「GMにトレードを進言しました」欲しかった大砲と左腕 元巨人スカウト部長が明かす秘蔵エピソード
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「編成もスカウトもどちらも勉強してくれ」
「来年から高橋由伸が監督になる。体制も一新される。二軍監督は今年までとして、来年からはフロントに入って欲しい」
引退後はヤンキースでも勉強させていただいて、そのあとは10年間ずっと現場一筋でやってきた人間です。突然ユニフォームを脱いで背広を着るということに、正直抵抗もありました。フロント業務に興味は持っていましたけど、でも現場の方が慣れていますし、得意だし、居心地もいいものです。人間誰しも現状は変わらない方がいいですよね(笑)。変化というのはチャンスでもありますけど、最初は不安も戸惑いもあるものですから。
ですが、ユニフォームは永遠に着られるものではありません。いつかはユニフォームを脱いで現場を離れる日が来るわけですから、そういうタイミングではあったのかなとは思います。
2016年から私の肩書きは「編成本部アドバイザー」。編成という肩書きではありましたが、堤GMからは「編成もスカウトもどちらも勉強してくれ」と言われていました。翌年からスカウト部長になることが決まっていて、それを念頭に置かれた勉強期間でもあったのです。
編成とスカウトの違いを簡単に説明すると、編成の仕事はトレード、FAで獲る選手を調査することが主な仕事になり、見る対象はプロの選手になります。スカウトはドラフト対象選手を見ることが仕事で、その対象は高校、大学、社会人、独立リーグなどの選手ということになります。
「どちらも勉強してくれと」は言われていましたが、重きを置いていたのはスカウト活動の方でしたね。
欲しかった若き日の山川、中日で活躍中の左腕
私はピッチャーの方には関与していませんでしが、この年はDeNAから山口俊、ソフトバンクから森福充彦を獲って、陽も含めて3人の選手をFAで獲った年でした。
トレードで欲しいと思ったのが西武の山川穂高(現・ソフトバンク)です。1年目にファームでホームラン王を獲ったりしていましたし、二軍監督として見ていて「良いバッターだなぁ」とずっと思っていましたから。当時はまだ3年目で、前年は一軍出場が1試合だけ。この年も確か開幕は二軍だったと思います。実績もまだなかったのでチャンスはあるかなと思い、GMにトレードを進言しました。
トレードの話は私が直接相手球団の担当者とするわけではありません。編成は他球団の選手を調査して進言するまでが仕事。そこから先はGMの仕事になります。
このときは巨人と西武のGM同士で話しをしたと思うのですが、西武が出せないと言ったのか、求められた交換相手を巨人が出せないと言ったのか、そこはGM同士しか分からない話ですけど、結局上手くまとまりませんでした。
山川はその年の途中から一軍でもホームランをバンバン打つようになって、程なくリーグを代表するホームランバッターになりました。
もう一つ思い出すのが今年中日で活躍した松葉貴大です。当時はオリックスで投げていて、チャンスがあればトレードで欲しいなと思っていましたが、こちらも実現はしませんでした。