五輪シーズンのフィギュアGPシリーズ展望 熾烈極める日本代表選考、ファイナル進出を目指して
鍵山優真「着実に一歩ずつ」
GPシリーズには、世界の有力選手が参加する。その中でトップ6のみが出場できるGPファイナル(12月、名古屋)は、ミラノ五輪の前哨戦として重要な大会だ。特に日本勢にとっては、五輪代表選考対象大会であるファイナルへの進出をかけた大切なGPシリーズとなる。
日本男子は昨季GPファイナル銀メダリストの鍵山優真がけん引する。宇野昌磨が引退し日本のエースと目されて臨んだ昨シーズンは、全日本選手権初優勝、世界選手権3位と結果を残した。ただ高難度ジャンプを組み込もうと意識するあまり、フリーについては冒頭の4回転フリップが失敗するとその後も崩れる傾向があった。
その反省から、今季序盤の鍵山は堅実な構成で臨んでいる。今季初の国際大会だったチャレンジャーシリーズ(CS)・ロンバルディア杯(9月)では、8月に左足首を痛めた影響もあり、4回転フリップには挑まず手堅く演技をまとめた。その結果、世界王者イリア・マリニン(アメリカ)に続く2位に入り、完成度の高さという強みを生かす作戦で好スタートを切ったといえる。
鍵山は「今年は『step by step』を意識して頑張ろうと思います」と語る。
「目標や夢を叶えるためには、今までの経験から、着実に一歩ずつ進んでいくのが一番の近道だと感じています。段飛ばしにやっていくのではなく、今自分が何をするべきか(考え)、そして今の目の前にある課題をクリアして、ミラノまでの道筋を切り開いていくことができたらいいなと思っています」
また鍵山がフリーで滑るのは、世界最高峰の音楽家による『トゥーランドット』オリジナルバージョンだ(ローリー・ニコル氏振付)。オーダーメイドの楽曲に乗り、卓越したスケーティングがより一層映える勝負プログラムにも注目したい。鍵山は、第4戦NHK杯、第6戦フィンランド大会に出場する。
ハイレベルな日本男子は、3枠をめぐる熾(し)烈な五輪代表選考レースが予想される。昨季GPファイナル銅メダリストの佐藤駿は、五輪代表枠がかかった世界選手権でも6位と健闘。6月末のアイスショーで右足首の骨挫傷を負ったものの、9月のロンバルディア杯(フリー)、東京選手権(ショート)では大技の4回転ルッツを成功させており、順調な回復がうかがわれる。フリー『火の鳥』は、世界トップクラスの高難度構成だけではなく、振付を担当した2022年北京五輪アイスダンス金メダリストのギヨーム・シゼロン氏によって磨かれた佐藤のスケーティングも見どころだ。佐藤は、第2戦中国杯、第4戦NHK杯にエントリーしている。
他にも日本男子は、三浦佳生(第1戦フランス大会、第3戦スケートカナダ)、友野一希(第3戦スケートカナダ、第5戦スケートアメリカ)、山本草太(第2戦中国杯、第6戦フィンランド大会)、壷井達也(第1戦フランス大会、第5戦スケートアメリカ)らが五輪代表候補として臨む。また第4戦NHK杯には、今季シニアデビューした垣内珀琉も出場する。
海外勢については、ファイナルのメダリスト候補として、現状頭一つ抜けているマリニンに加え、世界選手権銀メダリストのミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)が挙げられる。一つひとつの試合が重要な今季、特に高難度ジャンプを跳ぶ男子においては、怪我をせずにシーズンを戦い抜くことも大切だろう。