現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

首位攻防戦となる今季最初のエル・クラシコ ともに怪我人を抱えるR・マドリーとバルサ、不安材料が多いのは?

山本美智子

重圧が大きいのはシャビ・アロンソのほうだ

第7節のマドリード・ダービーで今季初黒星を喫したR・マドリーには、ビッグマッチの弱さを指摘する声も。ホームで戦うエル・クラシコは絶対に落とせない 【Photo by Diego Souto/Getty Images】

 さて、そんな歴史を積み重ねてきたエル・クラシコだが、今季も最初の対戦がいよいよ10日後(10月26日の16時15分キックオフ)に迫っている。時代は変わっても、この試合が持つ特別感はなんら変わらない。

 ラ・リーガ第8節を終えた現時点で、R・マドリーが首位、これを2ポイント差でバルサが追う状況。インターナショナルマッチウイーク明けの第9節の結果にもよるが、バルサが勝てば首位が入れ替わるという、ファンにとってはたまらない最高のシチュエーションでの両雄激突となる可能性が高そうだ。

 昨季は就任1年目のハンジ・フリックに率いられたバルサが、スペインスーパーカップとスペイン国王杯決勝を含めた4度のエル・クラシコを制し、リーグ優勝と併せて国内3冠を達成。R・マドリーはこれ以上ない屈辱を味わった。

 リベンジに燃えるR・マドリーは、今季からクラブOBのシャビ・アロンソを新監督に迎え、チームの若返りを進めつつ、開幕から公式戦7連勝と最高のスタートを切った。しかし、不安視されているのはビッグマッチでの弱さだ。

 シャビ・アロンソの初陣となった今夏のクラブワールドカップでチェルシーに準決勝で0-4と敗れたチームは、ラ・リーガ第7節のアトレティコ・マドリーとのマドリード・ダービーでも2-5の大敗を喫している。さらに今回、ホームでのエル・クラシコに敗れるようなことがあれば、サポーターから一気に不満の声があがるのは必至だ。その意味で、シャビ・アロンソにかかるプレッシャーは非常に大きいだろう。

 ただ、一方のバルサもチャンピオンズリーグ(CL)のリーグフェーズ第2戦でパリ・サンジェルマンにホームで屈し、4日後のラ・リーガ第8節セビージャ戦も1-4で敗北と、流れが良くない。

 疑問視されているのが、フリック・バルサの最大の特徴でもある「高いディフェンスライン」だ。昨季はこの攻撃的なシステムによって相手を押し込み、多くのアタッカーをオフサイドの罠にかけてきた。『ムンド・デポルティーボ』紙によれば、昨季のキリアン・エムバペは8回もその罠にかかっている。

 ただし、この常識外れにリスキーなシステムを機能させるには、それに見合った役者が必要だ。その意味で、ハイラインを見事にコントロールしていたベテランのセンターバック(CB)、イニゴ・マルティネスの退団(→アル・ナスル)は痛かった。もちろん若いパウ・クバルシも、スピードがあり、最終ラインからゲームを組み立てられる重要なDFだが、しかしI・マルティネスという頼れるパートナーを失い、負担が増えている。CBではロナルド・アラウホ、アンドレアス・クリステンセンらが起用されているが、ハイライン戦術においては力不足の感が否めない。

 付け加えれば、左サイドバックのアレハンドロ・バルデが相変わらず怪我がちで、なかなかコンディションが整わない点もネックとなっている。

 ジョアン・ラポルタ会長は、「代表ウイークの間に、フリックがチームをどう立て直すか、策を考えてくれるだろう」とコメントし、指揮官に対して暗にプレッシャーをかけているが、それでも昨季の成功体験からフリックへの信頼は揺らいでいない。その点で、これからフロレンティーノ・ペレス会長の信頼を勝ち取らなくてはならないシャビ・アロンソと比べて、足もとは盤石なはずだ。

イニエスタとシャビを足して二で割ったような

公式戦2連敗中と流れが良くないバルサは、ここにきて主力に怪我人も相次いでいる。大黒柱のペドリが無事にエル・クラシコのピッチに立てることを願いたい 【Photo by Manuel Queimadelos/Quality Sport Images/Getty Images】

 エル・クラシコを控えて、双方に共通するのは怪我人の多さだ。R・マドリーの場合はトレント・アレクサンダー=アーノルド、ダニエル・カルバハル、フェルラン・メンディ、アントニオ・リュディガー、ディーン・ハイセンと、ディフェンス陣に離脱者が相次いでいる。それでも、エル・クラシコに間に合わないのは、おそらくメンディとリュディガーの2人だけだ。

 前線では絶対的エースのキリアン・エムバペと、新進気鋭のフランコ・マスタントゥオーノが怪我を抱えていたが、いずれも軽症と見られている。この2人がベストコンディションでエル・クラシコを迎えられるか、そして故障で出遅れたジュード・ベリンガムからスタメンの座を奪い取ったレフティ、アルダ・ギュレルが、果たしてこの大一番でも攻撃陣を力強くけん引できるかどうかが、ポイントになりそうだ。

 シャビ・アロンソは、チームを「建設中」と表現している。しかし、クラブW杯での初采配からすでに4カ月が経過しながら、今もって開幕前から指摘されていた「誰が左サイドでスタメンを張るのか」という問題すら、解決されていない。何よりも結果を求めるR・マドリーのようなビッグクラブは、悠長に工事が終わるのを待ってはくれないのだ。

 一方のバルサでは、やはり加入早々から不動の守護神としてゴールマウスに君臨していたジョアン・ガルシアの離脱が痛い。第6節のオビエド戦で半月板を損傷し、復帰は早くても11月の頭になりそうだ。

 前線でもラフィーニャがハムストリングを痛めて離脱中で、エル・クラシコに間に合うか微妙な情勢。さらに代表ウイークには、スペイン代表のダニ・オルモとフェラン・トーレス、ポーランド代表のロベルト・レバンドフスキも負傷を抱えてバルセロナに帰ってきた。その一方で、再び恥骨部分に痛みを訴え、代表招集を辞退していたラミン・ヤマル、そして負傷離脱中だったフェルミン・ロペスがすでに全体練習に復帰しているのは朗報とはいえ、左膝の手術に踏み切ったガビも含め、開幕からわずか2カ月でここまで攻撃陣に故障者が相次ぐとは想定外だっただろう。

 そんなバルサにあって、今回のエル・クラシコの一番のキーマンを挙げるなら、今季も好調を維持するプレーメーカーのペドリだ。「イニエスタとシャビを足して二で割ったようなレベル」ともっぱらで、ピッチの王様として君臨する彼のパフォーマンスに、今や誰もが魅了されている。

 当然、スペイン代表でも不可欠な存在で、このところまったく休みを取れない状態が続いているため、勤続疲労で離脱した数年前の二の舞を危惧する声も聞かれる。彼が無事にエル・クラシコを迎えてくれることを、バルササポーターは心から祈っているに違いない。

 個人的にもう1人、“陰のキーマン”になるのではないかと期待しているのが、エリック・ガルシアだ。左右のサイドバック、CB、アンカーと、与えられたポジションを文句1つ言わずにこなす献身的なマルチは、ベンチスタートでも腐ることなく声を出すムードメーカーでもある。「ありがたいことに」スペイン代表に選出されていないため、怪我のリスクも少なく、チームの戦いに全力を傾けられる。昨季も最終盤のエル・クラシコ(第35節)で、逆転勝利を呼び込む貴重なゴールを挙げた名脇役が、再び大仕事をやってのけるかもしれない。

 たかがエル・クラシコ、されどエル・クラシコ。今週末のリーグ戦も、来週半ばに行われるCLの試合も、いわばアペリティフ(食前酒)にすぎない。果たしてどちらが勝利の美酒に酔いしれるのか。今季最初の大一番がやってくる。

(企画・編集/YOJI-GEN)

2/2ページ

著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

新着記事

お知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント