秋華賞、ローズS・8着馬が“2強ムード”に一石 「タイム評価」が見つける激走馬
「一番強い競馬」
SPAIA競馬の独自指標「タイム評価」は、走破タイムの表面的な数字に隠された「真の価値」を可視化する。この指標は、当日の馬場状態や全体の時計傾向といった「タイムの出やすさ」を補正するため、競馬場や距離が異なるレースの走破タイムでさえ、比較が可能なのだ。
今週末に開催される3歳牝馬三冠の最終戦、秋華賞(GI、京都・芝2000m)。春の二冠で連続2着だった実力馬アルマヴェローチェが屈腱炎で戦線を離脱したことで、今年の牝馬路線はオークス馬カムニャックと桜花賞馬エンブロイダリーらクラシックを制した2頭に注目が集まる。しかし、SPAIAの独自指標「タイム評価」からは別の馬が浮かび上がってきた。
それは、前哨戦のローズステークス(GII)で8着に敗れたパラディレーヌだ。オークス4着の実績を持ち、実力は確か。ただし、これまでの秋華賞で「前走GII以下のレースで6着以下に敗れた馬」が馬券圏内に入ったのはわずか6例。複勝率6.7%というデータを見ると信頼するのは難しい。
しかし、レース内容を振り返れば、この着順を鵜呑みにするのも早計だと感じるだろう。スタートで後手を踏み、道中は後方からの追走を余儀なくされ、直線の勝負どころでも前が壁になり、満足に追えないままゴールしている。能力を発揮しきれなかった、いわゆる〝不完全燃焼〟の一戦と解釈することも可能だ。管理する千田輝彦調教師がレース後に「一番強い競馬をした」と報道陣にコメントしたように、着順には表れないパフォーマンスに陣営は確かな手応えを感じていたことがうかがえる。
タイム評価でこのローズSを見ると、パラディレーヌが記録したスコアは「175」。これは、数々の不利があった中で記録された、同馬の自己ベストだった。
「175」という数値は、出走メンバー中では8番手タイであり、エンブロイダリーが記録している「180」と比較すれば見劣りする。だが、重要なのは、このスコアをスムーズな競馬ができなかった中で叩き出したという点だ。もし万全のレース運びができていれば、評価はさらに上積みされていた可能性を示唆している。
急上昇と京都適性
15日の最終追い切り後、千田師が「本当に美しい走りになっている」と報道陣に語るように、心身の充実ぶりも窺える。一度レースを使われたことで、状態面での上積みも期待できるだろう。
決戦の舞台となる京都芝コースでは、これまで3戦して2勝、3着1回と、複勝圏内を一度も外していない。本格化前の段階で、既にタイム評価「164」もマークしており、コース適性も示されている。京都芝「164」という数字は登録メンバー中最高の数字でもある。オークスでは勝ち馬から0.3秒差の4着に入り、GIクラスで通用する素地があることも確かだ。
前走の着順と、それに伴う過去のデータは、同馬にとって高い壁だ。一方でそれを乗り越える可能性を秘めた「成長力」と「舞台適性」を「タイム評価」は示している。ローズS・8着を理由に人気が下がるようなら妙味も十分。レース上も馬券上もパラディレーヌは軽視できない存在だ。
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