レッドブルを蘇らせた“静かな革命” メキエス新代表の凄さとは
「静かな男」がもたらした変化
7月にメキエスが代表に就任して以降、フェルスタッペンは見違えるように結果を出し続けている。メキエス体制初戦のベルギーGPで、3戦ぶりの上位入賞となる4位。次戦ハンガリーこそ9位に終わったが、その後シンガポールまでの4戦で2勝、2回の2位表彰台。しかもそのうちの3戦では、現時点で最強のマクラーレンの2台を抑えることに成功した。苦戦が続く角田裕毅も、アゼルバイジャンで6位入賞を果たすなど、復調の兆しが見える。
コンスタントに優勝争いができるまでになったのは、簡単に言えばマシン戦闘力が劇的に改善したからだ。ではそれは、なぜ可能だったのか。普通に考えれば、シーズン途中のチーム代表解任というのは、マイナス要因でしかない。ところがレッドブルは、逆にそこから一気に立ち直った。なぜだったのだろう。
エンジニア出身リーダーが動かすF1
「僕たちは常に細部まで目を向け、自分たちの弱点を理解しようと努めてきた。でも今までは、どう改善できるのか理解できないまま終わることもあった」
今季のレッドブルは、開幕序盤こそ優勝3回、2回の2位表彰台と、数字だけ見れば悪くなかった。しかし多くはフェルスタッペンの超人的な頑張りのおかげであり、マシン性能がマクラーレンに劣っていることは明らかだった。
そしてシーズン中盤には、未勝利のレースが続いた。その結果、フェルスタッペンはタイトル争いで首位オスカー・ピアストリに100ポイント以上の大差をつけられ、レッドブルも選手権4位に沈んだ。
「それがここ数レースは、確実に改善している。ローランが加わり、適切な聞き取りをすることで、うまく行くようになってきた」
フェルスタッペンはさらっと語っているが、彼が言いたいのは「チームトップの大胆な路線変更」だ。
ホーナー前代表は、強烈なリーダーシップでチームを引っ張ってきた。2010年からの四連覇、2021年から去年までの二度目の四連覇が示すように、そのやり方は十分にうまく機能していた。
しかし1年以上前から、レッドブル内部では深刻な問題が浮上していた。開発面では、風洞などシミュレーターの示すデータと、実走行での結果が一致しない。自信を持って投入した改良パーツが、期待通りの速さを出さない事態が何度も起きた。
それでもフェルスタッペンはなんとか四連覇を果たしたが、コンストラクターズ選手権ではマクラーレンにタイトルを奪われた。