MLBポストシーズンレポート2025

投手・大谷翔平が4シームでフィリーズ打線を圧倒! 「パワーピッチャー」としての自分を貫く

丹羽政善

フィリーズ打線をパワーでねじ伏せた投手・大谷翔平 【Photo by Rob Tringali/MLB Photos via Getty Images】

打者・大谷を救ったヘルナンデスの一発

 テオスカー・ヘルナンデスの右中間に高々と上がった白球が落ちてくるのを、大谷翔平はダグアウトのフェンスから身を乗り出すようにして見つめていた。野手が打球を見送ったそのとき、大谷はフェンスに片足を掛け、いまにもフィールドに駆け出しそうな勢いだった。

「もう、素晴らしい瞬間。これぞ、ポストシーズンの醍醐味、そういう瞬間」

 大谷は、まさにその瞬間を待ち望んでいた。

 二回に3点を先制された。五回は1死一、二塁のピンチを招いたが、トレイ・ターナーをショートライナーに打ち取り、さらにカイル・シュワバーを三振に仕留めた。

 その場面を「試合の行方を決定づける場面だった」と振り返った大谷。こう続けている。

「先制点を取られた後に、味方が反撃に出る――そこまで粘れば、必ず勝つチャンスが来ると思っていた」

テオスカー・ヘルナンデスの値千金の逆転3ランに興奮する大谷翔平 【Photo by Hunter Martin/Getty Images】

 そのピンチを凌いだ先に、ヘルナンデスの一発が待っていた。

 あわよくば自分が、という場面もあった。逆転したあの七回、無死一、二塁で大谷に打席が回ってきた。ところが、見逃しの三振。この日はそれまでも、空振り三振、見逃し三振、見逃し三振。1試合4三振に、大谷は厳しい表情だった。

 そんな状況でもあっただけに、ヘルナンデスの一発は打者・大谷をも救ったが、大谷はこんな捉え方もしていた。

「ムーキーとテオが後ろにいるなかで、左投手をあの場面で出してもらえるというのが、僕が1番にいる意味」

 ロブ・トムソン監督は、「大谷に(マット・)ストラームをぶつけたかった」と話し、その限りでは成功したが、打者3人に投げなければいけないので、そうなると、ムーキー・ベッツ、ヘルナンデスとも対戦しなければならない。自分は三振に終わったものの、ヘルナンデスらのために左投手を引き摺り出したことが、結果的に逆転に繋がった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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