男子バレー日本代表、セッターの「後悔」と「覚悟」 予選敗退に終わった世界選手権からどう立ち上がるか
2017年から21年の東京、さらには24年のパリ五輪へ向け、長い時間をかけて構築、熟成されたチームから今季はロラン・ティリ新監督が就任。かつてフランス代表を五輪で金メダルに導いた名将が率いる日本代表には高い期待が寄せられていただけに、トルコ、カナダに連敗を喫すると厳しい言葉がぶつけられた。
初年度、しかも五輪翌年にチームを新しくつくり、勝負できる段階まで成長を遂げさせるのは容易なことではない。日本だけでなく、世界選手権ではフランス、ブラジル、ドイツ、キューバといった強豪も予選ラウンド敗退を喫し、チェコやフィンランドといった世界ランキングだけで見れば上位ではない各国が決勝トーナメント進出を果たしている。次の五輪へ向け、新たな戦力、選手も台頭し、世界のバレーは目まぐるしく変化している。19日に開催された今季の総括会見でもティリ監督が「今の世界ランキングは意味をなしていない。それぐらい、すべてのチームに対して負けることがありうるという認識を持たなければならない」と語ったことも、1つの証明だ。
敗れた2戦を振り返れば、トルコ戦ではビッグサーバーのサーブに屈し、攻撃が単調になったところをブロックで止められた。カナダ戦も同様で、日本と同じくコンビバレーを駆使する相手に対してサーブで攻めきれず、連続失点を重ねる中で焦りが生じ、要所でのミスにつながった。
カナダに敗れ、決勝トーナメント進出の可能性がついえると、主将の石川祐希はこうも言った。
「リードしている場面でも、1点取られてから連続失点して逆転されたり、そこで1本、2本で切らないといけないところをブレイクされた。行ける、という雰囲気が出るときもあるけれど、相手にリードされたらすぐにその雰囲気が消えてしまう。何とかしようとしてもどうしていいかわからず、僕自身もそこでプレーなのか、雰囲気なのか、表情なのか、態度なのか、言葉なのか。どうしたらいいかわからない、と思いながら試合をしている僕を見て、選手も乗ることができなかったと思うし、チームに何かきっかけを与えられるようにならないといけない、と感じさせられました」
セッター2人の覚悟
1歳下の永露元稀とともに、今季はネーションズリーグから主軸を担った。世界選手権直前のブルガリア、イタリアとの壮行試合でも試合直後のコートインタビューでは「去年(パリ五輪)みたいなバレーができず、面白くないかもしれないけれどセッター2人で試行錯誤しながら、切磋琢磨し合ってチームに貢献できるように頑張ってる」と話し、直後の取材ではセッターに対して厳しい意見が飛び交っていることについても触れ「気にしてしまう部分もあった」と吐露した。
実はネーションズリーグを終えてからの壮行試合では、事前の合宿からティリ監督から提示された「両サイドへのトスを速くする」という課題を実践していた。石川や髙橋藍は一定の効果があった一方で、速さよりも高さを求めるオポジットの宮浦健人がブロックにかかり、スパイクミスにつながるケースも目立ち、大宅もその責任を自分に向けた。
「チームでやろうとしていることを壮行試合で試して、実際にいいか悪いかを判断する。今はまず、やってきたことを出し続けるだけだと思うんですけど、結果的にそれが宮浦をつぶすトスになってしまった。もっと早く入ってもらうようにするのか、トス自体をゆっくりにするのか。ここから宮浦と話して本番に臨みたいです」
これまでも日本代表登録選手としてさまざまな舞台を経験。2022年の世界選手権にも出場した。今季はキックオフ会見のときから「覚悟」を口にし、自らにもプレッシャーをかけてきた。大宅だけでなく、これまでも日本代表登録選手に名を連ね、ネーションズリーグでの出場機会を得ながらも世界選手権や五輪予選といった大きな国際大会の経験はない永露も同様だ。高校まではミドルブロッカー、アンダーカテゴリーでセッターを経験したが本格転向したのは大学からで、技術や判断能力など経験で培われるものがまだ足りていないことは永露本人が常々口にしてきた。
壮行試合でもクイックやパイプの本数が消え、サイドに偏りブロックに捕まる。自身の課題も永露自身が一番理解していた。
「試合を重ねる中で自分に足りないところが露呈するし、ミスや精度の低さにつながる。合宿から、何を直せばいいのか見直して、練習を重ねてきたつもりですけど、試合になると選択肢が減ってしまったり、アタッカーを苦しませてしまうことが多いし、ヨーロッパの相手はブロックが高いだけでなく動きも速い。もっと映像を見て研究して対策を狙いたいし、特に僕は(セッター)歴が短いので、試合も練習もどれだけ課題を見つけられるかが今は大事だと思ってやってきました」
セッターとしての個性やキャリアは異なるが、日本代表として戦うのは同じ。だが、どれほどの時間を費やし、覚悟を以てしても、問われるのは結果。ブロック失点が多かったことも、セッターに責任が向けられる要因になり、試合の中で混乱や迷いが払拭できず、トスが短くなったりタイミングがずれる場面も少なからず見られたのは事実だ。
そして試合に負ければ、スパイカー陣が「決められなかった自分が悪い」と責任を背負う以上に、最も多くボールに触るセッターにはより多くの「あの一本」に対する後悔が残る。
もっとトスが伸びていたら。もっと精度が高ければ。もっと違うチョイスができていたら。
ミックスゾーンで取材を受ける選手の後ろを、うつむきながら足早に大宅と永露が去っていった。