MLBポストシーズンレポート2025

「実質的なワールドシリーズ」ドジャースとフィリーズの戦力はほぼ互角 真っ赤に染まった敵地のマウンドに上がる大谷翔平の思いとは?

丹羽政善

第1戦での先発に備え、練習から引き上げる大谷翔平 【写真は共同】

実力が拮抗する両チーム

 フィラデルフィアで行われた2023年のリーグチャンピオンシップ(対ダイヤモンドバックス)を客席から見たことがある。ファンが熱狂的とは聞いていたが、試合が始まると彼らファンは総立ち。そのまま最後までほとんど座らないのには驚いた。アリゾナでも同カードの試合を見たが、一塁側に陣取ったフィリーズファンはやはり、ほぼ立ちっぱなしだった。

 カイル・シュワバーがホームランを打ったとき、一塁ベースを回りながらファンの方を指さした。そこで熱量が一段と上がり、あのときの独特な一体感は特殊な現象として記憶に刻まれた。

熱狂的なフィリーズファンの前で大谷はどんな投球を見せるか? 【Photo by Sarah Stier/Getty Images】

 ドジャースは明日、そんな空気の中で試合を行う。大谷も「野球に対して熱量が高いですし、球場での盛り上がりも他の球場に比べて素晴らしい熱量がある」と実感を口にした。

 全米的な注目も他のカードとは異なる。地区シリーズではもったいない、リーグを無視すれば、ワールドシリーズで顔を合わせてもおかしくないマッチアップ。米唯一の全国紙「USA TODAY」のボブ・ナイチンゲール記者は「これが、実質的なワールドシリーズ。勝ったほうが、ワールドシリーズを制する」と予想し、フィリーズのマット・ストラームも、「そういう緊張感がある」と認めた。

「いきなり、ワールドシリーズに臨む気分だ」

 両チームは、チームカラーも似ていて、力そのものも互角。ドジャースは、大谷翔平、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンというビッグ3を中心とした打線が、他を圧倒してきた。フィリーズも、本塁打王争いで大谷を交わしたカイル・シュワバー、トレイ・ターナー、ブライス・ハーパー、J.T.リアルミュートとオールスタークラスがズラリとスタメンに並ぶ。30歳前後の脂の乗ったベテラン勢が主力という点でも、構成を同じくする。

 また、ともに先発が安定している。ドジャースは、山本由伸、ブレイク・スネル、大谷、タイラー・グラスノーが、好調を維持。フィリーズは、ザック・ウィーラーが胸郭出口症候群で今季絶望。アーロン・ノラは今季、右足首の捻挫、右肋骨折などで本調子ではないが、プレーオフ前最後の登板では、8回を投げて2安打、1失点、9三振と復調をアピールした。

 ただ、今のフィリーズは、彼を必要としないほど左の3本柱が健在。初戦に先発するクリストフェル・サンチェスは今季、32試合に先発し、13勝5敗、防御率2.50。FIPは2.55。WHIPは1.064。WAR8.0で、ベースボール・リファレンス版ではトップ。先発では珍しくシンカー、チェンジアップ、スライダーの3球種しかないが、アームアングルが低く、独特の軌道。また、シンカーとチェンジアップの区別がほとんどつかない。2、3戦目に先発予定のヘスス・ルサルド、ランヘル・スアレスもなかなか手強い。ルサルドの防御率は3.92だが、守備の要素を排除し、純粋な投手の能力のみで計算されるFIPは2.90と低い。

 しかし、ドジャースはむしろ、“組み易し”と捉えているかもしれない。

第1戦で先発するクリストフェル・サンチェスと対戦する大谷翔平 【Photo by Gene Wang/Getty Images】

 サンチェスとは4月と9月半ばに対戦し、それぞれ4点以上奪った。サンチェスが今季、自責点が4以上だった試合は、4試合だけ。うち2試合がドジャース戦なのである。その9月、ロサンゼルスで直接対決したときには、スアレス、サンチェス、ルサルドの順でドジャースは対戦し、1勝2敗と負け越したものの、いずれも先発からは3点以上を奪っている。負けた2試合は、ともにリリーフが逆転を許しており、それは後半の戦いを象徴するようでもあったが、少なくとも苦手意識はないのではないか。

 むしろ、フィリーズがドジャースの先発陣に抑えこまれた――という印象の方が強い。9月15日はアンソニー・バンダをオープナーに使ったが、2回からマウンドに上がったエメ・シーハンは、5回2/3を1安打、1失点に抑えた。翌16日は、1戦目で先発する大谷が5回を無安打、無失点に抑えている。17日はブレイク・スネルが7回を2安打、無失点とやはり完璧な内容だった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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