MLBポストシーズンレポート2025

記録尽くしの投球でも山本由伸は「すごいですね」と他人事? 大谷翔平は貴重な「つなぎ」の打撃で第2戦の勝利に貢献

丹羽政善

九回の最後のアウトを奪った後、捕手のウィル・スミスと喜ぶ山本由伸 【Photo by Rob Tringali/MLB Photos via Getty Images】

最強ブルージェイズ打線からなぜ凡打の山を築けたのか

 ドジャースの九回表の攻撃が始まっても、ドジャースブルペンに動きなし。

九回表のドジャースブルペンの様子 【筆者撮影】

 佐々木朗希は裏で体を動かし始めており、その姿はそこになかったものの、八回を終えての球数がまだ93球だった山本由伸に、監督らが「九回も行くか?」とわざわざ打診することもなかった。

「八回終わったとき、まだ球数にも余裕があったので、行けるかなと」山本。「なので、会話もありませんでした」

 九回、山本がマウンドに上がるのと同じタイミングで佐々木が準備を始めたものの、リリーフを仰ぐ必要はなかった。

 山本は九回も、三者凡退。三回に犠牲フライで失点してから、20人連続で1人の走者も許さなかった。

 ワールドシリーズで20人連続アウトというのは、1952年のワールドシリーズでカール・アスキンが記録した19人を更新し、ポストシーズンでのドジャース記録となった。

 さらに記録を補足すると、ポストシーズンで2試合連続完投したのは、2001年にカート・シリング(ダイヤモンドバックス)が3試合連続で完投(地区シリーズ第1、5戦。リーグ優勝決定戦第3戦)して以来。また、複数回の完投は、2014年にマディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)が、ワイルドカードゲームとワールドシリーズ第5戦で記録して以来となった。

 ワールドシリーズでの完投は、ドジャースでは1988年のオーレル・ハーシュハイザー以来。

 終わってみれば記録ずくめとなったが、初回が終わった時点では、誰も完投など想定していなかった。山本本人も、「立ち上がりは球数がたくさんいっただけに、最後まで行けるとは思わなかった」と振り返っている。

 連打でいきなり無死無死一、三塁のピンチを招くと、ウラジーミル・ゲレロJr.から三振を奪うなど、3番以降をきっちり抑えて無失点で切り抜けたが、1イニングで23球も要した。いきなり、体力を削られてしまったのである。

 実は前日、ブレーク・スネルも初回に2死満塁のピンチを招いたが、無失点で切り抜けた。ところが、初回だけで29球を投げており、その疲労が六回途中での降板を招いた可能性が指摘されている。

 相手は、徹底的にコンタクトを心掛けてくる。空振り率は両リーグでもっとも低い21.6%。三振を取りに行くと、ひたすらファールされて消耗する――というのが崩されるパターン。初回、23球のうち、6球がファールで、山本もスネル同様、中盤に疲弊したところ捉えられるのでは――という不安もよぎったが、二回以降の球数は順に、10球、13球、6球、8球、11球、8球、14球、12球。

打たせる投球でブルージェイズ打線を沈黙させた山本由伸 【Photo by Emilee Chinn/Getty Images】

 二回以降、ファールは10球しかなかった。相手が空振りをしないなら、そのコンタクト能力の高さを利用し、ことごとく打たせてとった。四回から七回まで三振はわずか一つ。三振が多くなれば球数も嵩むが、そのリスクも最小限にとどめている。

 なにより、ボール球を振らせた割合が42%もあった。山本のキャリア平均は30.3%。今年のリーグ平均は28.4%だが、前回、ミルウォーキーで完投したときの40%さえ上回った。

 ブルージェイズ打線のボール球に対するコンタクト率も64%と高かったが、それが今回に限っては災いしたのではないか。アウトになった結果球がコースを外れていたのは11個もあった。

「僕のピッチングスタイルは、ストライクゾーンにどんどん投げていくこと」と山本。

「狙うコースとかはありますけど、基本は、どのボールもストライクゾーンを狙って投げていくというスタイル」

 もちろん、ブルージェイズ打線もそれは知っている。だからこそ積極的に仕掛けた。また、追い込まれれば、スプリットがあるだけに、その前に勝負したい。その意識が、山本のボール球を追いかける結果となり、コンタクト能力が高いが故に、凡打を重ねたか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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