連載:徹底考察「ポテンシャルが高い選手」とは?

未来の横綱・大関候補はどの力士だ!? デビュー前から関係者を唸らせている超逸材も

荒井太郎

初優勝を覚醒のきっかけにしたい琴勝峰、大物感を漂わす王鵬

7月の名古屋場所で初優勝を果たした琴勝峰。入門時から将来を嘱望された大器は、これをきっかけに才能を全開できるか 【写真は共同】

 伯桜鵬と同じ伊勢ヶ濱部屋で切磋琢磨する草野も将来を大いに嘱望されている逸材だ。日大4年のときに学生横綱に輝き、昨年夏場所、幕下最下位格で角界入り。関取昇進までは所要5場所とやや時間を要したが、2場所連続十両優勝で入幕を果たすと、先場所は新入幕にもかかわらず、千秋楽まで優勝を争ったのは記憶に新しい。

 「幕内で優勝したいという挑戦は始まったばかりなんで。1回目にしたらよかったかなと思う」と先場所の経験は将来に大いに生きるはず。立ち合いで鋭く踏み込み、もろ差しになって一気に走る速攻相撲を身上とする。

 若手から中堅になりつつある王鵬、琴勝峰は、これからが脂の乗り切る時期。入門時から大器として注目を浴びていた琴勝峰は、期待されながらなかなか殻を破ることができず、ケガもあって十両に低迷する時期もあったが、先場所は堂々の初優勝を成し遂げ、覚醒のきっかけとしたいところ。

 琴勝峰とは同じ埼玉栄高出身で同学年だった王鵬も、じわじわと地力をつけてきた。大きな体を活かした左からのおっつけが武器で、今年初場所は12勝を挙げて優勝決定戦にも進出。相手が誰であろうと、どんな大舞台でも雰囲気に飲まれることのない泰然自若とした佇まいは、祖父である昭和の大横綱大鵬の血を受け継いでいるからなのか、すでに大物感を身に纏っている。

“史上最強の新弟子”と言われる逸材の実力はすでに三役クラスか

約4年半、研修生として伊勢ヶ濱部屋で稽古に励んできたオチルサイハンが新弟子検査をパス。11月の九州場所でベールを脱ぐことになりそうだ 【写真は共同】

 近大から昨年秋場所、幕下60枚目格付け出しでデビューした三田は、十両2場所目の先場所で十両優勝。十両4枚目の今場所も初日から7日目まで勝ちっぱなしとし(8日目に初黒星)、来場所の新入幕も見据える。

 173センチと上背はないが、相手の懐に入って一気に押し込む速攻相撲を主体に引きやいなしにも俊敏に対応でき、身体能力の高さもうかがえる。小兵のわりには大胸筋が広く発達し、スピードに加え、見た目以上にパワーもありそうだ。

 関係者の間で“史上最強の新弟子”と言われているモンゴル出身のバトツェツェゲ・オチルサイハンが、秋場所前の新弟子検査をパスし、いよいよ九州場所で前相撲を取る。

 相撲留学先の神奈川・新名学園旭丘高を卒業後、令和3年に伊勢ヶ濱部屋に入門するも外国出身力士は1部屋1人の規定により、同部屋の横綱照ノ富士が引退するまでは研修生扱いで稽古に励んでいた。所属する関取衆とはすでに互角以上に渡り合い、実力は三役クラスと言っても過言ではない。順当にいけば1年後には関取、2年以内には大関を狙える地位で土俵を席巻しているかもしれない。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

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