チームを立て直した、新人監督たち

迷いがなかった新人・源田壮亮の抜擢と森友哉の捕手起用 元西武監督・辻発彦が明かす舞台裏

永松欣也

出始めの選手はどこまで我慢して使えるかが勝負

2017年、使い続けた山川穂高と外崎修汰が大きく成長した 【写真は共同】

 シーズン序盤は山川、外崎といった若手がなかなか結果を出せませんでしたが、それでも我慢して使い続けました。常勝チームであれば若手を我慢して使うことも難しいところがあると思います。でもこの時は僕も監督1年目。低迷していたライオンズを変えようとしているタイミングであり、「これからのチーム」にしていかないといけないタイミングでもありました。僕は「出始めの選手はどこまで我慢して使えるかが勝負」だと思っていましたので、そういう意味では彼らにとって良いタイミングだったかもしれませんね。

 山川のあの長打力には我慢して使い続けるだけの魅力がありましたし、外崎は「絶対に使いたい」と思わせるだけの選手でした。前年まで守っていたショートには源田が入って、セカンドには浅村がいて、それで外野にもチャレンジさせて使いました。外崎は最終的にはキャリアハイの135試合出場、10本塁打、23盗塁という成績で期待に応えてくれました。

 夏場に強い山川が8月に9本塁打、28打点で月間MVPを獲得。山川の活躍に引っ張られるように、7月から8月にかけて13連勝も記録しました。春先からしばらく我慢して使い、その後二軍にも落ちましたが、そこでしっかり鍛えて上がってきた。そういうことが夏場になって結果として表れたのだと思います。

 攻撃面では、盗塁数が前年の97個から129個に激増しました。点を取るためには単にバッターが打つだけではなく、相手ピッチャーに「走ってくるぞ!」というプレッシャーをかけないといけません。チームには走れる選手も多かったこともあり、キャンプからそういう意識付けをしてきました。グリーンライトを与えて走らせましたが、そこには「野球を考えさせる」という意味もありました。走ってはいけない場面で走ってしまう選手もいますから、そういうときはその選手を呼んで「しっかりとケースを考えてチャレンジしなさい」という話をしました。そうやって考えて野球ができるようにならないと「常勝軍団」は見えてこないですからね。

「あとは投手が育てば——」というところまでは行けた

2017年CSファーストステージで好投した菊池雄星と握手を交わした辻監督。手応えをつかんで監督1年目のシーズンを終えた 【写真は共同】

 監督1年目を振り返ってみて印象深いのは開幕戦ですね。あの一戦で僕の中では「よし、行けるぞ!」という気持ちになりました。開幕投手の菊池が抑えて、守りも素晴らしかったですし、ランナーがサードの場面でバッターがわざと内野ゴロを打って点を取ってくれたり。「こういう野球をすればこのチームは絶対に勝てるんだ!」という空気にさせてくれた開幕戦でしたから。

 優勝したソフトバンクには本拠地のメットライフドーム(現ベルーナドーム)で優勝を見せつけられることになりました。胴上げされていたのはかつての同僚、工藤公康監督です。悔しい気持ちはもちろんありました。でもそれよりも、選手たちが頑張って3年連続Bクラスから脱して2位に浮上することができた、戦えるチームになってきたという、満足感の方が大きかったですね。

 CSはファーストステージで3位の楽天に1勝2敗で敗れました。初戦は相手エースの則本昂大を打線が打ち崩し、投げてはエースの菊池がシャットアウトしての完勝。これで一気に行けるかと思いましたが、その後に連敗して敗退となりました。相手の先発は岸と美馬学。やっぱり先発陣の質が高かったですね。短期決戦はやっぱり投手力。シーズン中は楽天に16勝8敗で得意にしていたのですが、短期決戦ではあまり関係がないですよね。

 優勝したソフトバンクとはまだまだ投打共に差があるなと感じました。それでも投手陣の駒と質、そこの差を埋められたら翌シーズンは面白い勝負が出来るかなと思っていました。そういう意味では「あとは投手が育てば——」というところまでは行けたかなという翌シーズンに向けての手応えはありました。

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著者プロフィール

1976年、大分県速見郡生まれ。多くのスポーツサイトの企画・編集、ディレクターなどを経てフリーランスに。現在は少年野球、高校野球サイトのディレクターを務めながら書籍の企画・編集も行っている。主な書籍は『星野と落合のドラフト戦略』『ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録』『回想 ドラゴンズでの14年間のすべてを知る男』など。

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