名門ブルズでNBA挑戦2年目を迎える河村勇輝 “PGの6番手”という立ち位置にも笑顔を失わない理由とは?

杉浦大介

サマーリーグで結果を残し、名門ブルズと2ウェイ契約を結んだ河村。NBAで本契約を勝ち取るための勝負の2年目が始まる 【Photo by Jason Miller/Getty Images】

 日本が誇るバスケ界のファンタジスタ、河村勇輝が、かつてマイケル・ジョーダンを擁し、2度のスリーピート(3連覇)を達成した名門シカゴ・ブルズと2ウェイ契約を結び、NBA挑戦2年目のシーズンを迎える。新天地では“PGの6番手”という厳しい立ち位置だが、それでもいくつかの課題をクリアすれば、間違いなくチャンスは巡ってくるはずだ。NY在住のスポーツライター、杉浦大介氏が、現地時間10月21日に迫った2025-26シーズンの開幕を前に、河村の現状をレポートする。

感慨深い父親がファンだったチームとの契約

 独特のカリスマ性は、なんら変わっていなかった。

 9月上旬、シカゴで催されたメディアデイ(=キャンプ開始前日の会見)でのこと。シカゴ・ブルズの伝統の赤いユニホームに袖を通した河村勇輝が、NBAでの2年目に懸ける熱意を語る姿を見れば、スポーツファンなら誰もが胸を弾ませたことだろう。

「今でもブルズの一員でいることがすごく不思議でたまらないというか、信じられないことは多いです。昔から父と一緒にビデオで見ていたブルズの一員としてプレーできることをすごく光栄に思っていますし、何より本当に伝統あるチーム。それに恥じないプレーで、ファンの皆さんの期待にしっかりと応えられるように頑張っていきたいなと思います」

 現地7月19日、河村はブルズと2ウェイ契約を締結。その直前、今年もラスベガスで行われたサマーリーグでの河村は、すべて途中出場ながら平均10.2得点、6.2アシスト、2.2スティールと優れた成績を残した。インパクトはその数字以上に大きく、特に3戦目のインディアナ・ペイサーズ戦で15得点、10アシストのダブルダブルをマークして波に乗った感があった。

 4戦目のミルウォーキー・バックス戦でも、第4クォーターだけで6アシストをマークして逆転勝利に大きく貢献すると、最終戦となったユタ・ジャズ戦では20得点、10アシストと大爆発。ブルズ3連勝の立役者の1人となり、チーム側にももう手放すという選択肢はなくなったのだろう。

 最終戦を終えた直後、河村とブルズの2ウェイ契約が発表された。“バスケットボールの神”とまで呼ばれたマイケル・ジョーダンを中心に、1990年代に2度のスリーピート(3連覇)を達成した名門チームに、日本が生んだ司令塔が所属することが決まった瞬間だった。「昔からジョーダンのビデオはよく見ていました」という河村にとっても、父親がファンだったチームとの契約には感慨深いものがあったに違いない。

今のブルズは理想的な環境ではないのか?

201センチのサイズを誇り、昨季7度のトリプルダブルを記録したギディーを筆頭に、ブルズには河村のライバルとなる優秀なPGがひしめく 【Photo by Jason Miller/Getty Images】

 もっとも、それほどシンプルかつビューティフルなストーリーに仕立てていいわけではないのかもしれない。「今のブルズは河村にとって必ずしも理想的な環境ではない」という声は、シカゴの地元メディアからも聞こえてくるからだ。

 河村のポジションであるポイントガード(PG)には、スタメンが予想されるジョシュ・ギディーを筆頭に、トレ・ジョーンズ、ジェボン・カーター、アヨ・ドスンムとタレントが揃っている。さらにコンボガードのコビー・ホワイトまで含めれば、河村は“6番手”。Gリーグ(下部リーグ)の所属でありながらNBAでも一定の試合に出場できる2ウェイ契約ながら、ブルズで大きな意味のある貢献を果たすのは簡単ではなさそうだ。

 メディアデイの際、ブルズのガード陣の状況と自らのチーム選びの関係について聞くと、河村の口から真実に近いものがこぼれ落ちてきた。

「サマーリーグではブルズでプレーさせてもらいました。ブルズが最初に僕のことを評価しくれて、この契約に至ったので、そこはやっぱり評価してもらえるチームに行くことが一番大事だなと思ったんです。僕がチームを選べるようなレベルの選手ではないのもあります。PGが多い現状があり、もちろん簡単ではないですけど、たくさんのPGがいることによって、練習でも試合の中でもいろんなことを学べます。そこで多くのことを吸収し、成長できればいいなと思っています」

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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