週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

上位指名の可能性も!大学では“指名漏れ”を経験した155キロ右腕/社会人3年目で急成長した本格派左腕

西尾典文

屈指の球速を誇る冨士隼斗(日本通運)と、チーム初のNPB入りに期待がかかる谷内隆悟(エイジェック) 【撮影:西尾典文】

 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回は社会人で高い注目を集めている本格派投手2人を取り上げます。

球速は今年の候補でも屈指! 社会人で総合力も向上した本格派右腕

日本通運・冨士隼斗は150キロ前後の速球を武器に、社会人になってからは制球も安定感を増した 【撮影:西尾典文】

冨士隼斗(日本通運 23歳 投手 180cm/86kg 右投/右打)

【将来像】則本昂大(楽天)

フォームは少し違うが体幹の強さを生かしたパワーピッチングは若い頃の則本とイメージが重なる
【指名オススメ球団】西武
メジャー移籍が濃厚な高橋光成の穴を埋める候補として最適
【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名(2位以上)の可能性あり

 今年の社会人の投手では以前のコラムで取り上げた竹丸和幸(鷺宮製作所)がナンバーワンと見られているが、それに次ぐ存在となりそうなのが日本通運の冨士隼斗だ。大宮東では控え投手で全く無名の存在だったが、平成国際大進学後に大きくスピードアップし、3年秋にはノーヒットノーランを達成。その後に行われた大学日本代表候補合宿でも最速155キロをマークして話題となっている。しかし当時は、スピードはありながらも制球はかなりアバウトな印象が強く、4年時には腰を痛めて調子を落とし、プロからの指名はなく日本通運に進んだ。

 社会人1年目は主にリリーフで起用されていたが、2年目の今年は春先から先発の一角に定着。6月8日に行われた都市対抗代表決定戦のテイ・エス テック戦では9回を一人で投げ抜いて1安打完封と見事なピッチングを見せ、チームの本大会出場にも大きく貢献した。

 この日の投球は現地で見ることができたが、立ち上がりこそ抜けたボールが目立ったものの、コントロールは大学時代と比べて明らかに安定しており、中盤以降は全く危なくない投球だった。また持ち味であるストレートも常時150キロ前後をマークしており、試合終盤でも球威が落ちないスタミナも魅力である。

 そしてNPBのスカウト陣に向けて最後のアピールの舞台となったのが9月23日に行われた日本選手権予選の日立製作所戦だ。都市対抗本戦では登板機会がないままチームが初戦で敗れたこともあって、この日のスタンドには10球団、20人以上のスカウトが集結。

 チームは終盤に勝ち越しを許して敗れたものの、冨士は6回2/3を投げて被安打3、7奪三振で3失点としっかり試合を作って見せた。ストレートはこの日も筆者のスピードガンで最速152キロをマーク。変化球も140キロ前後のカットボールとツーシームは打者の手元で鋭く変化し、130キロ前後のスライダーとチェンジアップも操ることができる。

 とにかく力任せで押す投球だった大学時代と比べるとすべての面で大きくレベルアップしたことは間違いないだろう。

 一方で課題と感じたのは立ち上がりだ。前述したとおり都市対抗予選でも抜けるボールが目立ったが、この日も1回にいきなり2つの四球からピンチを招いて先制点を許している。また緩いボールがあまりなく、このあたりが改善されればストレートと速い変化球がさらに生きてくるだろう。

 それでも出力の高さは社会人でもトップクラスで、社会人の2年間で着実に成長してきたのは大きなプラス要因だ。比較的早く使える投手が欲しい球団も多いだけに、高い順位での指名も期待できそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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