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“プロ中のプロ”ミルナーが認めた三笘の姿勢と実力「カオルの能力はアンビリーバブルだ」

森昌利

ブライトンの大ベテラン・ミルナーは、チームメイトの三笘をどう見ているのか。過酷なプレミアの戦場で20年以上戦ってきた鉄人の言葉だけに説得力がある 【Photo by Mike Hewitt/Getty Images】

 10月5日(現地時間、以下同)、プレミアリーグ第7節のウルバーハンプトン戦。ブライトンの三笘薫は左足首の故障により、リーグ戦で今季初めてベンチから外れた。いまだ未勝利で最下位に沈むチームを相手に苦戦を強いられ、引き分けに持ち込むのがやっとだったこの試合で、日本人エースの存在の大きさをあらためて認識した者も多いはずだ。チーム最年長の大ベテランで、かつてリバプールなどでも活躍した歴戦の勇士ジェームズ・ミルナーも、2023-24シーズンからともにプレーする日本代表MFを手放しで称賛する。

思い入れのある39歳ベテラン戦士に話を聞くために

「なぜ欲しいんだ? 今日はいらないだろう?」

 ブライトンの広報担当チャーリー・ハンソンが怪訝(けげん)そうな顔をしてそう言った。

 アウェーのウルバーハンプトン戦。三笘薫はリーグ戦で今季初、昨季5月4日のニューカッスル戦以来となるリーグ戦ベンチ外となっていた。

 試合後の会見でファビアン・ヒュルツェラー監督が、「左足首の怪我。しかし軽症で代表ウイークが終了するころにはチームに復帰してくれると思う」と欠場の理由を語ったが、そのハーフタイムに筆者がブライトン側のミックスゾーン・チケット(取材エリアに入るための許可証)を管理するチャーリーにチケットを所望すると、冒頭の言葉が返ってきた。そして「いったい誰の取材がしたいんだ?」と聞かれた。

 筆者は「ジェームズ・ミルナー」と意中の名前を言った。

 8月31日のマンチェスター・シティ戦で、プレミアリーグの最年長ゴール記録の歴代2位となる同点PKを決めたことで、9月最初のコラムでミルナーに関して述べた。2002年12月に当時のプレミア最年少記録を更新する16歳356日でゴールを奪った39歳ベテラン戦士のキャリアは、彼がデビューする一季前から発祥国の熱いフットボールと本格的に対峙しはじめた筆者の取材歴とほぼ重なり、個人的に非常に思い入れの強い選手なのである。

ジェラードと同じ匂いのする選手

リバプールが大逆転でバルサを下した2018-19シーズンのCL準決勝・第2レグ。終了間際、ミルナーは2人に激しくチャージされながらボールをキープしつづけた 【Photo by Visionhaus/Getty Images】

 生で見たミルナーの姿で一番印象に残っているのは、リバプール時代の2019年5月7日に行われた伝説のバルセロナ戦。アンフィールドで奇跡の4-0での勝利を収めた瞬間、ボールをがっちりとキープしていた彼の姿が瞼の裏に焼き付いている。

 それは、あの激しい試合で開始から走り続けたミルナーが、自軍の右コーナーでアルトゥール・メロとセルジ・ロベルトの2人に競られて前のめりに倒れ込んでも両足でボールを挟み込み、体を張ってキープした姿だった。

 あれこそまさに、いぶし銀ミルナーの真骨頂を表した瞬間だったと思う。

 イングランド北東部、ヨーク地方リーズ出身。朴訥(ぼくとつ)で言葉は少ないが、ピッチの上では激しく、常にひたむきに、真摯に、そして果敢にボール追い続ける。誰もが自分のチームにいてほしい願う選手。スティーブン・ジェラードと同じ匂いのする選手。バトル(戦い)を制するために不可欠な選手。本当に頼りになる選手。それがミルナーなのだ。

 そんな勇気とガッツ溢れる、発祥国のフットボーラーとしてお手本のような気質とプレースタイルを持ちながら、素晴らしいクオリティとセンスの持ち主でもある。だからこそ、リーズでプレミア最年少ゴール記録(現在は史上2位)を打ち立てた少年フットボーラーは、その後クラブの降格、破産によりニューカッスルに移籍したのを皮切りに、アストン・ヴィラ、マンチェスター・C、リバプールと、ブライトンに移るまでイングランドの名門・強豪クラブを渡り歩いた。

 そしてそのフットボールIQの高さとセンスの良さを証明するかのように、トップレベルのクラブで中盤ならどこでも、加えて3トップの右・左、そしてサイドバックに至るまで、さまざまなポジションをこなした。

 2017-18シーズンの欧州チャンピオンズリーグでは、決勝に進んだリバプールの選手として9アシストを記録。ヨーロッパの最高レベルで同シーズンのアシスト王となった。この事実からも彼が技術的に卓越したフットボーラーだということが分かる。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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