スカウトが振り返る、あの年のドラフト指名

「素材としてはダントツ」「ダイヤモンドの原石」獲れなくて一番悔しかった選手とは? 元巨人スカウト部長が明かす秘話

永松欣也

岡崎氏は根尾を獲得して野手として育てたかったという 【写真は共同】

 毎年多くのドラマを生むプロ野球ドラフト会議。あの年の1位はどのようにして決まったのか? あの選手をどのように評価していたのか? あの選手はなぜ指名しなかったのか? 2017年から2018年まで巨人のスカウト部長を務めていた岡崎郁氏に選手指名秘話やドラフト舞台裏などを振り返ってもらった。

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技術以外で一番大事な評価項目とは

 スカウト部長時代は2年に過ぎませんでしたが、技術面以外でアマチュア選手を見ていたポイントを挙げるとすれば、立ち居振る舞いと性格です。コツコツと練習ができる継続力、勤勉性があるか、気分屋なのかどうか。そういうところを意識して見ていました。

 私は人の性格はあまり変わらないと思っていて、気分屋だった性格がプロに入っていきなりコツコツ頑張れる性格には、なかなかなるものではありません。指導者の方にその辺の話を聞いても良いことしか言わないですから、性格の部分はできるだけ自分の目でしっかりと見るようにしていました。

 なかなか数値化しにくい部分ではありますが、選手の報告書には「性格」という評価項目もあります。技術以外の部分では一番大事な項目だと思っています。ほとんどの選手がそのままプロで1年目から一軍戦力になることはなく、これから練習して伸びて戦力になってもらうつもりでこちらも獲っているわけです。それなのに性格的にコツコツと努力ができないタイプだったら伸びる可能性が低いですよね。技術的なことはもちろんですが、性格の部分を見抜く力もスカウトには求められるということでしょうね。

 昭和の時代はそれこそ、プロでも強制的に全員厳しい練習をやらされた時代です。でもそれはある意味で楽なことでもあります。ぐーたらな選手でもある程度上手くなりますから。自主的にやった人間はもっと上手くなります。でも今の時代はそういった厳しい練習を無理矢理させられない時代です。そのかわり、上手くならなくて早々にクビになってもそこは自己責任という部分も大きくなっていますよね。ある意味で選手にとっては可哀想なというか、別の意味で厳しい時代でもあると言えるかもしれません。だからこそ、強制されなくても自分でコツコツと練習できる性格の選手が求められているのだと思います。

メディアによるドラフト採点

2017年から2018年まで巨人のスカウト部長を務めていた岡崎郁氏 【写真は共同】

 2017年に2位、3位で社会人キャッチャーを立て続けに2人指名したときはずいぶんと叩かれたことは前に書きました。「バランスの悪い指名だ」とも言われました。「バランスとは何ぞや?」というところで言わせてもらうと、その年のドラフトだけで見れば確かにバランスは悪かったのかもしれません。でも支配下のキャッチャーが6人しかいなくて(さらにそこから2人減ることも分かっていた)、絶対数が足りていないという現実がありましたので、すぐに使えるキャッチャーを2人獲って編成上のバランスを直すという目的があったのです。

 批判していた人たちは、この年のドラフトのバランスしか見ていないと思うのです。ですが我々からすれば、どうやって編成のバランスを取っていくかということを考えているわけであって、この年一回のドラフト指名のバランスなんて、はっきり言えばどうだって良いんです。ですのでスポーツ紙やメディアがよく球団ごとのドラフト指名を採点していますけど、点数が低くても特に気にはなりませんでした。ファン目線、メディア目線とスカウト部長目線が同じなわけがないですから。ですから批判的な声などは特に気にはなりませんでした。

 ですが、獲ってきた選手が数年経っても活躍できなかったときは、甘んじて批判を受けるつもりではいました。それはスカウト部長としての結果責任がありますから。

 ただ、一言いわせてもらうと、プロの一軍のレギュラーはピッチャーを除けば席が8つと決まっています。ベンチに入れる席も25と決まっています。ドラフトでは毎年、支配下だけで6、7人指名していますけど、確率的に言えばその中から1人、一軍に入れたらば御の字、レギュラーになったら万々歳なんです。ドラフトで獲ってきた選手の数だけ毎年レギュラー、ベンチ入りメンバーが入れ替わるなんてあり得ないことですから。

 もちろん全員一軍戦力になる力があると思ってこちらも獲ってきていますけど。確率的には毎年の指名選手から1人、一軍に行けたら御の字なんだと知っておいてほしいですね。

二軍監督として指導してみたかった根尾

野手としての根尾は「ダイヤモンドの原石」に見えたと岡崎氏は絶賛 【写真は共同】

 私のスカウト部長時代に獲れなくて悔しかった選手を1人挙げるとすると、根尾ですね。村上も欲しかったですけど、彼はヤクルトで大活躍していますからそんなに悔しいという思いはないんです。彼はどの球団に入っていても、きっとすごい成績を残していたでしょうしね。

 一方で根尾はというと、プロ入り後は苦しんでいますよね。私がスカウト部長として追ってきて、思い描いた彼がプロで成功するイメージと今の彼の姿があまりにもかけ離れています。もしかしたら私の評価が高すぎたのかもしれませんけどね。

 甲子園を観に来るスカウトはたくさんいますけど、注目している選手を初戦だけ観たらみんな担当地区に帰ってしまうものなんです。甲子園以外にも観ないといけない選手はたくさんいますからね。でも私は彼のことを、あの大舞台でどうしてももう一度生で観たくて、準決勝の試合を1人で観に行きました。それくらい、彼のことは追いかけていました。だからプロ入り後も今もどうしても根尾のことは気になってしまうんですよね。

 彼を獲って、できるのならば自分が二軍監督になって指導してみたかったですね。私がアマチュア選手を観てきた3年間では素材としてはダントツでしたから。もうダイヤモンドの原石に見えました。私が優れた指導者かどうかはさておき、指導者としてあの原石を磨き上げたらどんなふうに輝いたのか、それを見てみたかったという思いは今でも少しあります。

 プロで思うような結果を残せていないですが、まだ7年目。これからまだまだ巻き返せると思いますから、根尾の活躍を期待したいですね。

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著者プロフィール

1976年、大分県速見郡生まれ。多くのスポーツサイトの企画・編集、ディレクターなどを経てフリーランスに。現在は少年野球、高校野球サイトのディレクターを務めながら書籍の企画・編集も行っている。主な書籍は『星野と落合のドラフト戦略』『ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録』『回想 ドラゴンズでの14年間のすべてを知る男』など。

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