのだ。森口も、達成感を口にしている。

「ツイストで(出来栄え点の)プラスがやっと1.0を超えられたのも、1つの目標でした。今まではプラスがついても、マックス0.9だったと思うので」

 ただ森口の目は、さらに上を向いていた。前述のコメントに続けて、グランプリ(GP)シリーズに出場した世界トップクラスのペアによるトリプルツイストリフトについても言及したのだ。

「今回の中国杯が、本当にレベル高くて。GOE(出来栄え点)を見ていたら、もうジョージア(優勝したアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ)なんて、やばくて(ショートはレベル4・出来栄え点2.06、フリーはレベル3・出来栄え点2.20)。もちろんりくりゅう(三浦璃来/木原龍一)先輩も、GOEがすごい(フランス大会、ショート・フリー共にレベル3・出来栄え点1.79)。やっぱり1.0の山をまず超えたいなと思っていたので、日本の大会ですけど、こういう評価をいただけて、本当に嬉しいです」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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