異色のセカンドキャリアを歩む元Jリーガー

まずは本業を軌道に乗せて、それぞれのスタイルでサッカー界にも貢献 国見高の黄金期戦士・セカンドキャリア対談(後編)

元川悦子

普段は福岡に拠点を置く中村(左)と、長崎に住む徳永。再会するのは8月24日に行われたV・ファーレン長崎OB対国見OBのレジェンドマッチ以来だった 【元川悦子】

 高校サッカーの名門・国見高校で名将・小嶺忠敏監督に師事し、FC東京とV・ファーレン長崎でもチームメートだった徳永悠平と中村北斗。ふたりとも引退後はサッカーに携わりながら、異業種に飛び込んで活躍している。徳永は父が営むコンクリート二次製品の販売会社「マルトク」の副社長に就任。中村は長崎県諫早市に本店を置く「つづみ団子」のフランチャイズ店をオープンし、団子ビジネスを軌道に乗せた。ただし、ここに至るまでの道のりは決して平たんではなかったようだ。コロナ後の仕事環境の変化や現在に至る流れ、そして今後のビジョンについて、語り合ってもらった。(取材日:2025年10月3日)

古参スタッフに離れてもらうシビアな決断

――徳永さんと中村さんがセカンドキャリアに踏み出したのは、ちょうどコロナ禍。当時は社会活動が停滞していましたが、2022~23年以降は急激な円安による物価高、資材の高騰など、さまざまな社会環境の変化がありました。その影響はどうですか?

徳永 僕の会社はまさにダイレクトに影響を受けました。先ほど話したように、側溝や擁壁などのコンクリート二次製品を販売するのがメインの仕事なんですが、それを製造する会社も製品を買う工事業者もどんどん人が減っているんです。

 長崎県内には製造業者が3~4社あって、2023年までは僕のところも製造していました。でも、人手不足が深刻になってきて、2024年に製造からの撤退を決断しました。

 それは父の判断で、副社長である僕も合意したんですが、そうなると製造に携わっていた社員に別の会社に移ってもらわなければいけなくなる。その話し合いと仕事紹介は父が担当したんですが、僕自身も入社時から可愛がってもらった古参のスタッフがいたので、すごく辛かったです。

中村 戦力外通告をするJクラブの強化部担当のような感じで、悠平さんもしんどかったでしょうね。

徳永 サッカー選手は個人事業主だから、あくまでも契約だよね。「契約が切れたらしょうがない」と自分自身も思っていたし、北斗もそういうところはあったんじゃないかな。

 でも、会社の社員に離れてもらうというのは、ものすごくシビアな決断。もちろんウチにとどまるよりも、大きな会社へ行ったほうが待遇面もよくなることは分かっていたけど、長い人は10数年も務めてくれていたから。やっぱり複雑な心境にはなったのは確かだよね。

中村 悠平さんの会社は安定していると思ったけど、厳しい現実もあるんですね。

徳永 毎日、製造業者と工事業者の間で板挟みになってるよ。工事業者の納入期限を守るために、製造業者にお願いすることがよくあるんだけど、先方には本当に申し訳ない気持ちになるよね。僕自身もすごく気を遣っている。

 人手不足の問題はこれからもっと深刻になるんじゃないかな。製造もいずれはAIとかロボットが全てやる時代になると思う。今も機械で製造しているけど、まだ人が管理する部分も少なくないから。近い将来にはフルオートメーション化に移行するだろうし、僕自身、そういうことを勉強して対応力を身に着けておかないといけないと痛感する日々だよ。

朝から夜まで一日仕事、試合直前は大混雑

「マルトク」の副社長として奮闘する徳永。仕入れから販売に至る流れを把握したり、営業先とのネットワークを築いたり、「走りながら学んできた」という 【元川悦子】

――中村さんの方も団子の販路が広がり、人を使うことも増えているんじゃないですか?

中村 アビスパ福岡のホームゲームのときは自分が販売に当たり、元チームメートの神山竜一に時々、手伝ってもらっています。レノファ山口のホームゲームでも販売させてもらっているんですけど、そちらは2024年末に引退した石川啓人に担当してもらっています。

徳永 最近は福岡・山口以外にも出店するときがあるんだよね。

中村 はい。9月20日の横浜F・マリノス対福岡戦、9月23日のFC東京対福岡戦のときに遠征しました。マリノス戦は兵藤(慎剛=早稲田大学監督)に来てもらって一緒に接客してもらいましたし、東京戦では後輩の河野広貴と吉本一謙に手伝ってもらいました。

徳永 北斗も工夫を凝らしているんだね。

中村 そうですね。僕らが引退したときってコロナだったじゃないですか。ファンサービスもできなかったし、サポーターとの交流もできないまま、ユニフォームを脱ぐことになったのを僕はすごく残念に思っていて、そういう場を作りたいなと考えているんです。

 東京戦のときに来てくれた吉本は東京・アビスパ両方のOBなので、両クラブのサポーターが喜んでいました。団子を売りながら、ファンサービスもできて、サポーターとの交流も生まれる。これはすごくいい仕事だなと思いますし、ありがたく感じています。

徳永 確かに。ただ、スタジアムでの団子販売はハードワークだろうね。

中村 それはあります。14時キックオフの試合日だったら、朝9時前には販売車を運転してスタジアム入りし、搬入から陳列を1人でやっています。11時半頃には開店しますけど、販売は17時頃まで続きます。試合直前は大混雑になるので、かなり大変(苦笑)。閉店後は備品を乗せて帰り、売り上げの計算をするという形で、本当に丸一日の仕事ですよ。

徳永 Jリーガー時代は午前練習が終わったらそのあとはフリーだったし、今と比べるとかなり楽だったよね。それは自分も感じるよ。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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