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偶然か強運か、リバプール5連勝への指摘は正当!? 劇的ゴールで勝ち続ける昨季王者の強さの秘密

森昌利

首位リバプールはエバートンとのダービーで勝利。開幕からの連勝を5に伸ばし、2位アーセナルとの差を5ポイントに広げた 【Photo by Gaspafotos/MB Media/Getty Images】

 昨季の王者リバプールが9月20日(現地時間、以下同)のエバートン戦で2-1の勝利を収め、これでリーグ戦は開幕5連勝。失点が少なくなく、終了間際のゴールで勝利をつかんだ試合が続いているため、このロケットスタートは「偶然」「強運」だと揶揄(やゆ)する者もいる。だが、果たしてこれは正しい見方なのか――。一方、三笘薫のブライトンは苦しい戦いが続く。同日のトットナム戦では2点のリードを守れずに痛恨のドロー。5試合を終えてわずか1勝で14位に沈む。

マーソンの感情的な発言も英国フットボール文化の一部だが…

 ポール・マーソンは元アーセナルの名選手として知られる現スカイスポーツの解説者である。1968年生まれの57歳。右ウインガーとしてイングランド代表でも活躍し、アーセナルを離れた後もミドルスブラやアストン・ヴィラなどでクオリティーの高いプレーを見せて、2006年まで現役を続けた。

 そのマーソンが先週のプレミアリーグ第5節の直前、首位リバプールに対して強烈な物言いをして物議を醸した。いわく「これまでの4戦4勝は恵まれただけ。本来なら順位表の中盤にいるべきだ」と。

 マーソンはまるでリバプールの4連勝は“犯罪だ”とでも糾弾するような激しい口調で、「開幕のボーンマス戦から2-0のリードをふいにし、続くニューカッスル戦でも10人になった相手に対して2点のリードをなくした。(第3節は)近年のアンフィールドであんなにカンファタブル(快適そう)にプレーしたアーセナルは初めて見たが、それでもなぜかリバプールが勝利を収めた。(第4節の)バーンリー戦も試合終了間際のPKで1-0の勝利。少なくても勝ち点6は失っていたはずだ。こんな調子じゃ、年末には(アルネ・)スロットが苦戦していることは間違いない」と持論を展開した。

 もちろんマーソンは熱烈なアーセナル・サポーターであり、アンチ・リバプールである。そういう立場を明確にした彼の感情的な発言は解説の現場を熱くし、よりカラフルにする。それにこうした激情の発露は英国フットボール文化の一部でもあると思う。つまり“あり”なのだ。

 このマーソンの意見は、マンチェスター・ユナイテッドやエバートンのファンを筆頭とする、常にリバプールが勝ち点を失うことを祈っている英国のフットボール・ファンの気持ちを代弁している。そんなアンチはマーソンの発言を歓迎して、拍手喝采したに違いない。

 けれども果たしてマーソンの指摘は公平なものなのだろうか?

チーム内での苛烈な競争が終了間際の劇的弾を生んでいる

A・マドリーとのCL初戦は、終了間際にファン・ダイクのヘディング弾が決まり3-2の勝利。アディショナルタイムのゴールで勝ったのは早くも今季3度目だ 【Photo by Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images】

 先週は17日水曜日にまず、リバプールの今季初のヨーロピアン・ナイトに出かけた。

 すったもんだはあったが、英国史上最高額で移籍を果たしたアレクサンデル・イサクが先発に名を連ねて、彼の歴史的なデビューに立ち会えたことに感慨を覚えたが、そのチームシート(メンバー表)を見て震えた。

 なぜか? それはアレクシス・マック・アリスターとユーゴ・エキティケ、そしてミロシュ・ケルケズの3選手がベンチメンバーになっていたからだ。

 なんという層の厚さだ。

 次世代のバロンドール候補と言われるフロリアン・ヴィルツがトップ下で先発。そして、第3節アーセナル戦でひょっとしたらこれが今季のプレミアベストゴールになるのではないかという、素晴らしい直接フリーキックを決めたドミニク・ソボスライがダブルボランチの一角でスタートして、マック・アリスターがスタメン落ちした。

 それにイサクを使えば、同じセンターフォワードのエキティケが当然外れる。同じく今季加入のケルケズも、ユルゲン・クロップ時代から左サイドで体を張るスコットランド代表主将のアンディ・ロバートソンを完全に凌駕したわけではない。

 さらに言えば、前線左サイドのコーディー・ガクポもうかうかできない。出場時間はまだまだ少ないが、先月17歳になったばかりのリオ・ングモハはピッチに立つたびに“本物”という印象を深めている。ニューカッスル戦で決勝ゴールを決めて、リバプールの最年少ゴール記録を塗り替えたングモハは、将来的にイングランドの至宝になれる可能性さえ秘めている。個人的には、バルセロナのスペイン代表ラミネ・ヤマルに匹敵する素材だと確信している。

 こうしたチーム内競争は世界最高レベルにして真に苛烈だ。今季の欧州戦初戦となったこの夜のアトレティコ・マドリー戦でも、ニューカッスル戦、アーセナル戦、そしてバーンリー戦に続いて試合終了間際に決勝弾が飛び出したが、チーム内での熾(し)烈極まる争いが、マーソンをはじめアンチ・リバプールを歯ぎしりさせる劇的ゴール連発の起爆剤になっていると見る。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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