レバンガ北海道はB1で旋風を起こせるか? 桜井GMが語る充実補強、ロイブルHC復帰の内幕

大島和人

選手のキャリアを終え、昨季からGMに就いている 【撮影:宮本將廣】

 Bリーグの2025-26シーズンが、10月3日(金)に開幕する。今季のB1はアルティーリ千葉と富山グラウジーズの昇格によりクラブが2つ増え、チーム数は合計26。チャンピオンシップ(CS)進出は8チームだから、かなりの狭き門だ。

 26チームの中でも特に編成面で前向きな変化、上積みを感じるのがレバンガ北海道だ。今オフは日本代表のシューター富永啓生を筆頭に、魅力的な補強が相次いでいる。背景には経営体制の変化がある。スキマバイトでおなじみの「タイミー」を創業した小川嶺氏がオーナーとなり、7月からはクラブの取締役会長も務めている。もっとも「お金を使っている」ことだけで期待が上がっているわけではない。そこはこの記事で掘り下げていく。

 注目の開幕を前に、レバンガの桜井良太GMに単独インタビューを行った。桜井は2007年に折茂武彦・現社長とともにトヨタ自動車アルバルクからレラカムイ北海道へ移籍。チーム破綻とレバンガ北海道の設立、Bリーグ誕生といった荒波も経験してきた。2023-24シーズンに40歳で引退した後はGMに就任。出身は三重県だが、人生の半分近くを北海道で暮らしていることになる。(以下コメントはすべて桜井GM/敬称略)

「個の力」が今季の上積み

 レバンガ北海道は長らく人件費を抑制したチーム作りをしてきた。昨季のレギュラーシーズン戦績は21勝39敗で、勝率が全24チーム中19位。既に公表されている一昨季(2023-24シーズン)のチーム人件費は24チーム中22位だ。年間予算に対する人件費比率は30%以下で、他クラブより抑えていた。

 今季のレバンガはシンプルに「個の力」が上がった。桜井GMは新シーズンの人件費について「倍近くになったけど、Bプレミアのキャップ(2026-27シーズンの年俸総額制限/8億円)はオーバーしない」と明かしつつ、こう続ける。

「レバンガとしてこの数年、堅いディフェンス(DF)をするスタイルは確立できて、周りにも認知してもらえたと思います。オフェンスはノーマークをチームで作って、確率の高いシュートを打っていくバスケットをしてきました。ただCSを見ても、最後の競った場面で得点を取るのは個の能力が高い選手です。そこに頼るわけではないけれど、そういう要素も必要だと考えています」

 CSのような大舞台は特にそうだが、レギュラーシーズンも「僅差の第4クォーター」のようなシビアな場面ほど「個の力」が前面に出る。お互いが戦術的な手札も使い果たした、手の内が見えている状況では個のバトルに回帰するーー。それはバスケットボールの特性だろう。

「ノーマークを作って確率のいいシュートを打つバスケをしていると、相手は『確率の悪い選手に打たせよう』という対応になってきます。『最後はこいつで勝負する』というところが必要で、そこでボールを預けられる、シュートを任せられる選手が必要だと思っていました」

富永、オカフォーへの期待は?

富永啓生は2023年W杯での活躍が目覚ましかった 【Photo by Takashi Aoyama/Getty Images】

 新加入の富永啓生とジャリル・オカフォーはまさに「預けられる」「任せられる」人材だ。

 富永は24歳で、188センチ・85キロのシューティングガード(SG)。2021年の東京五輪は3人制(3x3)の日本代表に入り、2023年のワールドカップ、24年のパリ五輪は5人制の代表としてプレーした。愛知・桜丘高、レンジャー・カレッジ、ネブラスカ大、インディアナ・マッドアンツ(NBA Gリーグ)を経ての加入だ。

 彼は驚異的な成功率を誇る左利きのシューターだが、桜井はその意外な強みをこう口にする。

「身体の線は細いですけど、実は強さがあります。それは上半身ではなく下半身の強さです。相手DFを押し込んでボールをもらいに行くプレーって、体格差がある相手に対してはすごく難しいんです。でも彼はしっかり押し込んで(マークを)外して、ボールをもらえます。あとステップバックをよく使いますけど、前のめりになっている体勢からステップバックって、脚が強くないと無理ですよね。そこは特殊な能力だなと思います」

オカフォー(右)は2015年のNBAドラフトで全体3位指名を受けた 【Photo by Elsa/Getty Images】

 ジャリル・オカフォーは29歳で、211センチ・122キロのセンター(C)。ゴール下の「支配力」はB1でもトップレベルだろう。名門デューク大の出身で、NBAでは通算248試合のキャリアを持っている。さらにさかのぼるとアメリカ代表として出場したFIBA U17W杯のMVPに輝き、2015年のNBAドラフトは全体3位で指名された超エリートだった。

「左右どちらからも柔らかくフィニッシュができますし、多彩なステップを持っています。外を多投する選手ではないですけど、富永選手の加入は決まっていましたし、他にも外を打てる選手は結構います。だからインサイドでドミネート(支配)できる外国籍が欲しいなという狙いでした」

 彼らの加入による相乗効果もある。

「2人が来ることによって(フィリピン代表のスモールフォワード/SF)ドワイト・ラモスのマークが薄くなります。(SR渋谷から加入したパワーフォワード/PF)ケビン・ジョーンズも、(富永)啓生選手やオカフォー選手がさばいたときに高確率で決められる選手です」

ロイブルHCと「やりたい思いがすごく強かった」

 そんなタレントを率いる新ヘッドコーチ(HC)がトーステン・ロイブルだ。直近のシーズンはチェコで仕事をしていた53歳のドイツ人コーチだが、日本との関わりも長く深い。日本の育成年代を率いていた時期には、無名だった富永を年代別代表に抜擢した「目利き」でもある。桜井もトヨタ自動車アルバルク、レバンガで指導を受けている。

「自分が『一番成長できた』と感じたコーチです。あと『また一緒に仕事がしたい』と思えるコーチでした。自分がGMに就いたとき、彼と一緒にやりたい思いがすごく強かったので、彼に声を掛けました」

 ヘッドコーチ(監督)の決定は人事の中でも重要度が高い。他競技を含めた傾向としてGMを飛ばして親会社が決めた、社長が決めた例は少なからずある。ただロイブルHCについてはまず桜井の強い意向があった。

「トーステン(・ロイブル)の名前を出したとき、周囲から否定的な意見は一切なかったです。みんなが新たなチームの一歩を踏み出すために力を貸してくれました」(桜井GM)

 現役時代の桜井は守備力が際立つタイプだった。そんな名手の基礎を作ったのがロイブルHCだったという。

「僕は(ロイブルHCと)2シーズンやっています。アルバルクの2年目(2006-07シーズン)と、レバンガ1年目(2011-12シーズン)ですね。大学3年の終わりから代表に呼んでもらっていたのに、アルバルクの1年目はDNP(出場ゼロ)の試合もありました。2シーズン目からロイブルコーチに変わって、シーズンが始まるときに面談をして、僕はオフェンスの話をしたと思うんです。そのとき『得点を取れる選手は揃っているけれど、このチームにはDFをできる選手はいない。だからDFのスペシャリストになってほしい』と言われて、頭が完全に切り替わりました」

 06-07シーズン、トヨタ自動車は年明けの天皇杯を制し、さらに当時のJBLも圧倒的な戦績で優勝した。桜井はオールコートのプレッシャーから速攻に持ち込む戦術のキーマンとしてブレイクし、個人としても脱皮に成功した。

「自分の長いキャリアは彼のおかげです。オフェンス中心でそのまま行っていたら3、4年で終わっていたと思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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