アメリカ選抜とヨーロッパ選抜が激突 ライダーカップの魅力を徹底解説

北村収

米国チームのブライソン・デシャンボーとグータッチをするトランプ大統領 【Photo by Mandel Ngan-Pool/Getty Images】

 米国ニューヨーク州ベスページブラックで9月26日(金)から28日(日)まで開催中のライダーカップ。アメリカ選抜とヨーロッパ選抜が、2年に一度、誇りと威信を懸けて激突する。日本人選手の出場がないため日本での注目度は高くないが、4大メジャーをも超えると言われる盛り上がりを見せるこの大会。その魅力とは?

2025年大会の初日にはトランプ大統領が来場!

 初日の熱戦が繰り広げられていた会場の上空を、エアフォースワン(米国大統領専用機)が飛来。この日にトランプ大統領が来ると知らされていたギャラリーがどよめいた。11時ごろ会場近くのリパブリック空港に着陸し、12時頃にはトランプ大統領が姿を見せた。ちょうど午前のマッチが終了した直後のことだった。拳を突き上げたトランプ大統領に対し、ファンは「USA! USA! USA!」と連呼。また欧州ファンの一部も、欧州チームを応援する定番チャントである「オレ、オレ、オレ」コールで相手国の大統領に敬意を示した。その後、軍用機の飛行とともに米国国歌が演奏された。

米国チームだけでなく選手だけでなく、欧州チームのキャディとも握手をするトランプ大統領 【Photo by Mandel Ngan-Pool/Getty Images】

 米国チームキャプテンのキーガン・ブラッドリーは「本当に素晴らしい経験でした。現役の大統領がライダーカップの会場にいるなんて、本当に素晴らしいことです。大統領専用機エアフォースワンの会場上空飛行は、一生忘れないでしょう」と振り返った。

 いくつかの米国メディアも「今回の観客は、温かくトランプ大統領を迎えた」と報じている。実は今月9月上旬に同じニューヨークで開催された全米オープンテニスの決勝にもトランプ大統領が来場したが、そのときは観客から歓声とともにブーイングも起きていた。また、ニューヨークから近いニュージャージー州で行われた今年7月のサッカー・クラブワールドカップ決勝戦でも同様にブーイングがあった。今回も来場には特別な警戒体制が敷かれていたが、選手もギャラリーもおおむね歓迎ムードだった。なぜ今回はブーイングが起きなかったのか。

 ニューヨークは民主党支持者が多く、ギャラリーの中には共和党のトランプ大統領を支持しないファンも少なくなかったはずだ。米国メディアの記事には「ライダーカップという米国がチームとして戦うイベントが、分断の激しい時代に“団結”を象徴し、競技を通じて一致団結感を醸成した」との論評もあった。

 チームとしての結束が強く求められるライダーカップでは、ファンもその意義を理解し、政治的には支持しない人々も米国の象徴的存在である大統領への批判を控えたのだろう。“分断”が大きな社会問題となっている米国において、ライダーカップの会場だけは国を一つにする特別な空間となっていた。

出場選手は24人のみの中、4大メジャーと同じくらいの観客数

 ライダーカップの今年の観客数(練習日を含む)は22万人から25万人の来場を見込むと報じられている。なお4大メジャー(マスターズ、全米プロゴルフ選手権、全米オープン、全英オープン)も20万から25万くらいと言われており、観客規模は4大メジャーと変わらない。

 一方で出場選手の人数はライダーカップが圧倒的に少ない。マスターズは年によって変動があるが出場選手の人数は90人くらい。全米オープン、全英オープン、全米プロゴルフ選手権は通常156人の出場選手がいる。一方でライダーカップは米国選抜12人、欧州選抜12人の計24人しかいない。

 しかもメジャーが4日間競技であることに対してライダーカップは3日間。さらに初日、2日目は午前と午後にフォーサム(2人1組で1つのボールを交互に打つ)とフォーボール(2人1組で各プレーヤーがそれぞれ自分のボールを打つ)を4マッチずつだけが行われる。つまりメジャーと同じくらい集まった大ギャラリーが、4つしかない組に集中して観戦することになるのだ。

 これはライダーカップが、4大メジャー以上に異様な盛り上がりを見せる理由の一つだ。

無報酬での戦い!今年から米国チームに賞金が与えられたが選手は寄付を表明

4大メジャーと同じくらいのギャラリーが訪れるライダーカップ 【Photo by Kate McShane/Getty Images】

 ライダーカップは伝統的に選手へ賞金が支払われなかったが、2025年大会では米国チームの選手に対し史上初めて報奨金が用意された。米国代表12名それぞれに対し、個人用の報奨金20万ドルと慈善団体向け寄付金30万ドルの計50万ドルが割り当てられることがPGA of Americaから伝えられた。

 しかし米国チームの主力選手たちはこぞって自分への支給額を全額慈善団体へ寄付すると表明した。世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーは、「与えられたお金で地元ダラスの支援活動をしたい。PGAが我々に社会貢献の機会を与えてくれたのは素晴らしいことだ」と話した。世界ランキング3位のザンダー・シャウフェレは「ライダーカップに出場していることが誇り。いただく報奨金はもちろん寄付する」と語った。

開会式で国歌斉唱中の米国チーム。左からスコッティ・シェフラー、ザンダー・シャウフェ、コリン・モリカワ、ラッセル・ヘンリー。選手は報奨金の寄付を表明。 【Photo by Andrew Redington/Getty Images】

 欧州チームの選手には依然として金銭報酬はなく、そもそも金銭を求める声も上がっていない。欧州チームのキャプテンであるルーク・ドナルドは、「私たちの原動力は、お金では買えないもの、つまり目的、兄弟愛、そして先人たちを敬う責任、そしてこれからその時代を迎える人たちを鼓舞する責任です」とライダーカップで戦う意義を話してくれた。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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