4回転に挑んだ東京選手権で優勝 住吉りをんが歩む、ミラノ五輪への道「一つひとつに集中」

沢田聡子

ロンバルディア杯から連戦となった東京選手権

コンディションが整わない中、首位に立った住吉りをんのショート 【東京選手権・住吉りをん ショート】

 フィギュアスケートの撮影経験が豊富なフォトグラファーによれば、住吉りをんはいい写真がたくさん撮れるスケーターなのだという。それは長い手足を持っているだけではなく、恵まれた体躯(たいく)が映えるポジションを常に保ちつつ滑っているからだろう。住吉のプログラムは、どの瞬間をとらえても芸術的な一枚になりそうだ。

 住吉は美しい所作だけではなく、リンクを大きく使うスケーティング、そして4回転トウループという大技も持つ。2023年11月、グランプリシリーズ・フランス杯での4回転トウループの成功は、日本女子初の快挙だった。

 昨季までは高い能力を試合で発揮しきれない印象もあった住吉だが、今季は序盤から4回転トウループに挑戦しつつ、他の要素をきっちり決める強さをみせている。チャレンジャーシリーズのロンバルディア杯(9月12~14日、イタリア・ベルガモ/現地時間、以下同)では、世界女王アリサ・リュウ(アメリカ)らを抑えて優勝。フリーと合計の自己ベストを更新(フリー140.72、合計209.59)し、好調を印象づけた。

 ロンバルディア杯の翌週に行われた東京選手権(9月19~21日、東京辰巳アイスアリーナ)は、全日本選手権(五輪代表最終選考会を兼ねる)の予選会となるブロック大会だ。ヨーロッパから戻ってきた時の時差ぼけに弱いという住吉は帰国便でよく眠れなかったこともあり、万全とはいえない体調で今大会に臨んだ。

 頭痛とめまいにも見舞われ、練習の質が上がらない中で迎えた試合だったが、19日に行われたショートでは演技をまとめた。今季のショート(ミーシャ・ジー氏振付)では、ピアノ曲『Alba Lullaby』に乗せ、大事な人に感謝を伝えているという。住吉の魅力が堪能できる、優雅なプログラムだ。

 冒頭のダブルアクセル、続く3回転ルッツ+3回転トウループは、加点がつく出来栄えで成功させる。しかし最後のジャンプである3回転フリップで、氷に手をつくミスが出た。苦笑いで演技を終えた住吉だが、コンディションが良くない中でもスピン・ステップはすべてレベル4を獲得。堅実な滑りで67.00をマークし、ショート首位発進となった。

 唯一のミスをした3回転フリップの前に、住吉は「今までにない、初めての嫌な予感」があったという。

「嫌な予感がある中で思い切り跳ぶことができたことについては、(岡島功治)先生からも『最小限のミスでとどめられたんじゃない』とは言われたんですけど。その嫌な予感の原因を反省して、ちゃんと明日(のフリー)は“無”でできたらなと思います」

 住吉は、ロンバルディア杯優勝で得た自信についても語った。

「小さいミスがあっても他の部分でカバーできるし、『思い切りいくのが一番』という自信になりました。『(優勝)おめでとう』と言っていただくことは嬉しいんですけど、悪いプレッシャーにならないよう、いい方のプレッシャーにするのも大事かなって。この試合でちょっと緊張していたので、それも少し感じました」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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