MLBポストシーズンレポート2025

痺れる場面で期待に応えた佐々木朗希 窮地救った2球にフリーマン「大きな武器を手に」と太鼓判

丹羽政善

九回2死一、三塁の場面でターナーを打ち取った佐々木朗希 【写真は共同】

首位打者・ターナーを相手に「冷静だった」

 熱狂的といえば聞こえがいいが、フィリーズファンの相手に対するヤジは品がなく、容赦ない。

 例えば、相手投手がブルペンで肩を作り始める。そこで投げているのが佐々木朗希のような新人だと、「こんな場面で投げたことあるのか? ビビってんじゃないのか?」と緊張感を煽るような言葉を浴びせる。

 ワンバウンドになったりすると、「オイオイ、ブルペンでもストライクが投げられないのか?」「さっきから1球もストライクが入ってないぞ」などと嘲笑。彼らは、そうやってプレッシャーをかけるのである。

 ただ、「英語もわからないので、何を言っているかわからなかった」と佐々木。言葉が話せない、あるいは聞き取れない苦労を散々してきたが、このときほど、助けになったことはないかもしれない。

 1点差に詰め寄られた九回2死一、三塁。トレイ・ターナーが打席に向かうと、総立ちのファンが、地鳴りのような声援を送る。ドジャースファンもいるにはいたが、佐々木に届くはずもなく、名前を呼ばれた彼はたった1人でマウンドに向かった。
 ただ、佐々木自身、冷静だったという。

「前回登板より(ウォーミングアップの)時間があったので、準備はできていましたし、マウンドに行って、ちゃんとストライクをとる準備ができていた」

 確かに、前回のように決して緊急登板というわけではなかった。九回の頭からいくケースも想定して、すでに肩をほぐしてあった。幸か不幸か、ピンチが続いたことで、時間ができた。

 とはいえ、相手は今季首位打者のターナー。ミスは許されない。

 また、フォークはワンバウンドになるリスクがあり、ワイルドピッチとなれば、三塁走者の生還を許す可能性もあった。

 そこには配球の難しさもあったはずだが、佐々木は、マウンド上でこう自分に言い聞かせた。

「とにかくストライクゾーンに投げること。自分でカウントを悪くして、真っ直ぐだけの状態を作らない。そういうことだけ心がけて投げました」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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