史上最速Vの阪神は「もっと走れた」 ドラ8・石井大智の指名秘話【矢野燿大×下柳剛の阪神対談】

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【写真は共同】

 史上最速の独走Vを果たした阪神は何が凄かったのか? どんな部分が強かったのか?

 阪神OBで元監督の矢野燿大さんと、2005年に最多勝を獲得した下柳剛さんの「同級生バッテリー」にその秘密を紐解いてもらいました。第1回は生え抜き野手の活躍と投手陣のMVPについて、対談形式でお届けします。

本題の前に…

下柳:ひとつ聞きたいことあってな。(今回のテーマと)全然関係ないねんけど、矢野ちゃんが監督最終年、キャンプ入る前に『やめる』って言ったやろ。そのあと巨人戦で監督同士が話すとき、原(辰徳)さんに『撤回しろ』って言われてたってホンマ? 『今いいチームになっているから撤回しろ』って。

矢野:それはホンマ。原さんにそう言っていただいて光栄やったし、早い段階で自分の中で(辞任を)決めていたし。悩んで悩んで悩んで出した答えやからね。

下柳:後悔はないの?

矢野:後悔はない。ただ、ファンの人への気持ちが少し薄かったのは反省している。複雑な思いにさせた人も多かったと思う。でも自分の中では『来年はやってない』という気持ちで、毎日精一杯やりきろうと思っていた。そういう意味での後悔はないかな。

ファンが喜ぶのは「生え抜きの育成」

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下柳:ざっくり聞くけど、今年の阪神はどう? ほぼほぼ金本(知憲)監督と矢野ちゃんが取った選手で、こんなにドラ1がハマるかってくらいハマってる。

矢野:ドラ1もハマってるし、下からの選手も出てきている。ファンが一番喜ぶのは生え抜きの選手を育てることやし、ドラフトもうまくいった。近本(光司)と中野(拓夢)の2人が安定している。打率も上位を争って、盗塁数もちゃんと稼いでいる。

下柳:(チームの)四球がダントツで多いからね。打点も増えますよ。2人が返してるから大山(悠輔)があまり稼げないってのはあるけど。

矢野:でも悠輔もええところで打つよ。特に後半からは。5番に悠輔を置けるのがいいよね。佐藤輝明の安定と、森下(翔太)もいい場面で打つから。5番までは固定、6番以降をどう動かすか。誰を使うか。

下柳:7番の坂本(誠志郎)について。「捕手が打たない問題」ってずっと言っていたけど、今は2割5分くらいあるよね。リードでも頑張ってるし、これこそまさに矢野ちゃんが手塩にかけた選手。

矢野:コーチの時からやっているからね。坂本の良さはコミュニケーションをしっかり取れたりとか、しっかりと準備ができるといった、見えない部分のレベルが高いところ。現状は坂本が出場機会を増やしている形やね。

藤川監督のマネジメント力

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矢野:シモは今年の阪神についてどう思った? これだけ突き抜けるとは思わなかったけど、開幕前の予想どおり、普通に戦ってたらこうなるよね。他球団がうまくいかなかった面もある。

下柳:3年くらい前から出来上がりつつあったチームで、メンバーも大きく変わらない。それを外部から見ていた藤川監督が若手も試しながら、うまく回ってるのかなと思うけど。今の状況で、巨人もヤクルトも主力がいないとなると、俺がタイガースはもっと走れたんちゃうかなと思う。シーズンの最初に若いピッチャーをどんどんテストして引っ張り上げようとしてたから、そこで何ゲームか落としたけど、もっと走れたんちゃうかなと思う。

矢野:俺が今の藤川監督で思うのは、めちゃめちゃ入れ替えるなって。『もう2軍に行ったんや』って。ピッチャーも野手も。そこは藤川監督の意図があるんやろうな。

下柳:走塁ミスやボーンヘッドがあったら即落とすもんね。

矢野:その傾向はあるよね。メンバーを固定できているからこそ、6番、ショート、レフトは試しながらやれている。スタメンは基本固定で、ケガもないもんね。

下柳:大山や佐藤を休ませたり、今年の異常な暑さで体力消耗も激しいからね。

矢野:年齢も徐々に上がってきているからね。近本もずっと出ているし、いい意味のリフレッシュを入れながら。ゲーム差の余裕もあるから、休養もできていると思う。

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