中学で朝4時集合も乗り越えた思考の転換 近藤健介の父明かす「考え方」
豪快なホームランや華麗な打撃技術の裏には、派手さとは無縁の「ふつうの家庭」の物語がある。父・近藤義男さんは、息子に"やらせる"のではなく、"やりたいことをとことん応援する"姿勢を貫いた。
結果として生まれたのは、努力を自ら楽しみ、壁を越える力を備えた一人のアスリート。「教える」ではなく「見守る」――その実践が、侍ジャパンの主軸を育てた。
書籍『世界一の侍選手の育ち方 ふつうの息子がプロ野球選手になれたワケ』(近藤義男著)から一部抜粋して公開します。
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稲盛和夫さんから学んだ成果の出し方 「情熱×能力×考え方=成果」
私にとって「人生の書」とも言えるのが、40歳になる前に読んだ京セラの創業者・稲盛和夫さんが書かれた『敬天愛人 私の経営を支えたもの』(PHP研究所)である。稲盛さんの経営哲学が書かれた本の中に、成果を出すための方程式が紹介されていた。
「情熱×能力×考え方=成果」
では、この3つの要素のうち、もっとも大事なものは何か。
稲盛さんによれば、情熱と能力は1から100まであるが、考え方はマイナス100からプラス100まである。だから、どんなに情熱と能力を持っていても、考え方が間違っていれば、成果を上げることができない。逆に、情熱と能力が100までなくても、考え方で補うことができる。考え方ひとつで、自分の人生を切り拓くことができる。そのように書かれていた。
目の前にある事象は同じでも、それをプラスに捉えるか、ネガティブに感じてしまうかは、自分の考え方次第。稲盛さんのこの言葉は、その後の私を支えてくれる大きな柱となった。
たとえば、健介が修徳学園中に入学したとき、想定した以上の大変さがあった。「厳しい環境」とは覚悟はしていたが、それをはるかに超えていた。朝4時に学校に集合するとは、さすがに聞いていない。でも、「何だよそれ!」と思うのではなく、「こんな経験、誰もしていないだろう。いい経験になるよ」と思考を転換できたことで、3年間乗り越えることができた。
私が好きな言葉のひとつに『ピンチはチャンス』がある。窮地に立たされたときにピンチだと思えばピンチのままだが、ピンチを乗り越えたときには大きなリターンが待っていると考えれば、『ピンチはチャンス』だ。何事もプラスに捉える思考が、仕事も人生も楽しむ私の原点になっている。
アドラー心理学『嫌われる勇気』からの学び 人は、結果に合った理由を後付けで考える
アドラー心理学について書かれたベストセラー『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)は、私の愛読書のひとつだ。教員を目指す学生たちにも勧めている本である。
より良い人生を生きるためのエッセンスがいくつも書かれているが、ここで紹介したいのは、「理由があって結果が導かれるのではなく、結果から理由を導こうとしている」という人間の心理だ。
たとえば、「学校に行かなくなる」という結果が起きたとする。その際に、「友達との関係が良くないので、学校に行かなくなった」と結果に合った理由を、後付けで考える人が多い。本来は、理由があっての結果であるはずが、その相関関係が逆転している。このアドラーの教えは、「考え方」を捉え直すひとつのヒントになるのではないだろうか。
私は、教員時代にメンタルトレーニングについて学ぶ機会があった。稲盛さんの本を読んで以降、「考え方」を考えることに興味が湧き、メンタルを学んでからは、心はコントロールできることを知った。
嫌なことや、イライラすることがあったとき、人間は「はぁ」とか「あー」とか無意識のうちにため息が漏れる。「やだなぁ」とか「やってらんないよ」といったネガティブなワードもそれと同じ類だ。
こうしたマイナス的な言葉を吐くことで、心や気持ちが落ちる。この順番が大事で、自分の言葉によって、心が支配されてしまうのだ。
だから、私が意識しているのは、何かうまくいかないことがあったときに、「はぁ」とため息をつくのではなく、マイナスの思考を一旦飲み込む。そのうえで、「仕方ないか。次、次」「よし、やろう!」と、プラスの言葉を口にする。最初は意識しながらやっていたが、今は無意識の中でコントロールできるようになっている。
結局、人が後悔するのは過去のこと。過去はどんなに悔やんでも変えられない。悔やむ時間があるのなら、気持ちを切り替えて次に向かう。「今」に目を向ければ、未来への不安も小さくなり、自分の心を落ち着かせることができる。