松山英樹は大会の主役 日本開催PGAツアーを盛り上げた賞金王経験者たち

北村収

毎日、松山英樹には大ギャラリーが集まった 【Photo by Yoshimasa Nakano/Getty Images】

 10月9日から12日まで横浜カントリークラブで開催された「ベイカレントクラシック Presented by LEXUS」では、日本人選手が世界の強豪相手に堂々たるプレーを見せた。昨年の日本ツアー賞金王の金谷拓実が4位タイ、2022年の日本ツアー賞金王の比嘉一貴が18位タイに入り上位争いに食い込んだ。2人とも現在は海外ツアーを主戦場としており、異国の地で積み重ねてきた経験を、日本開催の米国PGAツアーという“世界基準の舞台”で結果に結びつけた。

 また、成績は満足のいくものではなかったが、松山英樹が常に大会の主役だった。開幕前の9月に自身の名を冠したアマチュア予選会「Hideki Matsuyama Amateur Challenge Presented by LEXUS」を実施するなど大会を牽引した。なお、松山もルーキーイヤーの2013年に日本ツアーの賞金王に輝いている。

主役としての責任と次世代育成への情熱を形にした松山英樹

開幕前の会見でアマチュア予選会の将来構想について語った松山英樹 【北村 収】

 9月下旬に行われた本戦出場権をかけたアマチュア予選会は、松山英樹の発案によるものだった。その背景には、14年前の自身の原点がある。2011年1月、当時まだ大学生のアマチュアだった松山は、主催者推薦を受けてPGAツアー「ソニーオープンinハワイ」に初出場した。結果は予選落ちに終わったが、その経験こそがすべての始まりだった。「PGAツアーのレベルを肌で感じて、自分もこの舞台で戦いたいという気持ちが強くなった」と当時を振り返る。その3カ月後には「マスターズ」でアジア人初のローアマチュアに輝き、世界の注目を集めた。

 今回の予選会は、そんな自身の体験を次の世代に引き継ぐための新たな試みだった。「僕自身、主催者推薦から道が開けた。後輩たちにも同じチャンスを与えたいと思い、PGAツアーに相談しました」。この思いが実を結び、企画は実現。松山はすでに今後の展開も視野に入れている。「今年は1日だけの大会でしたが、来年以降は2日間、3日間と拡大していければ」と、開幕前に早くもアマチュア予選会の将来構想を語った。
 選手として大会を終えた松山は、「思い描いていたプレーではなかった」と自己評価を口にした一方で、「最初から最後まで付いてきてくれたギャラリーの方には感謝しかないです」と語った。さらに「雰囲気的にはすごく良かったと思います」と大会全体を振り返りつつ、「怪我している人がいなければいいんですけど」と、急勾配や3日目の雨の影響で雨でぬかるんだ会場を歩いたギャラリーを気遣うコメントも残した。その言葉には、自らがこの大会の中心的存在であるという自覚と、ファンへの深い思いやりがにじむ。

「来年以降ここに照準を合わせて頑張っていきたいなと思います」と松山。横浜カントリークラブでのリベンジを誓った。

ベイカレントでやってきたことの手応えと自信をつかんだ金谷拓実

18番ホールでパーパットを沈めガッツポーズを見せる金谷拓実 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

 金谷拓実は前週、米国開催のPGAツアーに出場。21位に入り、終了後すぐに日本に向かったが日本到着は7日(火)早朝となった。その日のお昼から9ホール練習ラウンドを行うという強行日程。開幕前に疲れてないのかと問われると、「自分が好きでやっていることなので関係ないです」と一蹴した。

 9月に日本ツアー「ANAオープンゴルフトーナメント」で優勝。そのときも前週は米国だったが、「試合に対しての準備の仕方だったり、臨み方だったりというのは大事だなと気づきました」と今回も同じハードな状況の中でしっかりと調整。ベイカレントクラシックでは4位タイという好成績を残した。

 ボギーなしの9バーディ「62」という会心プレーだった最終日はホールアウト後、「(15番、16番、17番と)3連続でバーディを取れたのも大きかったし、最後のパーパットもすごくいいパットだったと思うし、積み重ねてきた結果が今日は出たと思います」と、成長の手応えをはっきりと口にした。

 4位タイに入りポイントを稼ぎ、フェデックスカップポイントランキングは135位から113位に浮上。シード圏内100位以内も十分に狙える位置まで順位を上げた。「次に向けてしっかりいい準備をして、まだ試合も続くのでいいプレーができるように頑張ります」と残り4試合でのPGAツアーのシード獲得を狙う。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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